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高価な楽器を購入する話 5 [音楽]

高価な楽器を購入する話 5

その後の経過を手短に書いてみようと思う。

仕上げに複数の問題があり、全体にやや荒削りではあるがなかなか素晴らしい楽器である1号機?を毎日時間が許される限り弾いていると、楽器が自分に、また自分が楽器に馴染んでゆき、だんだんいい音が出るようになってきた。弾いているのは自分なので、稀にではあるが、この楽器の美しい音に涎を垂らしたり涙を潤ませたりするようなことがある。我ながら人様にはお見せできないはづかしいオヤジの姿だ。ポイントはやはり右手のタッチで、この楽器(といってもわからないだろうが)は各部の造りが大振りであるため、比較的強いタッチで弾いてあげないとそれらしい音が出ない、ということが実感として分ってきたことが大きい。であるから、無意識的に、最近は意識的に基本的なタッチを強めに変え、右手の爪も少し形を変えて演奏するときに力をかけても変形しないようにして弾くようにしている。慣れてくると、小回りは全く聞かないが、なかなか素晴らしい楽器であることが分ってきた。車でいうとドイツ車みたいな感じ、といったら分って頂けるだろうか。鈍重~重厚な感じに慣れてしまえば思うさま乗り回せる、といったような。

これは制作家のもっているテンプレート(ジャンゴラインハルトに代表されるジプシージャズと呼ばれるスチール弦の楽器を基にして設計されたクラシックギター)を基本にして自分の意見を取り入れて作ってもらった楽器で、基本的にはクラシックギターであるが、通常のクラシックギターとはかなり異なった設計になっている。たとえば、

・ヘッドがコンパクトで、本体から遠ざかるにつれて先細りになっていること(ヘッドの形は音に大きく反映されると考えており、個人的には通常の形が望ましいのだが、制作家の意見を尊重してこうなった)
・指板に僅かな丸みをつけてあること
・高音部が弾きやすいように高音弦の上の部分のボディに切欠きが入れられていること(カットアウェイと称する)
・ブリッジが二つに分かれて可動式になっており、使用する弦の太さによって弦長が微調整できること
・ボディの裏が、わずかに外側に凸になるようにしてあること
・クラシックタイプの楽器には通常なされない仕様なのだが、ネックの脇に小さなポジションマークを付けたこと(私は乱視なので必須)
・サウンドホールが大きな丸ではなく、小さな楕円であること

また、最大の特徴として、ボディ側面に二つの穴を開けてある。一つは楽器を正面から見て左上にあたる小さな穴で、これは奏者が主に高音をモニタするためのものだ。もう一つは正面から見て右下に開けた比較的大きな穴で、主に低音を床に反射させて広く遠く響かせるためにそうしてある。実際に演奏してみると、一人で弾いているのに様々な方向に音が放たれていることが体感され、ステレオのように聴こえて気持ちが良い。リバーブのようなコーラスのような効果が、ナチュラルかつ控えめに得られている。これはデザイン上、サウンドホールをどうしてもジプシーたちの楽器のように小さな楕円形にしたかったことからひねり出したアイディアで、サウンドホールの必要最小面積を稼ぐ、という必要に迫られた問題解決から出発、サウンドの向上に発展させたアイディアだ。そんなことをしている人は、知る限り誰もいないので、当初は不安もあったのだが、結果には非常に満足している。特許を取りたいくらいだ。楽器が壊れた時の修理にも有利だと思われる。とにかく、楽器というものは人に聴かせる音でその価値を判断されがちだが、実際に人前で演奏する時間は一人で練習する時間の何百~何千~何万分の一だ。だから自分が実際に楽器を弾いている時に聴く音が気持ちがよい、ということは大切で、これが良くないのであれば楽器を弾く意味がない、というのが私の個人的な意見だ。

音の分離が良いということにも驚かされた。今まで使っていた楽器は、和音を弾くと音が塊のように出てきてまとまりは良いのだが、例えば高、中、低音を同時に鳴らした場合に、すべての音を弾きながら感じることがやや難しかった。それがこの楽器では、ちょっとだけ意識を音に集中するだけで、難なくどんな音が響いているのか聞き分けられるのだ。各々の弦を弾いている指の力加減で、メロディーを思ったように浮かび上がらせたり、コードの中に沈ませたり、自由自在だ。これを弾いていると、まるで自分がうまくなったかのような錯覚に陥る、、、。

しかしこうなるまでに、乗り越えなくてはならない問題は沢山あった。この楽器はテンションの高い弦を張るのが本来の設定であり(制作家の好み)、完成して私の手に届いた時には、日本ではあまりお目にかかることのないメーカーのハイテンション弦が張られていた。あらかじめ私が通常使っている弦の指定はしてあるのだが、このあたりがいかにもヨーロッパのヒト、という感じ。制作家としての主張があり、折々にそれを混ぜ込んでくる。相談なしに仕様を変更してくることもある。まあ、キャリアのある専門家であるから必ずしも悪いことではないのだが。ハイテンション弦を張った楽器を長時間弾いていると、指先はボロボロになるし、そのうち指に力が入らなくなってしまう。腱鞘炎なんかも心配だ。また、フレットに比較的背の高いものを使ってあるようで、低音弦をしっかりと押さえないと、金属的な雑音が混じるのも当初は問題だった。可動式のブリッジなんかも扱いが難しく、チューナーとにらめっこをしながら何度も調節を繰り返した。そんなこんなで、いくつもの問題を克服して、最近やっとこの楽器を手中に収めたように感じていた。

帰宅するとお気に入りの楽器が待っていてくれるというのはなかなかいいものだ。夜中に音を出すわけにはいかないが、それでもケースを開いて撫でまわしたりする。ほとんどビョーキというやつだ。しかしある朝悲劇が起こった。

(to be continued)

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高価な楽器を購入する話 6 [音楽]

高価な楽器を購入する話 6BrokenTop.jpg

右手で弦を弾くあたり、私の新しい、しかしちょっと傷が多い楽器の表面板は、素晴らしい杢目のスプルースが使ってあり、フレンチポリッシュで芸術品のように美しく仕上げてあるのだが、わずかに縦に色が変わっている部分があるような気がしていた。しかし楽器を弾いていると、低音弦の影が表面板に落ちるので、その変化を意識することは無かった。そもそも楽器を弾いている時に、そんな細かいことを気にすることはない。楽器はあくまでも弾いてナンボだ。それなりの値段の楽器だし、問題は多いが何よりもまっさらの新品だ。楽器が自分に、自分が楽器に馴染むまでゆっくりと丁寧に、無理のない範囲で隅々まで弾いてあげる事だけを念頭に、日々楽しく楽器と遊んでいた。クルマでいう“慣らし”のような状態と思ってもらえればいい。ある程度弾きこむまでは、思い切りかき鳴らしたりしないほうがいい、というのが私の考えだ。なにごとも、段取りは大切にしたほうがいい。

私は楽器を愛するおじさんなので、所有する全ての楽器はいつもピカピカで、温度や湿度の管理もばっちりだ。楽器ケースの中には温度計や湿度計を入れてあり、加湿器に至ってはアメリカから個人輸入したものをケース内に、国産専門メーカーのものを楽器部屋で使用している、というありさまだ。おかげでこれまで、値段にかかわらず、楽器の木部にトラブルが起きたことは無い。正直に言うと、高層マンションに住んで、湿度の管理をしなかった頃にネックを曲げてしまったことが一度だけあるのだが、それに懲りて学習した。今でも僅かにネックが曲がった楽器は手元にあり、たまに弾いて愛でている。

他の分野の木製楽器のことはよく知らないが、ギターに関して言うと、“最初の冬を越せるかどうか”というのは非常に重要だ。ローズ、スプルース、マホガニー、エボニー、ハカランダ等々、産地も特性も異なる材を、膠などを使って半ば無理やりに貼り付けて組み合わせ、様々なストレスをかけながら、強引に一体として振動させるのがギターという楽器なのだが、そもそもその設定からして無理がある。特に表面版に使われるスプルースなどは、多くの場合一枚の板を薄い2枚の板に割って、左右対称にはぎ合わせた後に(ブックマッチと称する)ものすごく薄くそがれる。具体的にいうとこれは電球の光が反対側に届くくらいの薄さだ。裏側に力木を張り付けてあるとはいえ、この表面にブリッジを介して弦を取り付けてグワングワンと振動させるなど、壊してくださいと言わんばかりの悪魔の所業だ。

振動することが命のスプルースでできたトップ、音を反射させるための固くて薄いバックやサイドのローズ、この薄い板を組み合わせて作られた箱の体裁をなしたボディにマホガニーでできたネックが複雑なあり溝を介して取り付けられ、そのネックに指板になるエボニーが乗せられる。ブリッジは今やほとんど合法的な手段では手に入らない希少なハカランダ(ブラジリアンローズウッド:私の楽器の場合。多くの場合エボニー)だ。これらの木部に牛骨で作られたナット、ブリッジ、それから金属であるフレットなどが組み合わされてギター本体が作られているのだが、さらに金属とプラスチックで作られたマシンヘッドをねじくぎで強引に搭載して楽器として成立させる、それがギターだ。

こんなに複雑なつくりの木製楽器が、作られてすぐに各部が落ち着き、相互に合理的に響きあって美しい音を奏でてくれるわけがない。一定期間木部が伸びたり縮んだり、曲がったり元に戻ったりしてアバレて、落ち着くまでは長い時間がかかるものだ。運が良ければ板が割れたりせず、そのうち一体となって、楽器というシステムが完成する。つまり、振動すべき部分は振動し、そうでない部分は振動する部分を助けることで、全体として合理的な弦の振動の拡声器やフィルターの役割を果たすようになるわけで、その後数十年間は楽器として安定した状態が保たれ(一般に50~100年程度)、そのうちやがて“弾きつぶれた”状態となって楽器としての役割を終えるわけだ。それがギターの一生だ。

この木部の狂いは制作されて最初の年、特に乾燥が進む冬季におそらく最大となるものと思われ、薄くて柔らかくて繊細なトップが割れたり、力木(ブレーシング)がはがれたりするわけだ。ネックがある程度曲がることなどは、アタリマエといわなければならない。これらの木部の狂いは、経時的に収束することもあれば、そうでないこともある。だから、楽器にとって”最初の冬を越す”ということは非常に重要で、この時期を無事にやり過ごすことができれば、その後大きな問題が起きるリスクはぐっと減ると私は考えている。”初体験”?はやはり重要なのだ。

というわけでかなり神経質に温度や湿度の管理をしていた私なのだが、ある時ついにトップの異常に気が付いてしまった。弦に対して平行な方向に、細い細い”割れ”を発見してしまったのだ。指で軽く触れてみると、確かに僅かな段差があるように思われる。強い光を当ててみると、薄いトップ全体が割れているわけではなく、何故か塗装をしてある表面側だけが割れている、、、これは悲しい。現状では音に影響はないが、このまま放置すれば割れが進行してゆくことは火を見るよりも明らかだ、、、、。見て見ぬふりをすることは出来ない。

”俺は高い金を出して、何か月も待って楽器を買ったのに、手に入れた楽器は音はいいけれど傷だらけで、最初の冬が越せなかった、、、”なんというBad Luckだろう、としみじみと落ち込んだ。最近いいことないぜ。しかしやはり考えるよりも行動だ。それが私の人生の基本だ。数日で地獄の底から復活した私は、デジカメで写真を撮り、それを早速制作家に送った。”最初の冬が越せなかったよ、、、””直せるかい?”と。彼を責めることはせず、大変がっかりしていること、楽器のことを心配していること、等を淡々と書き送り、対応を相談する形にしてみた。

彼は、”表面板は薄いし、古いし、割れることもある””楽器がダメになるわけではない””多分きれいに直せるから、送ってくれればあとは全て面倒を見る”と、なかなか誠実な応対をしてくれた。向こうからみれば面倒な客だろうと思うが、人生最後の楽器を手に入れようとしている自分も必死だ、、、。こういうときはやはり、外国は遠いと思う。しかし個人制作家から楽器を買うと、親身な対応が期待できる。だから、手工の楽器の購入に関しては、楽器屋さんに高いマージンを落とすよりも、制作家にできるだけお金を渡したい、と考えてしまう。

大きな段ボールを買い、苦労してハードケースを包み(高価なケースなのでこれを傷だらけにするのは得策ではない)、郵便局と相談して取りに来てもらった。いつも思うのだが、普段愛用しているヤマトの人たちはそれなりに身なりが清潔で感じがいいのに、郵便局からの人たちは、タバコの臭いがビンビンで、汚れた服装をしているのはなぜ?、、、まあ、それはいい。郵便局を使って楽器を外国に送ったことは何度もあり、これまでに問題が起きたことは無いのでいまのところ信頼しているのだ。それで現在、私の愛する楽器は日本からオランダに向かっているところだ。いい子になって帰ってくるとよいのだが、、、。

楽器は二つとして同じものはない。同じ制作家で、同じ値段のものであっても、弾いてみると明らかに違う音を奏でるものだ。それは演奏する側のレベルが私程度のアマチュアであっても明らかに感じることができる。だから安い楽器が音質で高い楽器を凌駕するようなことが日常的に起きうる。好みの問題もあるし。そうであるから、特定の一つの楽器が好きになってしまうと、それに代わるものは二つとない。楽器は取り換えが、基本的には効かないなものだ。この辺りは人間付き合いと似ている。二人と同じ人がいないように、すべての楽器はユニークな存在なのだ。そのあたりがニクイ。楽器の世界からいい年をして足を抜けない一つの理由なのだろう。

かつて某有名邦人制作家に楽器の制作をお願いした。日本でギターを制作する歴史は長いとは言えないが、わが国には長い長い木工の歴史と伝統があり、強迫的な国民性のおかげで、専門家によって生み出される木工製品は、機械で作られたかのように正確に作られている。だから日本人である私は、国産で品質の高い楽器を手に入れたかったのだ。お金を沢山払うことで制作家の技術とこだわりを使わせていただき、信頼できる楽器を手に入れ、なによりも演奏することに時間とエネルギーを使いたかった。壊れたら作ってくれた人にお願いして直してもらえばいい。しかし大枚を積んで、何の連絡もないままに半年以上待った末に手に入れた楽器は、到底満足がいかないものだった。フレンチポリッシュは複数個所に塗りムラがあり(難しい仕上げであることは確かだが、木部が直に見えてしまっているのは到底容認できない、オハナシにならない)、ナットの周囲などの重要な木部に欠けが数か所。ネック周りには小刀の刃の跡が数か所残されており、ブリッジには弦を張り間違ったような傷が。高音を出すために延長した指板は専門家の手になるとは思えないほど稚拙に処理されていた。そして何よりも、フレットを磨くときに指板を保護するために張っていたテープの後がべたべたと残されており、いい加減で雑な仕事をされた、という嫌な印象を受けた。悲しかったね、オレは。

いわゆる”作家もの”ではなく、例えば河野とかヤマハとか、品質管理が高いレベルで保たれた、有名なメーカーのものを購入すればよかったのかもしれない。何度も自分の選択を後悔した。しかし楽器はあくまでもパーソナルなものだ。工業製品ではないのだ。このまま良い結果が得られるまで頑張りたい。

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USACG Tele Practice Guitar 1 [音楽]

USACG Tele Practice Guitar 1
USACGNeck.jpgUSACG Neck 2.jpg
仕事が結構忙しいので、バンドは出来ない。一人でやるしないので、クラシックとか、ソロギターなどを一人でしこしことやってゆくしかない。人前で演奏する機会にもあまり恵まれないのだが、音楽なしの人生は考えられない、、、。街中に住んでおり、帰宅が遅くなることもしばしばであるため、夜中にクラギやフルアコなどをガシガシと弾くこともできない。しかしエレキをぺんぺんやっても空しいだけだ。いろいろと考えて、エレキに細めのフラットワウンドを張って練習することを覚えた。かつてはストラトでやっていたのだが、やはりテレでありたい。

USACGに相談すると、”どんなものでも作れます”とのこと。私が好きなテレは、、、
1.70年代のストラトラージヘッド
2.メイプルネック
3.bodyはMasy Kayのシースルーホワイト PGも白
4.フロントはハム、リヤはノイズレスシングル
5.3ウェイのオリジナルブリッジ

であることが長年の経験ではっきりしてきた。上記の5つの通常の仕様に
6.クラギと同じ位ぶっとい幅広ネック
7.木取りは柾目
8.鳥目のメイプル
9.金物は薄いGold
10.できるだけ軽く
とうスペックを加えれば、結構楽しい練習用のギターができるのではないかと考えた。いいかげんわけのわからん楽器を増やすのはやめろ、という内的な声を無視して、数年前に買って死蔵していたネックがこれだ。ヘッドと比較して、グリップがものすごく太い、ということが理解していただけるだろうか?

USA3という、個人的にお気に入りのヘッドの形が若干乱れていること
指板の端をわずかにぶつけた跡があり、おそらくアロンで直してあること
塗装におかしな茶色っぽい色がついていること
一か所だけフレットの周りにボンドがあふれていること

等以外は、オーダー通りに作ってくれてある。なかなかの品質だ。塗装のマイナーな問題はラッカーを塗ったりやすりをかけたりして手を入れた。ヘッドの形を直すことは出来ないが、まあこれは仕方がない。円が高いころに買ったので、割安感があるので許す(本当は怒ったけど)。でかい、太い、ギラギラしてかっこいい。Warmothのものとは違い、USACGの幅広ネックはネックポケットに入る部分が広く、レギュラーなフェンダースペックのボディには合わない。だからボディもカスタムオーダーすることになるのだが、それはまあいい。音はUSACG方式の方がいいような気がする。ネックとボディの接触面積が広いので振動がよく伝わりそうだ。だからピックガードも通常のものは合わない。加工する必要があるだろう。PUやブリッジは、、、レギュラーなものを調整することで何とかなりそうだ。PGは実はUSACGが提携しているPicguardianというサイトで売っている手作りPGを注文したのだが、”USACGがテンプレートを送ってくれない”、ということで放置プレイだ。ちょっといい加減な感じ。まあ、ダメなら自分でちまちまと加工すればいいのだ。ということで、暇があるときにのんびりと練習用のギターをアセンブルしてみようと思っている。またやってしまった、、、。もうしません、、、。
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Marsh Amp Tweed 5F1 [音楽]

Marsh Amp Tweed 5F1

Marsh Logo.JPG私はもともとアコギが好きで、そこから音楽にのめりこんだ。今でも基本的には生楽器が好きなのだが、やはり人様と合奏するためにはエレキに手を出さざるを得なかった。結果としてエレキも大好物になったのだが、エレキギターにはアンプがつきものだ。エレキのアンプといえばやっぱり真空管だ!エレキギターも好きだが真空管アンプも大好きだ。だからエレキ関係の器材をいじっていれば、楽しくて時間がいくらあっても足りない。エフェクターなんぞに手を出したら、人生が何回あっても足りないくらいだ。しかしいくら楽しいからと言って、あれもやってこれもやって、とやりちらかしていたら、時間ばかり経ってしまって内的には何も蓄積されない。残念だが電気関係は今後あきらめようと決めた。

これまでオーディオアンプから始めていくつもの真空管ギターアンプを作ってきたのだが、人に売ることが出来るくらいのクオリティのものを一つ作って、それでアンプ作りを終わりにしようと思った。この世界も底なしで、広いし深いし楽しいし、時間もお金もいくらあってもきりがない。しかし私は器材を増やすことより、ギターが上手になることを重視したい。音楽そのものを楽しみたいのだ。それで何を作ろうか考えた。やはり基本に帰って5F1がいいだろう。木工も大好きなので、キャビネットから作ろうか、などとも考えたのだが、それでは元の木阿弥だ。それで信頼できるキットを探して、きれいに売り物レベルに組み上げて、それで終わりにしようと思った。

いろいろと調べ、メールでアメリカの達人やイカレタお兄ちゃんたちに相談などしながらたどり着いたのが、MarshAmps(http://www.marshamps.com/)というサイトだ。ほかにもいろいろな参考になるサイトがあるが、私はここが一番気に入った。Denise Marshというおじさんがやっているお店で、Webからアンプのキットが買えるようになっている(後ほど連絡があり、なんだかゴージャスなオバサンだということが分かった。デニスじゃあなくってデニースということらしい。だから外国は難しい)。そこで当時、500ドルほど払って、キットを売ってもらった。コンデンサ(スプラグとオレンジドロップ)、抵抗、出力トランス(Mercury)、スピーカ(Weber)など、当時一番いいと思っていたものをこだわって選択して購入した。円が高い時期だったので、割安感があった。このキットのキャビは、ちゃんと文法通りにパインの単板をFinger Jointで組み上げ、布を張ったものを使っている。納得だ。後ろのふた(分かるだろうか?)のみベニヤのようだが、それは音には関係ない。キャビネットの造りが音作りに大きく貢献することは言うまでもない。後面解放のやや厚いパインでできたBox(エンクロージャ)が、歴史的なFender Champのトーンづくりには欠かせないのだ。

最も音がいいと言われているFender Champのサーキットが5F1と呼ばれているモデルで、サーキットは本当に基本の基本。単純で無駄のない設計になっている。それでも選び抜いたパーツを組み込んで、それなりのギターを繋いできちんとセッティングを決めて使えば、十分に音楽的な上質のトーンが得られる。本来は家庭での練習用の、いわゆる”ベッドルームアンプ”なのだが、それにとどまらず、時にはレコーディングに使われるようなこともあるようだ。やはりレオ/フェンダーは偉大だ、というしかない。やはりフェンダータイプのギターと組み合わせることが望ましいが、シングルアンプでノイズに弱いため、ノイズフリーのPUをもつギターを合わせないとひどいことになる。また、トーンもリバーブもついていないため、ギターの素の音を楽しむことが出来るが、逆にギターが一定のクオリティレベルを満たしていないと悲しい結果になる。

アンプのアセンブルに関しては、私は結構経験値が高いため、ちょいちょいと組むことは出来るのだが、今回は“いかに美しく配線するか”を念頭にして頑張った。配線は一般的なビニールではなく、単線を布で覆ったビンテージに倣ったようなものがキットについてくる。布を切るのがなかなか美しくできないが、一旦切ってしまえば、被覆の布をずらしさえすれば簡単に配線作業にかかることが出来る。被覆がビニールであれば、内部の配線の長さに合わせてビニールを剥く必要があるのだが、これを繰り返すと指先がボロボロになる。それが無い分配線作業は楽だ。完成すると、サーキットボードは沢山の太い配線で、シャシーに“固定される”ような感じになる。ナルホド昔のアンプはこうやってできているのか、、、。

ものすごくいろいろなことを考えながら、できるだけ美しく配線した写真がこれだ。美しく見えるだろうか。KJ5F1.JPGその後たった2本のボルトでキャビに組み込み、Marshのロゴを釘で打ちつけて終了だ。我ながら手際が良い、、、トントントングシャ!何だ今のは、、、。ロゴをトンカチでたたいてしまった。なにか固いものがキャビの木部に入っており、釘が進んでゆかないのだ。これは失敗だ。幸いにしてキャビ自体には傷がついていない。ヨカッタ。それで結局どうしたかって? Deniseに自分が組んだアンプの写真を送って、事情を説明し、ロゴを売って頂戴、とねだってみた。”ずいぶん上手だけれどプロかい?(オバサンだからプロなのかしら?だろうか)”と聞かれたので、“たまに人に売ったりはするけれどプロじゃあないよ”“なかなかいけてるキットだね”などと答え、emailで盛り上がった。それで、まんまと新しいロゴをただでせしめた。アルミでできたMarshロゴは、アイスクリームの棒に張り付けて、封筒に入って日本まで届いた。ありがたい。(Deniseが舐めたアイスの棒だったのか?まさかそんな、、、)

ロゴを付けた写真を送り、Deniseにお礼を言って、このプロジェクトは完了とした。めちゃめちゃ楽しかった。こいつをなかなか大きな音で鳴らす機会はないけれど、何度かフルボリュームで鳴らしてみて、そのポテンシャルを実感できた。期待を軽く上回るほど上質で、しかもものすごく大きな音が出る。びっくりだ。ナチュラルなドライブがかかる領域まで音量を上げると、ついつい目をつぶって涎が垂れてしまうほどだ。でもこんなに大音量のアンプ、日本の一般家庭じゃあ使いきんないよ。ほんと。

最近はギターのボリュームをめちゃめちゃ小さいレベルまで絞っておいて、ボリュームを上げてパワー管に負荷をかけ、そこそこの音量で楽しむ、という音作りをYouTubeで覚えてひとりしこしこと追及している。Low noiseのPUを使うことが前提だが、これは家庭で楽しむには良い方法だと一人で悦に入っている。皆様にもおススメしたい。

ともあれ、アンプは多分もう作んないです。

ああ、このアンプは売るんじゃなかった、手元に置いておけばよかったな。珍しく後悔だ。
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USACG Tele Practice Guitar 2 [音楽]

USACG Tele Practice Guitar 2

Body.JPGということでボディだ。普通のソリッドボディを選んだ。エフホールにはあこがれるのだが、それが欲しければセミアコかフルアコを選べばいいのだ。テレはソリッドに限る。フロントハムでリアは普通のシングル。ワイアを通すトンネルは、USACGの標準である、モダンなものにしてもらった。割と直径が細めのスワンプアッシュをブックマッチにした材でカスタムボディを作ってくれたようだ。横から見るとわかるのだが、結構木目がつんでいるので、あまり軽くはない。使った材の直径は、上記したように比較的細い。写真はフィルタを軽くかけて木目を強調してみた。材の性質は木の芯と外側でかなり違うと考えられるため、直径が大きな物の方が望ましいような気がするのだがどうなのだろう。この材は湿地に生えているため、本来あまり大きくならないと聞いているが、まあ良し悪しは、楽器に組み上げて使ってみればわかる。Tommyたちを信頼して楽しく楽器を作ることとしよう。

ボディをOrderするときに、軽いのでお願い、と頼むことは出来るのだが、重さを指定することは出来ない。結構重い。NCルーターで削りだすので、ボディのフォルムはいつもの通り、オリジナルに忠実で美しい。Warmothのものと比べると、フォルムがやはり若干異なっており、特に気をつけないといけないことは、コントロールキャビティの幅が狭いので、CTS以外の高品質なPotを使うことが出来ないことだろう。私が愛用しているTOCOSのPotなどは、一部を削らないとキャビティに収めることが出来ない。だからあきらめてCTSを使うか、キャビティをルーターで加工するかどちらか、ということになる。

今回のボディも仕上げはやはり残念ながら完璧とはいかず、個人的には十分美しいと思うし、値段を鑑みると満足のゆくものではあるが、ひっかき傷もあるし、塗装のたれもあるし、複数の穴のフォルムが崩れていたりする。Scar.JPGまず、傷を車の塗装補修用のコンパウンドで消す。ホルツのものを愛用しているが、これで目立たない程度には傷を補修することが出来た。Compound.JPGしかし写真で示した傷は結構深く、クリア層の結構深めのところまで達してしまっているようだった。それで、途中で撤退、個性と思って受け入れることにした。

ボディ裏のファレルをインストールするあたり、塗料がたまってしまうのは仕方がないのだが、低音弦側の穴、落とし込んであるのだが、フォルムが崩れてしまっている。Holes.JPGStu-MacのDanによれば、Fenderはファレルを半田ごて等で熱して、ラッカーを溶かしながら接着剤代わりにしてファレルをインストールしたというのだが、このボディの塗装は固いポリだ。うまくゆくとよいのだが。ファレルの大きさは、販売している会社によって違うのだが、USACGの穴のサイズは、Fenderのビンテレ等のサイズに合わせてある。例えばWarmothのファレルを買ってきて、USACGのボディに合わせようとしても、穴が小さくてうまくいかないことは知っておくべきだろう。私はかつてこれで大変苦労した。しかしスワンプアッシュは比較的やわらかい材なので、多少の誤差は、木材の扱いをある程度知ってさえいれば、何とか吸収してくれる。水分や熱の使い方が肝だ。さて、今回はどうなることやら。ブラスでできたFender純正のファレルを用意したので、完璧にあうはずなのだが。

アウトプットジャック付近の塗装のたまりにも注目してほしい。Output Jack.JPGこのままでは私が愛用しているElectrosocketをインストールすることは出来ない。しかしこの件に関しては、大きめのリーマを使うことで、きれいに加工することが出来ることは、複数回確認、実証している。

キャビティの中は、いまいちの加工精度で導電塗料が塗布してあるのだが(数年前に自分でやった。作業の仕上がりはダメダメだ、残念だ。最近編み出した方法でこれから修正する。)、今回はキャビティのふちに銅箔を張ることで、きちんとした美しい仕上がりを狙いたい。時間がないので、ゆっくりと楽しみながら、しかし慎重に加工してゆくこととしたい。

こうやって見てみると、USACGの塗装は、内製にしてからちょっとレベルが落ちているのかもしれない。数年前にやはりカスタムで作ってもらった時は、外注に出していたのだが、その時の方が、細部まできっちる塗装できていたような気がする。それでもかなり薄いポリで、塗装の質は十分に高いものと思われる。個人的には現状でも十分許容範囲だが。

一見すると、分厚いポリをバフで磨きこんだWarmothのボディのほうがきれいに見える。しかし指先でボディをこんこんと叩いてみるとわかるのだが、こんこんカンカンと、乾いたいい音で響くのは、USACGのほうだ。圧倒的に違う。しかしだからと言って、USACG出ないとだめ、というつもりはない。私は状況によって使い分けているし、今後もそうしたいと思っている。自作に興味がある人は、経済的に余裕があれば、数か所のプロバイダーから購入して比較研究してみることをお勧めしたい。

-To be continued-

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Billがいなくなった-11 ナットとセットアップ USACG-Warmoth Tele [音楽]

Billがいなくなった-11 ナットとセットアップ USACG-Warmoth Tele

NutFiling.jpgこの楽器のアセンブルはかなり時間をかけて丁寧にやったつもりなのだが、ナットはありものを適当につけておいた。ひどいものだ。しかし専用のケースを買って大切に扱っている。そろそろ数か月たって木部も安定した筈なので、きちんと調整をしてあげようと思ふ。とりあえずナットだ。ちゃんとしてあげなくっちゃあ。ナットはほんとに小さく安いパーツなのだが、これ一つで音も弾き心地もものすごく変わる。めちゃめちゃ重要なパーツだ。私はStuMacで手に入れることが多いのだが、たいてい無漂白音牛骨を使う。漂白されたものと比べて加工中に欠けにくいし、実際にナットにすると弦の滑りがいいし、音もわずかに良い、というか自分の好みに合う(コシが強い)ような気がするからだ。材料を塊で買うこともあるが、楽をしようとして半分出来上がっている製品を買うこともある。どちらを買っても数百円程度のものだ。今回はたまたま昔買った、出来合いのナットがあったため、これを使うことにした。出来合いといっても幅も高さも自分の楽器に合わせて調整しないと使えないため、手間暇がかかるのは覚悟しなければならない。それでもずいぶんとラクだ。今調べてみたら900円くらい。溝なしの大体ナットサイズに成型したものは400円だ。

これは大体ナットの形に切ってあって、弦の溝までつけてあるので、まず実際のネックスロットに合わせて幅を削る。ぴったりにすることが出来ればボンドで張り付ける必要がないので、めちゃめちゃ慎重にやる。Nut.jpg320番程度の紙やすりから始めて、段階的に1000番まで細かい目のものまでを使った。そのうち気が向いたらコンパウンドで磨くかも。そうするとピカピカになって光を放つのだ。ぴったしカンカン(旧い)の幅に削ることが出来たから、これでボンドはいらないかな?クラシックギターのナットは伝統的に接着していないが、問題になることは無い。だからエレキでも大丈夫なはずだ、と考えている。ただしクラシックのナットは高音弦と低温弦側のナットの厚さを微妙にかえてあり(テーパーがついている)、特定の方向からしか押し込むことが出来ない。ぐいっと押し込めばピタリとネックの端で止まるわけだ。これは名人でないと作れないと思う。私には残念ながらそんなスキルはないので、きつきつの幅でナットを削り、ぐりぐりとはめ込む。そうすることで満足する、、、しかない。

ナットの溝切りはけっこうシビアな作業で、弦の間の幅は、高音弦から低温弦に向かうに従って少しずつ広くしなければならないし、深さも弦の太さの半分くらいにして弦がめり込まないようにしないといけない。溝の底はあくまでも滑らかに、また弦を受け止めるところからリリースする部分までの角度も大切で、直線の溝をきる派と、曲線で迫る派があるようだ。そのたもろもろ、ナット作りには様々なコツや秘伝があるように思われる。

弦の間の幅や、指板の端から何ミリくらいの場所に弦を置くか、そのあたりは大体自分の好みがわかってきた。幅を決定するのはStuMacで売っている専用のルーラーを使うのがもっとも現実的だろう。今回のナットは、あらかじめ溝が切ってあるのでこの作業は必要ない。というか受け入れるしかない。幅を決めた後は、ナットの高さをやすりで調節するのだが、これはナットを何度もつけたり外したりしながら、弦の下面と1フレットの距離を専用のルーラーで測りながらやる。これでなんとか楽器を弾くことのできる状態になる。そうしてナットをスロットにはめ込んでしまえば、あとは溝の深さの微調節を残すのみだ。StuMacで買った半製品のナットは、一番外側の弦から指板の端までの距離がやや長めであることが私の好みに合わないが、まあ今回は良いこととする。高いEの中心から低いEの中心まで、目の子で測って36.5ミリというところ。このわずかな幅の中に人生をかける人たちがたくさんいるのだ!などと考えると感無量だ。私の楽器のナットの幅はわずかに45ミリで、低音側は4ミリ、高音側は4.5ミリもの”余白”があることになる。個人的にはもう少し弦を外側に寄せたほうが好みなのだが、演奏中に弦が指板から落ちてしまっても困る。現状でもプレイアビリティは悪くないため、このままでいくことにした。

ここまでできた段階で、もう一度アクション(弦高等)のセットアップをする。上述したが、楽器を組み上げてしばらくたったので、木部が落ち着いてきている筈だ。今きちんとセットアップをすれば、しばらくは安定した状態で演奏できることが期待できる。

セッティングは、、、、
1.まず、ネックを外してロッドを調節してネックをまっすぐにする。当初はロッドが効き始めてから半回転ほど  回して、弦を張って放置しておいたのだが、今回チェックしてみると木が動いてロッドが全く効いていない。
  結局経験値で0.75回転ほどロッドを締めこんでネックを再装着した。落ち着くまでに1週間くらいはかかる
  はずだ。
2.チューナーを使って、ブリッジを動かしてオクターブを合わせる。テレの場合は、残念ながら完全には合
わないので、できる範囲で最善を尽くすしかない。
3.カポを1Fに使って、ナットの高さをパラメターから外したうえで17Fで6本の弦の高さを合わせる。今回
  はサドウスキーの数値を使ってみた。Burderのブリッジは、弦高の可動範囲がやや狭いのでとってもやり
  にくい。
4.その後カポを外し、ナットの溝の深さを専用のやすりで調節する。
という流れになる。


ここで秘密兵器が登場だ。写真を見てほしい。指板の上に渡したものは実はシックネスゲージで、フレットの厚さに加えて、どれくらい弦の高さを確保するかを決めて、合計した数値に最も近いゲージを使ってナットの直前にクランプし、これをガイドにしてナットの溝を切る、というものだ。これを使えば、”だろかん”を完全に排除して溝を切ることができる。これはすごいアイディアだ、と思うのだが、欠点がないわけではなく、指板のRにゲージを合わせるのが大変であるとか、シックネスゲージを複数枚重ねると誤差が出るとか、ネックの裏側や指板を微妙に傷つけるとか、細かい問題はいくつか無いわけではない。しかしそれらすべて解決することは簡単で、逆にこの道具を使うことで得られることは無限大?だ。私の場合、これを使っても、溝の深さが0.05ミリくらい、狙いよりも深くなった。だからその分をあらかじめ加えてセッティングしておけば、狙った通りの溝の深さが得られるわけだ。何事も経験だ。道具は使いこなしが大切なのだ。写真の奥に、ピンボケぎみに映っている赤い取っ手が付いたやすりが溝を調節するための専用のやすりだ。

今回はナットの溝の深さもサドウスキーの数値を使ったのだが、アコギから始めた自分にはやや低いようで、弾いているときの指の”喜び”が損なわれるようだ。今後何回か調節を繰り返して、自分なりのセッティングを出してゆくつもりだ。この楽器は納得がゆくまで作りこもうと思っている。ブリッジも代えてしまうかも。

忘備録として、以下に今回使った参考数値を記載しておく。と思ったが、メモを職場に忘れたので、暇なときにアップすることにしよう。

付記

この楽器は大変音が良く、弾いていても気持ちがよく、ついついこの楽器ばかり手に取ってしまう。楽器自体が軽いことも大きな要因だ。その後ブリッジにちょっとした調節をしてブリッジ側の弦高を上げたり、ロッドを調節してネックをまっすぐにしたり、いじり倒しているのだが、どんどん良くなるばかりで手放せない楽器になっている。近日中、気力が充実しているときに、ナットを作り直すことを考えている。少し弦の間隔を広げてみるつもりだ。データブックに載っている数字よりも少しナット側の弦高を高めに設定してみる予定。プレーン弦と巻き弦の設定を少し変えてみるつもりだ。どんな音の変化が楽しめるのか、楽しみで仕方がない。自分で組んでおいておこがましいのだが、素晴らしい楽器だ。


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USACG Tele Practice Guitar 3 [音楽]

USACG Tele Practice Guitar 3P5270779.JPG

元気が出ない。だから楽器のアセンブルはしたくない。加工精度が出せないからだ。穴あけの位置など、疲れているとおそらく0.1㍉くらいは誤差が大きくなるのではないだろうか。しかし何も対策を練らなければ、気力を取り戻すことはできないだろう。棚ボタを待っていても仕方がない。鶏と卵の関係というわけだ。それで、楽器をさんざん弾いて疲れてしまった後に、USACGのネックをいじって元気になろうと思った。

このカスタムネックはクラギに限りなく近いサイズに作ってもらった。ものすごく太くて強いネックだ。ご丁寧に柾目で木取りをお願いした。やりすぎかもしれないが、とにかく強いネックがほしかった。ベースの弦でも張ることができるだろう、多分。トラスロッドへのアクセスは、ネックの取りはずしを嫌ってヘッドにした。初めての選択だ。USACGは、いつものように素晴らしいネックを作ってくれたのだが、残念ながらヘッドの塗装にやや問題があった。しかしそれはずいぶん前に手間暇かけて自分で直しておいた。ヘッドの塗装に問題がある部分にラッカーを乗せ、硬化するのを十分に待ってから紙やすりで成型し、周りに溶け込ませるために1000番の紙やすりで艶消しにする、という作業を根気よく行ったのだ。その後、ネックは部品としては完成していると判断し、大切に養生して押し入れにしまってある。塗装を治すのに苦労したので、すでに愛着がどっぷりとある。気力体力ともに充実しているときにネックを加工する作業をしようと考えていた。小さな宝物だ。これにドリルを入れようというのだ。


結局、ぼそぼそといろいろ考えた末に、ネックをいじって楽しんで元気になろう!という邪(よこしま)な考えが勝ち、下穴をあけてペグを取り付けてしまうことにした。間違いないやり方を知っているし、テンプレートも持っているので、失敗のしようがない。いつもとは段取りが違うが、やってしまおうと思った。楽しんで作業をして元気になろうと思った。それで、いつものようにテンプレートを使ってセットアップをし、穴をあけた。P5270771.JPGP5270774.JPGちょいちょいと、段取り通りに穴をあけた。一見して悪くない仕上がりだ。しかし実際にペグを乗せてみると、、、、なんと穴が二つほど、ど真ん中に開いていない!0.1-2ミリ程度、ヘッドのほうに寄ってしまっている。写真を見て、どの穴がずれているかわかるだろうか?肉眼的にはおそらくわからないだろう。しかし自分的にはこれは由々しき問題だ。きっとテンプレートの当て方が若干甘かったのだろう。何たることだ!やっぱり気合が足りなかったのだ!ごまかせない誤差ではないが、納得いかない作業となってしまった。ペグの遊びを生かして結果的にペグは正確な位置につけることができたが、なんだか不幸な気分になってしまった。90点くらいの出来だ。いつもなら確実に95点以上は取れる作業なのに、、、。しかもこれは秘密?なのだが久しぶりに木ねじの頭をちょっとだけなめてしまった。ストックがあるので、ねじを新しいものに取り換えて事なきを得た。付属の木ねじの品質は十分に高いと思う。

実は今回、ペグを取り付ける際に、セルフセンターガイドというペグの構成パーツに紙のスペーサーを巻いて、ヘッドの穴とガイドをピッタリにして、少しでも振動の伝達を向上させる、という作業をしようと考えていた。実際にこれを試みたのだが、ビニールっぽいプラスチックでできたガイドにはグリスがペタペタとついており、これに紙のスペーサーをきれいに貼り付けるという作業は難航し、結局あきらめざるを得なかった。残念だ。根気が続かなかったというのが本当のところかもしれない。結局いつも通り、ガイドとヘッドの穴にはわずかなクリアランスが残された状態でセットアップせざるを得なかった。悔しい。(具体的に何をどうしようとしていたのか、実物なしに説明することは非常に難しい。写真は撮らなかった。興味がある方は、GotohのSDS510という日本が誇る素晴らしいペグを買ってみてください)

ペグをとりつけて気が付いたのだが、このネックはものすごく重い。太いので仕方がないといえば仕方がない。合わせて作ったボディも結構重いので、これで一本組んでしまったら、腰に悪い楽器になってしまいそうだ。なんとか軽く仕上げられないものか、、、無理だろうな。

やはり楽器作りは、元気がある、気力が充実した時を待ってやったほうがいいようだ。木ねじが途中で折れてしまったりしなくって幸いだったと考えるべきなのだろう。これを仕事にしてしまったら大変だろうな、と思った。調子が悪い時でも、一定以上の成果を出さなければならないのだから。結局疲れただけで、あまり元気にはなれなかった。ため息とともに退場。お粗末。P5270777.JPG
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USACG Tele Practice Guitar 4 [音楽]

USACG Tele Practice Guitar 4

Tele.jpg木工はとても難しい。間口は広いように思うのだが、奥も底知れないくらい深い。加工そのものも難しいが、相手にする木材が多種多様であることが、木工をさらに困難なものにしているように思われる。たとえ同じ種類の木材であっても、部位によって、切り出し方によって、それから乾燥の度合いによっても大きな特性のばらつきが生じるので、加工するときには、木のその場その場での持ち味に加え、木目を読むなどして、目の前にある材料に対して柔軟に対応する必要がある。生物を扱う感覚だ。であるからして、思った通りの結果を一定の水準で得るためには、かなりの技術と経験が求められる。そこが楽しいとも言える。一方、楽器の制作において必須である塗装は、まるで別の領域だと思っている。こちらも広くて深い、職人の世界だ。高いレベルの施工をするためには、木工と同じく、芸術的な素養を必要とするように思われる。

そうであるから、塗装と木工の両方をこなす、というのは趣味としてはその範囲が広すぎ、かつ深すぎるため、不適切だと考えてきた。だから塗装に関しては、ラッカーによる小規模なタッチアップは例外として(時間と手間暇をかければある程度のレベルの塗装は十分可能)、これまで全て専門家の手に委ねてきた。これからもそうするつもりだ。

今回、このUSACG製のボディを使ってPractice Guitarを制作するに当たり、今持っている技術を最大限活用して、長く使えるできるだけ良質の楽器を作ろうと思っているのだが(楽器が増えすぎたので、もうそろそろ終わりにしたい、これまでにアセンブルした楽器を幾つか売ってしまうことも考えている)、ボディを弄り回しているうちに、ボディについた細かい傷が気になるようになってきた。購入した際に傷がついていたわけではなく、導電塗料の塗装や加工の途中で、どうしても各部がいろいろなものに触れるため、そうなってしまうわけだ。加工する際にはボディを可能な限り保護材で覆い、保管もかなり厳重に養生して行うのであるが、やはり完璧を期することは不可能だ。明りにかざしてみると、こまかい磨き傷のようなものがやや目立ってきた。

何事も経験だ。ボディの塗装を磨いて、鏡みたいにピカピカにしてみたい、という好奇心~誘惑に負けて、ついに電気ドリルに取り付けて使うバフのセットを手に入れてしまった。これがそのセットだ。Yanase.jpg1500円程度の廉価な製品ではあるが、質実剛健でそれなりの実力を持っているものと見た。本来はもちろん車用だ。

さて、何を使って磨いてやろうか、と考え、手持ちのコンパウンドを使ってみようとか、車用のワックスを買いこんで使ってみようかとも考えたのだが、結局、まず現在愛用しているポリッシュをつかってみることにした。Polish.jpgPolish2.jpg3ドル98セントと表示されているので、高級品ではない。これは昔々ラッカーフィニッシュの楽器を買った時に勧められて手にしたもので、シリコンが入っていない、全て天然素材で作られたものだと言う。高級な楽器や手作りのマニアックな真空管アンプばかり売っていた店で、リペアを担当していたGaryという名前の爺ちゃんが実際に売り物の楽器に使用しているというので、信用して買ってみた。劇的な効果は得られないが、それなりに重宝して使ってきた。幸いにもなかなか減らず、今でも結構たくさん残っている。

さて、これをウエスにプッシュっとやって、ボディをやさしく撫でさすり、そのまま乾いた面でふきあげた。ポリッシュが完全に乾くまで待ってから、羊毛でできた仕上げ用のパッドをおもむろに塗装面にあてた。最初はゆっくりと、次第に速度を上げながら注意深くシュコシュコと磨いた。ほとんど抵抗はなく、するするとパッドは塗装面をすべるだけだ。調子に乗ってドリルの速度を上げて、磨き続けた。ただしパッドは磨き傷を避けるために故意に中心をわずかにずらして取り付けてあるため、回転させるとけっこう暴れ、回転速度はあまり上がらない。故意にやっていることなのだが。

これを飽きずに、塗装面がわずかに暖かくなるまで繰り返して光に当ててみると、、、、驚きの美しさだ!とろりとしたつやのなかに、蛍光灯が美しく映りこんでいる。これはスバラシイ。(向かって左が磨いたところ 右はまだ磨き切れていない)あまりきれいに輝いているので、塗装前に着いたと思われる、微妙な打痕が目に付いてしまう。ボディ購入当初は、カットアウェイ周辺の一か所だけかと思っていたが、(塗装の下にパテのようなもので修正した跡があるのでわかった)、実はもう2か所あったようだ。知らないほうが幸せだったかも。でもこれも痘痕も笑窪と理解して、受け入れるしかないだろう。人間のする仕事なので仕方がない。

更にサルの様に裏面を全て磨きこんだ後は、問題の前面の研磨だ。これはキャビティがたくさんあるのでなかなか能率が上がらない。キャビティに塗ってある導電塗料がパッドに付着すると、パッドが真っ黒になってしまうので最大限の注意を払わなくてはならない。それでも多少はパッドに付着してしまう、、、。

全てがピカピカになったわけではないが、満足のいく仕上がりとなった。技術を持たない人間が、道具の力だけでこんなことが出来るというのは、やはりすごい事だ。

やはり塗装は深い。面白いが深すぎる。悲しい目に合わないうちに、手を引くのがよさそうだ。

-to be continued-
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USACG Tele Practice Guitar 5 [音楽]

USACG Tele Practice Guitar 5 -String Ferrule Installation-
いっぺんに書くとすぐに終わってしまうので、これまでの作業をちまちまと少しずつ書いて、楽しもうと思う。お暇な方のみお読みいただければ幸いです。

今回は納得のいかない、poorなqualityの作業結果となってしまった。

かつてUSACG製のテレボディを使って、力ずくでferruleをねじ込んで塗装を少々チップさせてしまったことがあった。であるから今度はそれを防ごうと、いろいろ調べたり考えたりして結構な準備をした。熱を使って塗装を柔らかくする作戦でいくことにした。前の晩はお酒も呑まず、お風呂に入って体を清め、よく寝て精神を研ぎ澄まして作業に臨んだ。プレスを使わずに、塗装を傷めずFerruleを面一(つらいち)に埋め込むことは、やってみればわかることだが結構難しい。なんとか上手にできるようになりたいものだ。

これが本日の道具立てだ。Tools.jpg右から、ferruleを熱して塗装を柔らかくするためのワット数が大きいはんだごて。近所の荒物屋さんで買った、長年愛用しているプロ用の小さなハンマー。それからこれも愛用しているプラスのねじ回し。最後はferruleをボディにあけられた穴に押し込むためのポンチだ。

ferruleはこれまで様々なものを使ってきたが、ボディの上にカラーが出っ張る形のものがほとんどだった。さほど難しい作業だとはおもっていなかったのでおおらかにやってきて、大ぽかをしたことはなかった。今回はボディと面一に仕上げる必要があるため、慎重に調べてサイズが合うFerrulaを購入した。Fender純正のVintage Telecaster のreplacement用に売られている、金メッキではなく真鍮製のものだ。USACGと関連したWebで調べたところ、これがぴったしカンカンだ、とTommyが勧めていた。Ferrula.jpgアメリカ製品らしく加工はかなりいい加減で(メキシコあたりで作られている可能性が高い)、めっきでもないのに色合いが各々かなり違っている。ちょっと不安だ。しかしサイズを細かく測ってみると、確かに寸法は同一であるからまあ大丈夫だろうと使ってみることにした。ブラスでできていて柔らかめなので、気を使う必要がありそうだ。普通の鉄製のものと違って、ガンガン叩いたりはできない。

作業手順だが、いろいろな人がいろいろなことを言っている。プロは大きなドリルプレスを使って圧入するというのだが、私が持っている精密加工用の小ぶりなドリルではちょっと無理だ。壊れてしまう。仕上げがラッカーであれば、はんだごてで塗装を溶かしながら圧入、という技が使えそうなのだが、このボディはポリで仕上げられているため、おそらく難しいのではないか。TommyはWebで、正しいサイズのものを使えば、そんなに力をかけなくてもきちんと入る、多少叩くのは構わないが、そっと叩いてほしい、などと説明していたが、理屈通りにはいかないのが現実というものだ、、、。前置きが長いが、私のやり方はこうだ。

0)Ferrula用にあけられた穴を、きれいに掃除して、余分な塗装をできるだけこそげ落としておく
1)Ferrulaをドライバ等で可能な限り奥まで、優しく押し込む
2)ムリならば軽くハンマでたたいて、面一直前になるまで押し込む
3)Ferrulaをはんだごてで熱して、周囲の塗装を柔らかくさせておく
4)ハンマでたたいて、面一になるまで押し込む

こう書いてみると簡単なのだが、実際はうまくゆかないこともある。今回1)の工程は
Pre.jpgこんな感じで、スムースに進んだ。この段階でFerruleの周囲にみられる塗装の乱れはもとからのもので、この作業に伴うものではない。ここまではよいのだが、これまで何度か試みて、それなりに良い結果が得られた方法、つまりはんだごてでFerrulaに熱を加えて周囲の塗装を軟化させ、それが潤滑剤かつボンドのような働きをしてFerruleがボディの穴にぬるりと入ってぴったりとくっつく、という効果を期待したのだが、何故か今回は塗装がなかなか柔らかくならず、作業は難航した。おそらく前回購入した際の塗装と、違うものが使われているのだろう。Ferrule自体もブラスであるため、固い金属で強く圧入するわけにもゆかず、様々な当て金を探して慎重に作業を進めた、、、、のであるが結果はこれだ。残念だ。これまでで最悪かも。オレは悔しい。Finish.jpg圧入されたFerrulaの周囲の塗装が、数か所で浮いてしまっている。そのうち剥げ落ちてしまうかも。これでは納得がいかない。比較のためにWarmothがプレスで圧入してくれたFerruleを示すが、それはこんな感じだ。WarmothFerrula.jpg専用の機械を用いた業者の仕事であってもFerrule周囲の塗装のごく僅かな盛り上がりは避けられないようだ。同じポリ塗装でも、塗装の質の違いなどもあるのだろうが、それでもとにかくかなり上手に圧入してある、と思う。

ということで、やや落ち込みつつ、お酒でも買いに行こう。長い人生、努力が報われないこともある。というか、その方が多いだろう。手間暇かけて最善を尽くして、上手くゆかないとへこむ。もう仕方がないので、以後面一はあきらめるか、プレスを購入することを考えたい、、、。もう楽器をつくるのをやめればいいのか、、、そうか、、。今日はすごすごと退場としたい。次の作業は、気力が充実するのを待つことにしよう。




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USACG Tele Practice Guitar 6 -Bridge Installation- [音楽]

USACG Tele Practice Guitar 6 -Bridge Installation-

急ぐとすぐに終わってしまうので、ちまちまアップデートして楽しみたい。お急ぎの方はおられないと思うが、いらいらするかも。ブリッジのインストールの小技についてうんちくを垂れてみたい。P6240843.jpgまず、これを見ていただこう。シールド処理は完了していないが、このボディの前面に、Telecasterのやや貧相なブリッジをねじ止めするわけなのだが、よく見るとお分かりのように、4つのねじくぎで横から押し付ける形になっている。その奥に並んでいる6つの穴は、弦をボディの裏側から通すためのものだ。これに弦を張ると、ボディに対してブリッジを押し付ける力がさらに加わって、ボディとブリッジが一体となって弦の振動を伝える、という合理的な造りになっている。構造的な欠陥はないわけではなく、ブリッジのネック側が浮いてしまう現象などは有名だ。ブリッジやサドルの材質にはいろいろな宗教があるようだが、危険なのでここでは触れない。私がこの楽器に選んだのは、日本が世界に誇るGotoh製のもので、品質管理はどう考えても世界一だ。In tune saddle seriesというやつで、サドルの溝に特殊な加工が施してあり、3wayであるにもかかわらず、オクターブをかなり正確に合わせられるというものだ。サドルが斜めになっていないため、弦の間隔がちぐはぐになるようなこともない。長期間使用した際の摩耗が気になるが、その時はまた買えばいいのだ。以前チタンのサドルを購入して気に入っているのだが、あまりに高価であったため今回の楽器への採用を見合わせていたのだが、ブラスのサドルで廉価なものが販売されたため、これに飛びついたというわけだ。チタンのサドルのものと比較すると、おそらくより暖かい音質になるだろう。Gotoh Bridge.jpg

さて、もくねじをぐりぐりとねじ込めばいいと思ったあなた、それは浅はかというものだ。やってみればわかる。そのままブリッジの上からねじねじすると、ボディのねじ穴周囲の木部が僅かに浮き上がるため、周囲の塗装が剥げてしまうのだ。だから、見えないところではあるが、穴の入り口をすこし大きくしてあげる必要がある。また、必要以上に強いトルクをかけてねじを締めこまないことも大切だ。

以前StuMacのDanがやっていたInstruction Videoによれば、すこし大きめのドリルを逆回転させて、穴の周囲を”揉んで”あげるとよい、とのことであった。そうすることでねじ穴の入り口の塗装や木部が少々すり減るため、上記の問題が避けれる、ということだ。私はどうしているかというと、金属加工に使うねじ穴用のリーマーを使うことが多い。柔らかい木の場合は逆回転させて、比較的固い木部の場合は普通に回転させて、電気ドリルではなく、ピンバイスなどでゆっくりと加工する。加工済みの写真がこれだ。低音側の一つの穴以外は、ねじ穴周囲の塗装が僅かにそげていることがわかるだろうか?ねじ穴周囲の塗装を除去しただけなのに、結構な量の塗装が取り除かれていることにも注目してほしい。P6240846.jpg”これならママもオッケーさ”というわけで、ブリッジの受け入れ準備完了である。この工程を注意深く行えば、その過程で塗装の厚さや固さ、また、木部の性質などを身をもって感じることができる。このボディの塗装は見かけよりも厚く固いようだ。傷がついたらガンガン磨いてピカピカにすることができそう。また、木部はSwamp Ashの割には目が詰んでおり、固いということもわかった。だから結構重いのね。

リアのPUには何を選ぼうか、、、これまでにいくつか買い集めた、Billが作ったものを選ぶことにした。BL PU.jpg細目のポールピースがなんともいい味を出している。ポールピースの先端が滑らかに面取りされている。細やかな気遣いにうっとりしてしまう。磁界の形を変えて、音にもいい影響を与えるための処理なのだと理解している。BL Back.jpg確か290TLEという品番で、エスクワイア用の絶版ものだ。これまで何年も死蔵しており、はんだを乗せるのは今回が初めてだ。これはけっこうパワーのある、元気な音のするPUの筈で、基本的にフラットワウンドを張るこの楽器には合わないかもしれない。しかし試してみなければわからない。とにかく最高に気に行っているパーツだけを使ってこの楽器を組みたいのだ。少しでもノイズを減らすためにワイアを丁寧に処理して、Wire.jpgブリッジに装着だ。なんともいい眺めだ。Installed.jpg裏側から見るとこんな風で、Installed Back.jpgPUはスプリングではなく、ゴムチューブと細目の”非磁性体”でできたボルトで固定されている。これをボディに乗せてみると、、、キャビディが浅いのできちんと収まるか心配していたが、配線をきちんと処理してすっきりとおさめることができた。Installed Body.jpgこれから、シールディングの作業を完成させて、少しずつ完成に近づけてゆきたい。Ferruleのことは忘れることにした。

Gotohの製品はとにかく最高だ。世界に誇る日本製品であることは間違いない。しかし非常に残念なことに、この会社は個人の製作家や愛好家を相手にしてくれないのだ。個人相手の商売は、おそらく最初から念頭にないのだろう。会社の方針なので仕方がないが、返すがえすも残念だ。私は自分が必要なハードウェアがあれば、できる限りこの会社の製品で統一したいと思っているのに。それでも実際に私が購入した製品に問題があった時は、親切にかつ迅速に対応してくれたことを明記しておく。(ペグのボタンが1ミリほどはずれかけていた。人から製作を依頼された楽器だったために細かなことだが交換をお願いしたところ、ものすごく迅速に対応していただいてありがたかった)

結局一部の非常に限られた代理店や楽器店から購入せざるを得ないため、無意味に高い値段で製品を買うしかない。Gotoh社にお金を払うのならば喜んで払わせていただくのだが、製品を作っているわけでもない代理店にお金を沢山払うのは、何とも納得がいかない。相場によっては海外から逆輸入した方が安くつくことも多いくらい、割高だと感じている。個人を相手にすると、私のようにおかしなやつも多いので、やはりあまりいい商売にはならないのかもしれない。しかし少なくとの日本在住の愛好家には、もうすこし手に入りやすい形で製品を売っていただけると嬉しいと思う。こんなところでつぶやいても仕方がないかもしれないが、よろしくお願いしたい。
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