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YHさんとおじさんの再生 [雑文]

YHさんとおじさんの再生

この人は自分と同じ年頃の女優さんだ。歌手でもある。かつては大変人気のあった人だと記憶している。いまもアクティブに活動をしておられるようだが、私同様、かなり人生のキャリアを積んでこられた方であることは間違いない。申し訳ない話ではあるが、若かりし頃、私はこの人に全く興味がなかった。映画の中で輝くタイプの女優さんなのかな、と認識していただけで、それ以上でもそれ以下でもなく、やがて、私の個人的な生活の中から静かに消えて行った。

そうではあったのだが、なぜか最近すっかりこの人の歌声にはまってしまっている。それはYou Tubeのせいだ、というかYou Tubeのおかげだ。音楽は仕事の次に好きで、音楽がないと生きていけない、生きている意味がない、と常々感じているのだが、これまで性別を問わず、歌、もしくは歌い手さんに夢中になったことは皆無だ。これまで聞き続けてきた音楽はほとんど全てインストものであり、それは今でも基本的には変わらない。おそらく若いころの頭でっかちな状態のまま、心というよりは頭で音楽を聴いてきたからだろう。不自由なことだ。しかし残念だが今更音楽の好みなんてかえられない。結果として、歌物の音源はほとんど持っていない。そういう偏った音楽好きなのだが、最近この人の歌声でなんというか、“救われる”ような体験をして、個人的にたいへん感謝している。

子供の頃は大人は常に正しく強いものだと思っていた。しかし自分がりっぱなおじさんになってみると、中身は残念ながら子供の頃と大して変わらない。本当か?本当だ。だって自分がそうなんだから間違いない。日本の中年男性は文化的に正しく強くあることを求められるので、常にそんなふりをしていなければならないが、内面はいつも揺れている、、、少なくとも私の場合はそういうことが多い、、、ような気がする。内外のギャップを埋めるために、おじさんたち(ここは“私”と置き換えてもいい)はいろいろなことをする。自助努力というやつだ。たとえば、酒や女の人なんかに走るのが代表的だ。金や権力に走る場合もあるだろう、、、。ゴルフとか家族とか、いろいろほかにもありそうだ。若いころは動物(女の人)にはまり、最後は鉱物(庭石)になる、なんて話を聞いたこともある。なかなか含蓄が深いではないか。

私もおじさんになって初めて実感を伴って理解したのだが、おじさんにはあまり潤沢な選択肢がないような気がしている。酒もあまりたくさん飲めなくなってしまうことが多いし、(男にとってとりあえず最重要と思われる)女の人にはあまり受けないことが多い(例外はあるだろうが自分はずいぶんダメになった)。金、というのもあるのだろうが、若いころのようなどろどろふつふつとした欲望が枯渇に向かい、欲しいものがあまりないし、ぜいたくさえ言わなければ大抵のものは持っている人が多いのではないだろうか。それまで懸命に働いてきた場合は、という条件付きではあるが。だからいくつになっても“金”“金”といっているようなおじさんは、少数派かもしれない。金や権力で女の人を、という形は確かにあり得るが、純粋に男として、ということになると若い奴らとはなかなか肩を並べることが難しい。また、多くの場合、体調も最高というわけにはいかないので、激しい運動にはまり込むこともできない。この国(我が国、というべきか)でまともに働いている大人なら、趣味に割ける時間など、十分に取れるはずがないのだ。

そんなこんなで、話のまとまりが悪いが、だから結局、おじさんたちは心のバランスを取るために権力に走るのではないだろうか。とりあえず仕事周辺で“えばり散らす”というやつだ。つまり仕事近辺で“えばる”より他に精神の安定を得るための選択肢が少ない、というかほとんどないのだ、多分。不幸にしてあまり“えばる“ネタがないおじさんは、体を壊してもやっぱり酒?それもだめなら、、、どうしたらいいんだろう?想像もつかない。なんだか悲しい話だ。ともあれ、おじさんとは意外に不安定で傷つきやすい生き物なんである。そうに違いない。しかしおかしな話の展開になってしまった。

そういうおじさんであるところの私が、精神的にやや不安定になっている状態だった際に、なにかの拍子に -幸運にも- You Tubeでこの人の歌声を聴いてしまった。なんだかコップに水が満たされたような感じがした。やめられずに何度も何度も繰り返した。YHさんの若かりし頃の張りのある透き通った声に身をゆだねるのは、お恥ずかしい話だが大変心地よかった。携帯プレイヤーに入れて通勤中に真剣に聴きこんだり、しまいには高価なオーディオ器材を買ったりもした。音楽にはものすごい力、人を変える力があることは身をもって知っていたのだが、この年になって音楽に再び助けられるなんて。繰り返しこの人の歌声を聴くことで、井戸の底にはまってしまったような精神状態から徐々にではあるが抜け出すことが出来た。酒量も劇的に減った。酒よりも影響力のある歌声なんてすごい。

多分こういった分野の音楽はアイドルポップとか呼ばれるのだと思うのだが、お金がかかっているだけあって、意外ではあるが音楽として質的に高いことが多いように思われる。この人の歌の場合、映画とタイアップしたようなテーマ曲の数々は、当時(といってももう30年以上も前になる)実力者と目されていたミュージシャンたちによって提供された楽曲が多く、今聴かせてもらっても陳腐な印象を受けない。詩もしかりで、おじさんの鑑賞に耐える、といってもいいように思う。時代背景を共有していることももちろん大きいのだろう。懐メロを楽しむようなものだ、というか私にとっては懐メロそのものだ。

残念なことに、映画のテーマ曲などは数が限られているため、すぐに歌詞を覚えるほど聴きこんでしまい(ただし自分で歌ったりはしない)、頭と心が飽和してしまった。私の心の“渇き”は満たされていないが仕方がない。しかしそうこうするうちに最近、おそらく最近のTV番組の影響などもあるのだと思うが、YHさんの新しいDVDが発売されたことを知った。物が物なので、恥ずかしく、誰にも言えず、家人にも隠してこっそりと購入してみたのだが、これがイイ。声の張りや透明感などは、当然30年前と比ぶべくもないのだが、その分声の深みが増しており、私の耳にはより心地よく響いた。私の耳も、多分心も、加齢とともに劣化しているのだろう。おじさんにはおばさんの声が心地よいのだ、ということが分った。最近も、一人でいるときはかなりの頻度で聴いている。仕事中も、作業に差支えがない場合は聴いていたりする。運転していて道路が渋滞するとすかさずCDをかける。恥ずかしいが仕方がない。全く飽きることがない。自分はサルなのかもしれない。このDVDに飽きるころには、自分は昔のように元気になっているのではないか?という予感がしており、それを期待している。やっぱりオレ、最近ちょっと病んでいるみたいです。

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