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青山  蕎麦きり みよた  二枚板せいろ  610エン [日本蕎麦]

青山  蕎麦きり みよた  二枚板せいろ  610エン

青山通りに面したPrestigiousなロケーションに、なんとフレンドリーなお蕎麦屋さんが。実は値段を考えずにのんびりした時間を過ごせそうな、お高いお店を選んで入りたかったのだが、青山などを訪れることはあまりないので、あてにしていたお蕎麦屋さん3軒に振られた後は、お蕎麦恋しさに途方に暮れてしまった。とぼとぼと道を歩いているとなんと目の前にお蕎麦さんが。それが“みよた”だった。真面目に生きているといいことがあるもんだ。

ここは調理場をカウンターがコの字型に囲むという、まるで駅そばのようなシンプルな造作のお店だ。店内は幸いにして清潔感が漂っており、蕎麦の品質も悪くなさそうだ。思い切って暖簾をくぐった、というか自動ドアがガラリと空いたのでのそのそと店内に。店内は結構込み合っているが、職人さんたちはにこにこ笑って働いており、花番さんも若いオネイサンで、ニコニコしながら小動物のようにきびきびと動き回って感じが良い。万人向けの机と椅子が体に合わないのは毎度のことではあるが、なんとか巨体をねじ込んでテーブルに落ち着いた。供されたお水をガブリ。すぐに追加のお水が供されたのはとっても嬉しかった。

メニューを眺めて大きなせいろの写真が気に入ったので、二枚板せいろというのをお願いした。しばらくすると、小さなお盆に蕎麦猪口、薬味小皿、蕎麦ツユ、割りばしのセットが乗せられたものを職人さんから直接手渡された。笑顔多めで感じがいい。いいぞいいぞ。薬味は少量のさらし葱と、やはり少量の練りワサビ。しかし両方とも十分に気を遣って調理されており、そのままでも十分に美味しい。しかし今日は事情があってお酒は飲めないので、残念だがお水で我慢だ。と、程なく供されたお蕎麦は巨大な白木のせいろに乗せられており、その中央には海苔がこんもりとおごられている。お蕎麦の薫りをスポイルすることがある海苔はなくってもいいのだが、まあ好みの問題といっていいだろう。蕎麦の盛りがけち臭くないのがなんとも嬉しい。

お蕎麦は細めできりりとエッジが立っており、ながーくしつらえられているのでおそらく機械打ち機械切りだ。表面は程よく透明でピカピカ、星も適度に散っている。お鼻クンクンで吟味してみると、蕎麦粉はおそらく2割以下だが、十分にお蕎麦の薫りを楽しめる。つなぎの雰囲気はあまり感じさせない。若い職人さんがやってくれたのだが、ゆで加減も〆加減も、最後の仕上げの水(井戸水かなんか?)での洗いも最後の水切りも適切であり、お蕎麦はせいろの上でなよなよぷるると喜んでいる風情。数本長―いのを手繰ってみると、歯ごたえよし、のど越し良し、味わいも深みもそこそこあって、後味も良好だ。よしよし、それでは蕎麦ツユに突入だ。徳利から蕎麦猪口に移してみると、、、おお、、、う、す、い。薄い。しかしそれなりにおいしそうなカツヲ系の薫りは漂ってくる。少量試してみると、醤油感は弱め、その分塩感が目立っている。カツヲ感も弱めでみりん等の甘味成分がやや勝っている。しかし蕎麦ツユのバランスが崩壊しているかというとそうではなく、なんというか強烈な膂力で蕎麦ツユを強引にまとめ上げて形にしているかのような印象。つまり全体の一体感が絶妙なのだ。返しも出汁も、大量に調理したのではないだろうか。そうでないとこんな蕎麦ツユにはならないのではないか。

蕎麦ツユ単体ではなかなか良いのだが、お蕎麦と比較すると蕎麦ツユはかなり力弱めだと思われた。組み合わせはあまりよくない、ということだ。それでお蕎麦の半分以上を蕎麦ツユにくぐらせることにして、お蕎麦時間に突入した。歯を少し悪くしていることもあり、私にしては珍しくゆっくりゆうゆうと手繰ったのだが、せいろの大きさに恥じないだけの量のお蕎麦が盛られており、大食漢の私でも、かなりの満足感を得ることができた。その後おそらく茹で汁そのものに近いと思われる蕎麦湯を堪能したが、食事時でもないのに次々にお店に入ってくるお客さんのためを考えて、早々にお店を後にした。本当は蕎麦湯を呑み尽くしたかったのだがそれは粋じゃあないよね。

お会計で驚いた。青山通り沿いにある蕎麦屋さんでせいろ二枚をたっぷりと楽しんで、たったの610エン!すごいコスパだ。職人さんも花番さんも感じがいいし、お蕎麦も値段を考えると望外の出来だ。盛りはいいし値段は安いし、若者でにぎわっているのに違いない、と思って周りをしげしげと見まわしてみると実際はそうでもない。幸せそうにお蕎麦をすすっているのは、おじいさん、おばあさんもいれば、私のようなおじさんも複数。むしろ若い人の方が少なかった。近隣のお蕎麦屋さんがたまたましまっていたので混んでいるのかな、とも考えたが、おそらくそうではないのだろう。このお店は気軽にお蕎麦を楽しみたい都会の老若男女のオアシスになっているのではないか?とくに無心で蕎麦猪口にお顔を突っ込んでいた斜め向かいに座っておられた若めのオバサマの様子が微笑ましかった。全身でお蕎麦が好きなのよ!というオーラが漂っていた。

種物も出るお店なので、狭い店内で当然揚げ物を調理するのだが、それゆえ体中が油の匂いに包まれてしまうことだけがちょっと残念だった。まあ文句を言うと罰が当たるよな。ともあれ、このお店は老舗ではありえないが青山の名店だと思った。ご馳走様でした。ありがとうございました。今日もお蕎麦難民にならずに済んでヨカッタ。

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