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USACG Tele Practice Guitar 9 -Shielding and Nut- [音楽]

USACG Tele Practice Guitar 9 -Shielding and Nut-
Cavity2.jpgシールディングに関しては、結構苦労してきた。アルミを張り込むのは見かけが安っぽいのでちょっと気に入らない。銅のテープを張り込みたいところなのだが、最近売られているものは薄っぺらいテープが多く、10年ほど前によく売られていた結構厚みのあるものはなかなか手に入らない。薄いとぺなぺなとしてしまって、きれいに張り込むのには手間がかかる、、、。

導電塗料を塗れば簡単じゃあないか?と思ったのだが、ボディの表面をきれいに塗るのがなかなかの手間だ。きちんとマスキングテープを張り込んで、何度も塗料の塗装に挑んだのだが、どうしてもきれいな曲線や直線が出ない。修正をする方法は身に着けたのだが、それでもどこか素人くさい、泥臭い仕上がりになってしまうのだ。許せん。気に入らん。

それでたどり着いたのがこの方法だ。

まず、キャビティの底面から側面にかけてたっぷりと導電塗料を塗りこむ。キャビティのふちまではなかなかきれいにぬれないので、ぎりぎりまで攻めない。それで、これを2-3回繰り返して、十分に乾くまで待ち、側面だけを銅箔テープで仕上げるというわけだ。実際の写真は、ふちの直線を出そうと奮闘して塗料を塗って敗北した後なので、あまり美しい仕上がりとはなっていないが、まあ許容範囲だろう。修正は上記のように十分可能なのであるが、今回はあまりこだわらないことにした。許してくれ。敗者復活戦はなかなか気合が入らないのだ。これを全てのキャビディに行って、各々をコントロールパネル、ブリッジプレート、それからピックガードを介して電気的に結合すれば、立派なシールドの完成だ。(この写真にリアPUのキャビティから出した”ベロ”が写っているが、幅と長さが美しくないので完成前に少し細く短いものにやり直した。どうも黄金比のような、かっこよく見える比率があるようだ)次に楽器をアセンブルする機会があれば(もうやめようと思っているけれど)この知識を経験を生かしてより美しい仕上がりを期待できるだろう、たぶん。Electrosocketの周囲は例によってきちんと塗料を塗りこむことが困難なので(やってみればわかる)、無理せずにシールド線を使って凌ぐことにした。これでシールドは理論的にはほぼ完璧だ。アースはボディにラグをねじ止めして落としても良いのだが、頭をひねってコントロールパネルに落とすことにした。この方が簡単だし合理的だし、シールド効果は同じはずだ。”合理的”というのはFenderが作った楽器に一貫していることなので見習うことにしたわけだ。後々中身をいじるときなどにもその方がやりやすい。全体として、一応、オーディオの世界でうるさく言われる一点アースの形になっている。これでハムノイズとはほぼ完全におさらばできるだろう。最近アセンブルした楽器は全てこの方式を採用しているのだが、例外なくうまくいっており、ノイズの多いシングルアンプ(真空管)を使っても、ハムが気にならない。高音域が失われて物足りないようなこともない。さて。

次なる仕事はナットとセットアップだ。これは真剣に向き合おうとするとなかなか手ごわい仕事で、やりがいがある。まだまだ勉強中、といったところた。あまり時間がないが、ざっと書いてみようと思う。しかも今回の楽器はクラギの夜間練習用、という役割を負っているので、クラギに準じたセットアップを心掛ける必要がある。つまり弦高高め、幅広目、弦太目ということだ。10から始まるフラットワウンドを張るつもりだ。経験的に、Fenderスケールのエレキにこれ以上太いフラットワウンドを張ると、指は痛いしネックはそるし、とてもじゃあないが弾きたくなるような魅力的な楽器にはならない、個人的には。だからなんとかしてあ指に負担をかけないような設定にしないとダメなわけだ。弾き心地が悪いと、結局その楽器を手に取ることがなくなってしまう(経験済み)。それでは元も子もない。だからテンションを緩める工夫をすることが必要だ。とにかく作業を始めてみよう。

Nut1.jpg最初の仕事は、ネック材に刻まれたナットスロットのお掃除だ。結構な量の塗装がここに入り込んでおり、このままナットを乗せても平面でネック材と接することにはならないので、いい音になりようがない。だから小さなのみを使って必要のない塗装をしこしこと掃除する。これをやりたくって、わざわざ高いお金を払って、StuMacから”のみ”を輸入した。他に売っているところがないから仕方がない。これはどうももともとはデコイかなんかを作るための道具のようだ。力を入れず、木部を傷めずに塗装だけを削り取るのはなかなか難しい、しかし結構楽しい。この作業に没頭して結構きれいにすることができた。その後、Nut2.jpgナットブランクの幅を調整し、スリットにぴったんこに入るように調整する。ナットはいつもの無漂白の牛骨だ。ここまでは全く難しいことはない。時間をかけて丁寧にやりさえすればいいのだ。さて、次に進もう。この先からある程度の技術を要求される作業段階になる。

次にナットブランクに指板のRを写し取る。それからフレットの高さ、さらにフレットから弦の下面までの高さ(ざっくり0.5㍉位)を足して、さらに多少の余裕を見積もってRをそのまま上にずらして、鉛筆で線を引き、その線に沿ってナット材の荒削りをする。上記の理由でいつもより高さに余裕をもって下書きをする。実際はちょっと高すぎて無駄に手間がかかってしまったのだが、それはまあいい。低すぎればその瞬間にそれまでの作業が無駄になるわけだから。Nut3.jpgこんな風にざっと計算し、鉛筆でできるだけ滑らかな線を引いて、数種類のやすりでごしごしして、削る、削る、また削る。Nut4.jpgそれでNut5.jpgナットのラフな原型を作るわけだ。

ここまで来たら、ナット製作に特化したバイスにナットを傷つけないように挟み込み作業を進めることをお勧めしたい。作業能率が違う。最終的な仕上がりが違う。爺になって目が悪くなってきたので、私は時々、おでこに取り付けるルーペを使う。”だろ勘”の作業は、厳に慎むべきだ。そしておもむろに、StuMacで売っている優れもののスペーシング用ルーラーを使って弦の溝を掘る場所を決める。これはものすごい大事な作業だ。こうやって客観的に書いてみると、これまでずいぶんStuMacにお布施を払ってきたことが明らかになる、、、しかしそれはまあいいことにしよう。このルーラー、何が優れているかというと、細い弦の間隔は狭く、太い弦の間隔は広めにとってあることが素晴らしい。難しい計算をすることなく、自然な弦の間隔を教えてくれるのだ。実際にやってみるとわかるのだが、弦の太さを無視して間隔を全く同じにとってナットを作ってみると、なんとなく弾きにくい楽器になることは請け合いだ。なんというか、左手が嫌がる感じ。そのうちにひかなくなること請け合いだ。しかしこのルーラーを使って弦のスペーシングをしさえすれば、左手が笑って喜ぶような夢のようなナットを作ることができるのだ!だからこのルーラーは、趣味でたまにしかやらない人であっても購入する意義があると思う。この製品が売れても私は一銭も儲からないけれど。こんな具合に使う。決して上下を間違えてはいけないよ!Nut6.jpg

それから、この先は、青いギターを作った時にも書いたけれど、シックネスゲージとジグを使ってナットに掘った溝を少しずつコントロールして削りこむ作業にうつる。やすりはナット製作につかう専用のものをお勧めしたい。今回、3弦が巻き弦を使うことを想定したので、0.02というStuMacやすりを使ったのだが、なんとこのやすりのゲージが狂っており、倍近く幅広い溝が掘れてしまった。途中で気が付いたから良いものの、時間をかけて仕上げつつあったナットを”飛ばして”しまうところだった。6つの溝のうち、一つでも使い物にならない者を掘ってしまうと、そのナットをあきらめなければならない。そこがナットづくりの恐ろしくも厳しいところで、失敗が許されないミッションなのだ!まあ、多少のごまかしは利くけれどね。それで、このナットのことなのだけれど、StuMacに相談してみたところ、”すぐに新しいものを送ります”とのこと。相変わらず素晴らしいサポートだ。その後届いた新しいナットファイルは完璧な製品で、ゲージもきっちりとあっている。最初に買ったものは、間違えて幅が広いファイルを売ったのだろう、というのが正直な感想だ。まあいいか。ともあれ、ナットはなかなか上手にでき、弾き心地も満点だ。

1フレットの弦高は、1弦から、0.35-0.35-0.5-0.5-0.6-0.6とした。インチ法にはなかなか慣れることができないため、私は今でも㍉で測っている。だって感覚的に分からないんだよ!また、ナットのボディ寄りの部分はシャープでなければいけないが、ヘッドに向かうにしたがって溝をさらに深くして弦とナットとの接触をナットの幅の大体半分になるくらいに設定している。わかっていただけるだろうか?こうすると、音が変わるという説もあるのだが、それは私にはいまひとつ実感できない。しかし一方でテンションが大きく変わることはものすごく実感している。こうすると、テンション緩めの指にやさしく弾きやすい楽器になるのだ。不思議だが本当だ。ナットの幅いっぱいに弦を接触させたときと比べると、指に対する負担が大幅に、主観的には半分程度になるくらい減るのだ。これを知ったおかげで、太めの弦を張っても指が疲れない楽器を作ることができるようになった。結局12フレットでの弦高は、1弦から1.1-1.2-1.35-1.5-1.6-2.0という結果になった。これでバズは出ないし、大変弾きやすい。レリーフはほぼゼロ、ものすごくまっすぐなネックに調整した。ビビるようなら多少ロッドを緩めてやればいいのだ。巻き弦は半分くらいナットに沈め、プレーン弦は直径よりやや深めに沈めることにした。口で言うのは簡単だが、実際にやってみるとこれもなかなか難しい。それから、とんがった部分や、鋭い全ての部分をすこしだけ丸めて、ナットの制作は完了とした。90点くらいの出来だ。暇なときにコンパウンドで磨いてピカピカにしてやるつもりだ。

ナット製作の奥は深い。軽い弦を張っているときは、とにかく力で抑えこんでしまえばよく、ごまかしがきくのだが、太めの弦を張った時はナットの加工精度が大きくものをいい、弾きやすい、弾くこと自体が快感になる楽器になったり、テンションが高すぎてとても弾く気にならない楽器になってしまったりするのだ。こんな小さなパーツなのになんと重大な使命を帯びているのだろう。また、今回はナットを上から見てわずかに矩形にする、という試みを行った。クラギの真似をしてみたのだ。6弦側がやや細く、1弦側が太い、という設定で、1弦側からナットを滑り込ませると6弦側に届く寸前にピタリと止まるという寸法だ。今回は何故か、普段の行いがよいのか、一発でびしっと決まった。まぐれまぐれ。唯一の欠点として、ナットの素材が0.1㍉ほどナットスロットよりも短いのが玉に瑕だ。売っていた規格品のナットブランクがネックの幅と比較してわずかに短めだったので仕方がない。アメリカ系の文化の中でスタンダートではないことをしようとすると、たいていこうなる。仕方がない。

グダグダと内容の薄いことを書き連ねてしまった。ともあれ、自分の持っている技術を確認しがなら、理屈をこねまわし、楽しんでナットを作って、製作は順調に進んでいる。

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