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Billがいなくなった-9  ペグの取り付け [音楽]

Billがいなくなった-9  ペグの取り付け
完成.jpg

その後多忙で、楽器の制作がなかなか進まない。しかし少しずつ、暇を見つけてはいそしんでいる。ボディはネジ穴をあけ、サーキットをはんだ付けすれば終了、しかしその前にネックの仕上げが残っている。ペグの取り付けだ。これは、以前は何も考えずにどんどん取り付けて、それなりに上手に仕上がっていた。不遜にも楽勝仕事と思っていた。大きな失敗がほとんどなかったのだが、何故なのか今でもとっても不思議だ。歳をとって目がダメになって失敗するようになったのかもしれない。ともかく、一度、ねじをねじ切ってしまう手ひどいアクシデントを経験してからは、いつも本当に緊張してこの作業にあたっている。あらゆる手段を尽くして失敗しないように努力している。StuMacのDanも、同じようなことをどこかで言ってたっけ。自分でやってみるまでは、そんなことはわからなかった、、、。今は骨身にしみている。

さて、ともかく上の写真を見てほしい。これが最終的な仕上がりで、自分的にもほぼ完璧で、非常に満足している。間違いなく、何度でも、このレベルの取り付けが出来るまでには、いろいろな紆余曲折があった、、、ので、少し書いてみようと思う。しかしこうやってしげしげと眺めてみると、USACGのネックはかなり素晴らしい出来だ、と感じざるを得ない。

ペグを取り付けるときは、ブッシュの取り付けから始めるやり方と、穴あけから始めるやり方があると思う。最近の私は、穴あけ派だ。というのも、以下のような失敗しない方法を身につけたからだ。それは、、、

ダメです.jpgこの写真のようにペグを置いて、穴あけの位置を大体きめて、どんどん穴をあければいいって?
それはダメです。全然ダメ。角度.jpg少なくともこうやって穴を垂直にあけることができるように角度を確認する必要があるだろう。穴の深さをそろえるために、ドリルの刃にテープを巻いて目印にする必要もある。ねじくぎの形によっては、入り口は広く、奥に行くと狭い二段階の穴をあける必要もあるかもしれない。それから、確かにポンチを使って穴あけのセンターを決める方法でも大丈夫なことは多いのだが、やはり失敗する確率が結構ある、、、、失敗すると穴を埋め木して、面一にして、塗装して、穴をあけ直し、、、という非常に”楽しい”作業が待っている。何度か経験したが、二度とやりたくない。それで私はこうしている。template.jpgアクリル加工のプロに頼んでテンプレートを作り、きっちりとあけるべき穴の位置決めをしている。こうすることで、穴あけのずれはほぼ100%、少なくとも私の場合は無くなった。穴あけ.jpgこの完璧な穴あけを見て!僅かな塗装の乱れは、穴あけに伴うものではなく、USACG出荷時からのものだ。僅かな木部のへこみは、このタイプのペグを使うときは避けられないものだ。しかたがない。Fenderの工場などは、ヘッドの形に合わせた、すり減りにくい金属製のテンプレートを使っているようだが、個人ではなかなか、、、。しかしアクリルでも十分に高い精度が出せる。0.1ミリ前後の誤差は、木部が吸収してくれる、、、これが木工製品のいいところでもあり、悪いところでもあるのだろう。

次のハードルは、ブッシュをどうやって圧入するか、ということなのだが、これもかつては結構苦労した。誰も教えてくれないしね。プロや工場では大きなドリルプレスを使って圧入しているようだが、アマチュアでこれを持っている人はあまりいないだろうし、何より都会の住宅事情が大きな工具を所有することを許さない。それでこのやり方にたどり着いた。圧入.jpgクランプによる圧入だ。りーま.jpgペグホールをリーマで僅かに拡大した上で、柔らかい木材と硬質ゴムでヘッドを保護し、ブッシュを手で押し込み、その後クランプで最後まで挿入する、という手法だ。これなら深夜でも作業できる。かつては金槌でたたいたりして金属に傷をつけたりしていたものだが、この方法で作業するようになってからは、結果はほとんどパーフェクトだ。失敗して塗装を痛めるようなことは一度も経験していない。作業中に、自分の使っているメイプルの固さ、粘り、などの質もよくわかる。今回の柾目のメイプル材は、印象としては最高に近い品質だ。いい音がするに違いない。そのような試行錯誤の積み重ねのおかげで、今回も完璧.jpgこのように完璧な結果を得ることができた、やはり、神は細部に宿る?のだ。今日の私は、とりあへず幸せだ。

ドリル一本で-錐だともっと渋いのだが-垂直に、正確に穴をあけるべき場所に穴をあけるのは非常に困難だ。私の個人的な考えでは、それはいわゆる職人技なので、習得するのに最低10年はかかると思っている。仕事なら迷わずこれをやるが、趣味ではそんな時間はない。だから頭を使って、道具を買って、乗り越えようと考える。この方向性は、エレキギター発症の地であるアメリカの職人たちの持っている方向性と親和性が高いと思う。つまり彼らの多くは”職人技”を持っていないので、工夫して、知恵を絞って、道具を開発してレベルの高い仕事を安定してこなそうとするのだ。(Fender創生期に職人技を発揮した高名なゴメス氏はメキシコ系である、ということは興味深い)これは勉強になる。趣味の領域においては、自分もこれを意識して、難しい仕事をこなし、楽しみながら音のいい楽器を作っていきたいと考えている、、、。

実はこの後職人気取りで作業して小さな失敗をして落ち込んだのだが、そのうち報告するつもりだ。
タグ:ギター
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