SSブログ

Fender Blues Junior [音楽]

Fender Blues Junior


もう15年ほど前になるだろうか、米国の田舎町の楽器屋の店内に長いこと置きっぱなしになっていたFenderの小さなギターアンプを買った。ごく初期のBlues Juniorと思われ、メキシコ製ではなくなんとアメリカ製だ。筐体はおが屑を固めるようにしてできているアーチクルボード、つまり安物の素材で作られている。しかし音が通るサーキットは基本的に全て真空管で賄われており、弾いてみるときちんと真空管アンプの音がする。ヘッドルームが狭く、高音成分が不自然に強調されているが、典型的なFender系の音がする。ストラトやテレをつないでみれば、“間違いない”伝統的な“あの音”がすることは私が保証する。安物ゆえ当然のようにして基盤を使った配線となっており、正直あまり長もちしそうに見えないのだが、音質それ自体は悪くない。諸々考え合わせると、自分的にはいい買い物をしたと思っている。お店の兄ちゃんは、“いらなくなったら友達に売ればいいじゃん”“買って買って”と言っていたっけ。それで結局手に入れることに決めたのだ。当時楽器の購入や修理などでつきあいのあった少し大きな隣町の楽器店の店主は、”Fenderを買うのはやめてくれ””Fenderとはつきあいたくないと思っている”“Fenderの製品は二度と売らない”などと恨んでいたが。具体的な理由は教えてくれなかったけれど。彼は私に、目の玉が飛び出るような値段がついた、いわゆるブティックアンプを買ってほしかったらしいが、当時の私にはそんなカネはない。えばっていうことではないが。

さて、手に入れたアンプのうらぶたをさっそくあけて、内部をしげしげと覗いて日本人的な陰湿な細かーい目線で評価してみたところ、困ったことに真空管ソケットとサーキットの接続にはリボンケーブルを使ってあるし(つまりこわれたらこの部分は自分では直せない)、可変抵抗はずいぶんお粗末なつくりで基盤に直付けしてあるし(ありえない!)。ほかにもいろいろと突っ込みどころが満載なので、やはりこれは修理を前提としていない、長く使うことを想定していないアンプという事なのだろうと理解した。たぶんおそらく。出力だって小さいしね。

帰国を決めたとき、大きな家具などはすべて同僚や同胞たちに差し上げたのだが、こいつとはお別れする気になれず、結局米国からはるばる我が国まで持って帰ってきた。うかつにもリバーブユニットのスプリングの養生を忘れてしまい、輸送中に髪の毛のように細い配線が切れてユニットごと交換する必要に迫られた。仕方がないのでオリジナルの割と下品な音がするユニットを、当時評判が良かった上品な音作りがなされたユニットと交換した。その後もこの安物のアンプが壊れないように大切に使っていたのだが、結局いつものように、例えば電源を強化したりトーン回路をいじったりして、ちょこちょこ復元可能な範囲で手を入れてしまっている。暇なときに調べてみたところ、なんとトランスも可変抵抗も、壊れる可能性があるパーツはほとんど全て新たに手に入ることが明らかとなった。このアンプは廉価なので数が出ているためだろう、修理の需要も多いのではないか。理由はともかく個人的にはとてもありがたい。それを知ったからには遠慮することは無い。これ以外のアンプはほぼすべて倉庫にしまい込み、毎日暇さえあれば長時間通電して、近所から苦情が来ない程度の音量で演奏を楽しんでいる。

現在新品として売りに出ているものは使ったことがないのでよく知らないが、少なくとも私が持っているアンプはなかなかの音を奏でる。もうアンプはこれだけでいいかな、と思っている。パーツは手に入るので壊れたら自分で直せるしね。人間、足るを知るということは大切だ。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。