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Kutu 1 [雑文]

Kutu 1

歩くことが好きだ。歩くための靴が好きだ。それで選んだのがこいつだ。亡くなった植村直巳が履いていたという登山靴を作っている職人の店Goroで数年前に出会った。休みを取ってGoroをのぞいてみると、なんだか山マニアな人たちが集う小ぶりなお店のようだった。しかしお年寄りなども交じっており、あまり広くはなく雑然としてはいるがなかなかいい雰囲気の空間だ。そこで相談してみると、まずは足の型をとってくれるという。いい味を出したオジサンと、その奥様らしいオバサン、いや、ここはオネイサマと言うべきだろう。このオネイサマが丁寧に型をとってくださり、いろいろ歩き方に関するお話をしてくださった。それでこのお店が気に入った。信じてもいいような気になった。

私の足は身長と比べてやや小さめであること、足の幅が細い事、歩き方は悪くない事、今まで足に合わない靴を履き続けてきたこと、、、様々なことを教わり、たいへん勉強になった。それで手に入れた靴がこれだ。Goro.jpgGoro伝統のチロリアンシューズ。これはかっこいい。一目ぼれだ。機能美というやつを体現しているような靴だ。Goroは登山靴屋さんであるからして、基本のつくりは登山靴なのだろうとおもわれる。ビブラムの靴底にごつくて質のよい皮。内貼りは水牛の皮?手書きで私の名前が書いてあったりしていい味が出ている。手作りだけあって微妙な狂いがあったり、左右が完全に対象でなかったりするのだが、履きならして自分のものにする、といったタイプの靴なのだろう。こいつをずいぶん気に入って、手入れしながら愛用したものだ。しかし靴底にまったくクッションらしきものが入っていないため、こいつと一緒に長距離を歩くと腰にくる。また、親指の付け根が痛み、炎症を起こしてしまうようなこともあった。家人はそんな私を見て飽きれはて、体に悪いのでこの靴をあきらめろという。しかし茶色と黒の二色を手に入れれば、私の場合は日常の全ての用が足りてしまう。なんとかこいつらを履きこなしたい。それで足が血まみれになったり、豆だらけになったりした。

なかなかあきらめきれず、クリームで柔らかくしたり、ブラシをかけたり、革の手入れや靴下選びまでいろいろと手間暇お金、さらには頭を使ってみた。体重を減らせば問題は解決するかもしれないが、なかなかうまくいかない。いろいろやってはみたが、それでも長距離を歩くと疲れてしまう。履きたい靴、しかも自分の足にあつらえたオーダーメイドのお気に入りの靴があるというのにそれを履けないなんて、なんと不幸なことだろう。それでもこいつを磨き上げ、あきらめきれずに下駄箱に飾ってある。

何とか私の足に合う、お気に入りの靴を手に入れられないものか。暫く頭を冷やすこととし、買いためてある古い靴を履いていた。

私はどんな靴が欲しいんだろう?つらつらと考えてみた。良質の皮で作った、丈夫で機能的な靴。国産が望ましく、ブランド性は必要ない。修理が効くものがいい。つまりバイクでいうとスーパーカブのようなやつだ。機能を突き詰めると美にたどり着いた、というような。

それで最近手に入れたのがこれだ。Mizno.jpgMizno OD Special Semi-Order 最初の印象は、失礼だが“なんて醜い靴なんだ”というものだった。申し訳ないはしかたがない。それでは細部をみてみよう。

日本製の靴らしく上質に見えるが薄い皮、それを裏打ちする布。よくみると厚めの皮と薄めの皮を、場所によって使い分け、組み合わせてアッパーを作ってあるようだ。靴ひもにも洗練された工夫がしてあり、歩きやすいと共に脱ぎ履きがしやすい工夫がなされている。やっぱり日本製なんだなあ。細かいところに気をつかってある。靴底は柔らかそうな硬質ゴム?靴底には見たこともないような不規則なパターンが刻まれている。よくみるとかかとの部分は塊ではなく、なんというか“す“が入ったように穴が開いている。Mizno Wave?とよばれる歩きやすくする技術が導入されいているという。しかしいまひとつ理解しにくい。なんだかMazdaのSky Activeのような感じだ。それ以外にも歩くための様々な工夫が施されているようで、Semi Orderだけあって左右異なるサイズや異なる足幅に対応しているのだという。また、目立たないことだが、足が蒸れないように靴底にたくさんの穴もあけられている。そんな風に細部を観察していると、あら不思議、間違っても格好良くは見えず、残念だが高級そうにも見えないこの靴がだんだん気に入ってきた。眺めているうちに、かっこよく見えてきた。ほしくなってしまった。アシックスの靴も考えてみたのだが、最近この会社はおしゃれになりつつあるようなので、今回は質実剛健ブランド性皆無、といった個人的な印象に基づいてミズノを選択した。さて、こいつはどれくらいスーパーカブに迫ることが出来るだろうか?

この靴を購入した際は、ミズノの基幹店?のようなところまで足を運んだ。すると運の良いことに、シューズの専門家がお店におられ、予約していないのに私の足の計測と、有償だが中敷きによる靴のフィッティングをしてくださるという。比較的年若いこの男性は、アスリートのケアなどもしている方らしく、迷いなく様々な質問や計測を重ね、着々と中敷きを仕上げていく。なんだか特殊なゴムのような素材をきびきびと切り取り、丸くしたり三角にしたり、ハサミを駆使して自在に形を整え、そいつを靴の中にしきこんで、靴を履いて歩いてみろという。そうしてみるとびっくりだ。左右の足のバランスが微妙に変わり、左足のいつもの痛みがすっと消え、歩くたびに土踏まずに僅かなマッサージ感。これは気持ちがいい。いつまでも歩いていたいような体にぴったりの私の為だけの靴が出来上がった。しかもたいして時間はかからない。こいつは間違いなくプロの仕事だ。しかもしばらく歩きこんで、状態が変わったら微調整を無料でしてくださるという。なんという日本的なサービス。スバラシイ!やっぱり日本がサイコウだ。

この靴がだんだんカブに見えてきた。
しばらくこいつと一緒に町中を歩き回ってみようと思っている。

チロリアンもあきらめないぞ!

タグ: GORO MIZNO
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