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エビスとプレモル [麦酒]

某月某日
エビスとプレモル

某国で長く働いた。かの国では、庶民はビールを瓶から直接ぐびぐびとのみ、ハイソな方々はワインを箱で買って優雅にグラスで呑む。私はワインもビールも大好きだが、日本式に呑んで盛り上がるとお縄になる、しゃれにならないお国柄なので、仕事をなくすことを恐れてほとんど禁酒していた。しかし稀に自宅で飲むビールやワインの値段が安いことに驚いた。我が日本の酒税のなんと高いことよ(特にビール)。日本に戻ってからは、人生に残された時間を意識しながら、アルコールはできるだけ日本酒に限定して呑んでいる。しかしたまにはビールもいい。

今を去ること10数年前、私が大量のビールを喉に流し込んでいた頃は、ちょっと質が高いビールといえはエビスしかなかった。エビスのロング缶が2-3本あれば、とりあえず数時間幸せになれた。瓶なら味わいがさらに豊かだったように記憶している。しっかりとした腰があり、えもいわれぬ麦系の薫り。軽さは無いがぎっしりと詰まったビール特有の味わいが大好きだった。しかも重過ぎず呑み飽きない。エビス好きの友人と一緒ならもう言うことはない。幸せな数時間を約束されたようなものだ。恵比寿近辺で働いていたことがあったので、身びいきのような思い込みもあり、かつてはあきれるほど大量にエビスばかり飲んだものだ。ともあれ、みんなが大好きな古くからの信頼のブランド、それがエビスだ。異論を唱えるビール呑みはあまりいないのではないだろうか。

然るに我が愛する日本に帰ってきてみると、プレモルとかいうちょっと高級なビールがあるではないか。エビスより僅かに値段が高い。当然手を出し、結構気に入ってずいぶん沢山呑んだ。宣伝もさすがに上手、素敵だ(開高健や山口瞳を知っていますか?)。独特の華々しい香り。しっかりとした腰だけでなく、切れもいい。後味すっきり。エビスと比べてより新しい現代的な印象の飲み物だ。ちょっと前に味が変わったような気がしたので、たまたま知り合ったサントリーに勤めている方に伺ってみた。すると、確かにマイナーチェンジをしたが、評判ば更に良くなった、とのことであった。しかしそのころから、私はプレモルにごく僅かな人工的な味と薫りを感じるようになった。これは個人的にちょっといただけないと思った。ごまかしがあるというのではなく、やりすぎなんじゃあないかという、、、。エビスも恐らく何度か味や品質をリファインするようなことはあったに違いない。しかし私の五感の感ずるところによれば、基本は全く変わらず、愚直にビールをつくっているように思われる。私はエビスに回帰することにした。最近ビールをたしなむ機会に恵まれると、エビスをお願いするようにしている。

今現在、私はプレモルとエビスのロングを買い込んで、双方を楽しみながら、比べながら書いている。両方ともレベルが高い。美味い。大好きだ。ビール会社の方たちは、繊細な我々日本人の好みを反映させつつ、様々な工夫をしてここまでのビールを作り上げたのだろう。頭が下がる。肴なしに日中、一生懸命双方を比べてみたが、やはり上記の印象が覆されることは無かった。やはり私は、エビスに戻ろうと思った。

その後迷うことなく、エビスのあるひと時をたびたび楽しんでいる。
タグ:麦酒
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