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私のギター 5  [音楽]

私のギター 5 

番外編 爪の話 その2

それでオリーブオイル作戦を何か月か続けてどうなったかというと、確かに爪が少しだけ厚く、強くなったような気がした。だからそれまでよりも少しだけ長く伸ばすことが可能となった。その後より一層ギターを弾くのが楽しくなったわけだが、それでも十分というわけではない。周りのギターを弾いている人たちと比べるとまだまだ、というかお子ちゃまのような爪だった。特に我が先生の長く伸ばされた立派な、非ギター人からみればおそらく異常に見えるような爪と比べると、我が指は赤ん坊のそれのように見えた。先生は伺うところによれば若くしてギターで身を立てるべく決めていたそうで、長い爪のため学校の体育の時間などはたいそう苦労されたそうだ。それはそうだろう。特に困ったのが柔道の時間で、片手で組み手をしたものだから、クラス中から顰蹙をかったそうな。笑ってはいけない。やはり道を究めるというのは厳しいものなのだ。当時は爪が長いことがギターの上達の秘訣のような気がしてたので、残念で仕方がなかった。それでまた性懲りもなく先生に相談した。

“カリフラワーをtたくさん買ってきてください”と先生はこともなげにいう。ニコニコと上品な微笑みを浮かべたりして。それでそれをどうするのか、おそるおそる伺ってみる。今度はそれを薄くスライスして爪に貼れというのか?それとも眺めて暮らせとか?ギターケースに入れておくといいとか?先生のお答えは、“食べてください”というもんだった。は?カリフラワーを食べろと。それは全く問題ない、むしろ好みだ。茹でてアツアツのものをサラダに混ぜて、、、。やっぱりサラダにはキウピーマヨネー、、、え?そうではない?生でそのまま食べろと?そんなことしたことない。お腹を壊してしまうのではないですか?お答えは“たぶん大丈夫です”と。にっこりと、例によってあやしい微笑み付きだ。それでどうしたかというと、ギターを上達したい私は死んだ気になって食べてみたわけだ。塩を振ったり味噌を乗せたり。しかし結局あまりおいしくないので、小さく切ってドレッシングをかけて。そのうちに慣れてきて、ドレッシングをふりかけながら大きな塊をがりがりとかじるようになった。カルシウムたっぷりというような独特の歯ざわりだが、慣れてしまえばどうということもない。多少のエグミは感じられるが、これもそのうち慣れてしまう。野菜の特売日などにスーパーに赴いて大人買いしてきて、せっせと毎日食べた。家族が心配したが、おなかを壊すようなことは、あまりなかったようだ。つまり、たまにはあったわけだけれども。

それで効果があったかどうかというと、オリーブオイルとの合わせ技で“一本”という感じ。つまり私の爪は強くなり、あるていどは長く伸ばすことできるようになった。一部の爪の特定の部分が横方向に欠けるようなことは今でもあるが、限界を超えないようにすれば大きな問題になることは無い。すべての“治療”には1年以上かかったが、先生の偉大な指導と私の無謀な行動によって何とか演奏に使える爪を手に入れたのだった。

人間為せば成るものだ。石の上にも3年。オリーブオイルとカリフラワーでも3年。絶対に無理だと思っていた爪の質の改善が、できてしまった。その後の私の音楽人生が豊かなものになったことは言うまでもない。

最近高名な佐々木忠というドイツ在住のギターの先生に、ワークショップに参加した際に手作りの爪の形の強制道具を見せていただいたので、性懲りもなくちょっとやってみようと思ったりしている。

タグ:ギター
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