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“結晶化”したもの① ギターアンプ Fender Champ 5F1 [雑文]

“結晶化”したもの①  ギターアンプ Fender Champ 5F1


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いい歳をしたおっさんなので、人生に残された時間が少ない、とひしひしと感じる毎日を送っている。寄り道をしている暇はないんだぜ、といったところか。寄り道ばかりの人生を送ってきた私としては、今更焦ってみても、、、とは思うのだが。あまり身の回りのものを増やさず、これだ、と思ったものだけを、お金などのことなどはあまり気にせずに、身のまわりに置きたいものだと考えている。さて、今回はギターアンプの話だ。


かつてアメリカからFender Champ 5F1 ModelのKitを取り寄せて、当時の私が持っている全ての技術を投入して制作したことがあった。大金を積んでオリジナルを買ってどうこう、というハナシではなく、Leo Fenderが打ち立てた、すでにデファクトスタンダードとなっているシンプルなサーキットを持つ小型のシングルギターアンプを手に入れよう、というハナシだ。

Kitなので出来上がりは間違いようがないのだが、お仕着せのパーツを必ずしも使うことなく、例えば抵抗やコンデンサなど、私自身で良いと思った部品に交換するなどして完成させた。仕上がったアンプはもちろんスバラシイできであり、文句のつけようもないものだった。ChampはLeo Fenderが、いわゆるBed Room Amp、つまり練習用のアンプとしてちょいちょいと簡単に設計したものだと思われるが、マイナーチェンジを繰り返してそのサーキットは“結晶化”し、そいつが5F1と呼ばれるものであり、足すべき部品も、減らすべき部品もない、ある意味究極のサーキットとなっている。Jazz でもBluesでも、使いようによるとは思うが、立派に音楽的な音を奏でてくれる。やはりFender系のシングルPUと相性が良いように思うが、ハムバッキングが付いた楽器であってもきちんと鳴ってくれる。音源を選ばない、すごい奴なのだ、Champっていうやつは。個人的には現在のアンプとして立派に通用すると考えている。音量が足りなければPAに頼ればいい。エフェクトが必要なら、エフェクターをつなげばいいだけの話だ。問題は、基本的な“トーン”そのものだ。Champの“トーン”は、現在のギターアンプとして十分に通用する。

柔らかい、廉価な材料であるパイン材を、フィンガージョイントと呼ばれる伝統的な継ぎ方(日本の伝統的木工に比べれば大したことは無いのだが)で組み上げられた軽くて楽器のように共鳴してしまうキャビネットとか、ATOMの電解コンデンサとか、Vintageのスペックで作られたスピーカーとか、こだわりのポイントはいろいろとあるのだが、私の知識と経験レベルでも隅々まで理解できるくらいのシンプルなサーキットを持っているため、各々のパーツが手に入る限り、永遠に使い続けることができる。こういうのを自分で組み立ててみると、やっぱりLeoは天才に近い技術者だったのだなあ、としみじみと実感できる。

手間暇かけて組み上げたこのアンプは、シングルなので絶対的なパワーこそないものの、実際に使ってみればわかるが、日本の一般的な家屋では扱いきれないほどの音量がある。また、アースに徹底的に気を使ったことが良かったのか、ノイズがほとんど乗らないスバラシイアンプ、というかほとんど楽器になった。私の期待をはるかに超える、余裕で売りに出せるくらいのクオリティを感じさせてくれた。静かな環境でJazzを弾いてみたりすると、コクのある音でつかれたオヤジである私の心をなごませてくれ、小さな音で音楽を奏でても、ノイズが気になることが無かった。意外だがヘッドルームも広い、結構男らしいアンプだった。回路はエキスパートではない私の目にも単純でめちゃめちゃシンプルなものであるにも関わらず、だ。だからこれさえあれば、他のアンプはもういらないな、などとしみじみといいものを手に入れた幸せを噛みしめていた。

しかるに愚かな私は、一時の気の迷いで、手狭な拙宅のスペースを稼ぐために、この素晴らしいアンプを二束三文でたたき売ってしまったのだ。私の知識と経験とかなりのお金をつぎ込んだアンプを買ってくれた人は、ものすごくよい買い物をしたと思う。多分そうだと思う。また手に入れるかどうか、現在考え中。

タグ:5F1 fender champ
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