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Warmoth Boatneck Tele [雑文]

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7月21日 Warmoth Boatneck Walnut Tele

 某国の田舎町に住んでいたころ、自分でエレキを作ってみようと思った。とにかく無難に、と考えて、Warmothでボディとネックを買った。最初に購入したボディはなんだかひびが入っていたので、クレームをつけて交換してもらった。Ken Warmothさんは、”何 がいけないのかわからない”と ぼやいていたっけ。ボディを送ったりパーツを購入したりしているうちに、オリジナルのストラトを持っているという郵便局のおじさんと友達になって、ギター話で盛り上がったりしたのはいい思い出だ。とにかくよくできたネックとボディを手に入れた。非常に美しく、美術品のようにもみえ、なでたりさすったりして喜んでいた。特に極太のネックはバーズアイとタイガーストライプが複雑に入り混じったような杢が入っており、眺めているだけで一杯呑めそうな美しさだ。撫でさすると(当たり前だが)つるつるとしており、この世のものとは思われず、コーコツとしてしまい、なんだかとっても興奮した。まるで子供か変態だ。しかしこれはあくまでも楽器の部材に過ぎないのだから、組み立てなければ意味が無い。美しい宝石のようなボディとネックにドリルを入れる決心がつかないままに仕事がどんどん多忙となり、結局1年以上押入れの奥にしまいこむこととなった。

 ようやく時間ができて、必要な工具やパーツを購入し、ドリルプレスで根性を入れて穴あけ。今でも不思議なのだが、全くミスをしなかった。まあ運が良かったのだろう。パーツは、ブランドにはこだわらず、精度高く作られ、性能の良いと思われるものを選んだ。シャーラーのペグ、無漂白牛骨ナット、ブリッジはゴトーのごついもの、エレクトロソケット、ビルローレンスのPU、等々である。今でもなかなか良い選択をしたと思っているが、かなり重い楽器になってしまった。

 最初はネックもボディも日ざらし亜麻仁油を塗ったオイルフィニッシュにした。ウォルナットでできているボディはこれでいいのだが、メイプルネックはオイルをほとんど吸わないため、なんだか木部を保護できていない印象で、少しずつ指板も汚れてきた。それで紙やすりで表面をていねいに削り、MinWaxのWipeOnPolyという塗料を指で丁寧にすり込んで仕上げなおした。これは日本では手に入らない塗料なのだが、うすく均等に仕上がる上に、触ってみるとなんだか少しだけべとつくため、Fenderなどの最近のラッカー仕上げと非常ににた感触(必ずしも良い、というわけではないが)だ。これはなかなかよい。自分で仕上げたとは思えないくらいきれいである。うっとり。時を経るとともに、色合いが少しずつくすんできて、これもいい感じだ。

 ナットの成型にも結構苦労した。手先はかなり器用なのだが、視力が落ち始めていたことも関係しているのだろう、何度も失敗を繰り返した。ナット専用のヤスリもいくつか、というか、沢山買い、専用の万力や数種類の紙やすりもこれでもかというくらい用意した。それでもしばらくは思うようにいい感じのナットを作ることができなかった。6つの溝の一つでも失敗するとやり直すしかないのだ。実際に何度もやり直した。当初使っていた漂白した牛骨を無漂白のものに変えると、素材に若干の粘りがあるためか、加工の精度がぐっとあがり、それでようやく納得できるレベルのものが作れるようになった。いろいろなギターを観察したり測定したりして、なかなか勉強になった。ナットはとってもムヅカシイし、深い、ということがわかった。ナットの作り方次第で、弾き心地だけではなく、テンション、バランス、音そのものすらコントロールすることができるということがわかった。まだまだ修行が必要だ。

 PUは選んだり組み込んだり、とっても楽しいがやはりムヅカシイ。アンプとの兼ね合いもある。ビルローレンスのものはなかなか良かったのだが、いろいろと色気を出して何種類も買ってみた。ビルの奥さんのベッキーと電話でお話をして良いと思われるものを選んでもらったりして、いろいろとがんばった。この時は楽しかったがキンチョーして大変だった。ビルはもう高齢なので、興味がある人は今のうちに購入することをお勧めしたい。内部の配線もいろいろといじってみた。その後リオグランデの出力の高いPUに変えてみたり、ルーターを使ってキャビティを広げてギブソンのハムを乗せてみたりといろいろと試行錯誤を繰り返したのだが、結局ジョーバーデンのダニーガットンモデルに落ち着いた。融通は利かないが、自分的には完璧に近いPUであるように思われる。

 キャビティに銅箔を張ると音が変わる、というので、これもいろいろと試してみた。確かにノイズがものすごく減る、ということは間違いない(オーディオの知識を生かしていろいろとがんばった)、シングルPUを使うならなおさらだ。しかし音が変わる、というのは個人的には実感できなかった。それで結局今でもこの楽器のキャビティには銅箔が美しく貼り付けてある。

 ブリッジもいろいろと試してみた。そもそもボディがウォルナットでネックが極太、という標準的ではない構成であるため、オリジナルとの比較は意味が無いのだが、耳にあまり突き刺さらない、しかしそれでもテレらしい音、というのを目指してみた。ゴトーのものから始まり、Warmothで売っているVingateレプリカに変えたり(これはぜんぜんレプリカになっていないが品質はそれなりに高い)、FenderのVintageものに変えてみたり、ジョーバーデンのものを買ってみたり。プレートの厚さを気にしながらいろいろと試してみたのだが、結局調整のしやすい、分厚く精度が高い、6Wayのゴトーのものにもどすことになった。いつも感じることなのだが、日本製の部品は誠実に正確に作ってあるばかりではなく、メッキの品質がとっても高い。いい味出している。日の丸万歳だ。ともあれ、ブリッジは音作りのうえで、とても重要であることを認識した。

 重くて頑丈な楽器になってしまったので、普通のラウンドワウンド弦を使うと、弦鳴りはするがボディの鳴りはいまいちだ。それで最近は細めのラウンドワウンドを張り、重いボディを力ずくでぐわんぐわんと鳴らしている。こうしてみると、工具やパーツを集めるのはそれなりにお金がかかるけれど、ギター製作は本当に良い趣味だ、と思う。今ではPUのワインディングやフレット周り以外はそれなりにこなせるようになった。楽器の数が増えると保管に困るが、売ったり買ったりしながらこれからも楽しんでいきたいと思っている。家人の機嫌は悪いけれど。



タグ:Warmoth ギター
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