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高価な楽器を購入する話 7 [雑文]

高価な楽器を購入する話 7 -Gerrit van Bergeijk Guitar-
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Gerrit van Bergeijk というのが、私が選んだLuthierの名前だ。Gerritと呼ばせてもらっている。

いろいろなことがあった。結局トップが割れてしまった一台目のギターは、Gerritによれば”おそらく乾燥のため”に割れた、という見立てで、何度か連絡をくれたところによれば、加湿等の処置で”傷一つ残さずに治すことができた”とのことであった。また、塗装や木部の複数の問題も理解・共有してくれ、私が納得できるレベルに修理する、と言ってくれた。ずいぶん良心的に対応してくれたと思う。欧米人の場合、面倒くさくなると”シカト”を決め込む人が多いように思うので(もうお金も払ってしまったことだし)、私は運がよかったのだと思う。我々日本人が海外に売っている製品の完成度を見てもわかるように、我々の”もの”や”道具”に対する要求水準は高く、楽器もその例外ではない。きちんとしていないと気持ちが悪いわけだ。まあ、個人差は文化の差よりも大きいだろうから、あくまでも一般的な話になるが。ましてや大切な楽器がいい加減に作られているなんでとてもとても許容できない。同じように考えている、身の回りにある製品に高いレベルの完成度を求める人が多い国は、日本以外には、世界中を見回してもおそらくドイツくらいだろうと思われる。私がドイツやその文化を熟知しているわけではないのだけれど。楽器は弾いてなんぼのものなので、見てくれはどうでもいいのだ、という考え方は成立するだろう。しかし私は、私自身はそれでは絶対に嫌なのだ。せっかく大金を払って時間を費やして楽器を作ってもらうのだから、弾きやすく、いい音がして、さらに美しい楽器を手に入れたいと願う。金も時間も手間もこの際問題ではない。妥協はしない、できない。Gerritが作ってくれた一台目の楽器は、やや弾きにくく手なずけるのに時間がかかったが、非常に素晴らしい音色を持っていた。私が右手と左手の使い方を楽器に合わせて大きく変える必要があったが、それはむしろ当然のことだ。しかし仕上げが荒削りで傷だらけ、ねじ穴をあけたあとをふさいだりしているのはどうも納得がいかなかった。しかもトップが割れるという不幸に見舞われた。個人でできる最大限の予防をしていたにもかかわらず、だ。

こちらも大人の対応を心掛けたが、Gerritの応対は素晴らしかった。送料も自分が持つからとにかく壊れた楽器を送ってくれ、完璧に直して送り返す、と言ってきた。結局送料は私がそう主張して私自身が払ったのだが(結構高かったし、準備も大変だった)、彼は何度も自分が負担すると言ってくれた。Gerritは裕福な有名製作家なのか、そうではないのかわからないけれど、人柄がいいことは間違いない。とにかく、リペアは製作よりも技術的に難しいので、内心ひやひやしながら待った。しかしこの人に賭けたわけだから、上手くいかなくてもその結果を受け入れようと腹は決めていた。

一方の新しい楽器だが、Gerritは私の演奏スタイルに合わせて、やや薄く小ぶりのボディで、細目のネックの楽器を作ってくれたらしい。一度だけ”ネックを小さくしてよいか”、と連絡があったため、”木取りの問題で細くしたいの?”と返答したら、”木はいくらでもストックがある。よりよいバランスの楽器を作りたいんだ”と言ってきたので、”すべて任せるのでいいようにやってくれ。値段は多少高くなってもいいから、今できるベストの仕事をしてほしい”とお願いしておいた。だからどんな楽器が送り付けられてきたとしても、文句は言えないし、言うつもりもない。

さて、その後何度もGerritとEmailでやりとりをした。製作途中の写真も送ってもらった。合計すると100通を超えるのではないか。飽きずに何度もやり取りしたものだ。彼もよく付き合ってくれたものだ。少なくとも私が音楽に注いでいる情熱の暑苦しさくらいは伝わったのだと思う。そしてとうとう運命の日が訪れた。”***便で送った”という連絡が入る、、、。ああ、本当に長い道のりだった。休日を取って荷物を受け取ることを予定していた。問題があった場合に迅速に対処するためだ。しかしなんということだろう、楽器はすでに東京に到着しているのに、そこで何日も放置されているようだ、、、何度もトラッキングをしてみると、オランダに文書を要請して待つなどと書いてある。しかし私には何の連絡もない。どういうことだ?憤って電話をかけてみる。

すると、修理から上がってきた楽器にも消費税をかけたいという。何を言っているのだ?頭が腐っているのかこいつは?同じ楽器に2回税金を払えというのか?理由を問うと、修理をした楽器はとてもきれいで、新品同様だから消費税を払ってもらいたいと繰り返す。修理した楽器がきれいなのは当たり前だ。何のための修理だと思っているんだ!しかしお金を払わなければ、いつ配達できるかわからない、とほとんど脅迫された。結局合計4-5人のスタッフと話をした。応対が丁寧な人もいたが、税金に関しては全くらちが明かなかなかった。楽器を保存してある倉庫は、温度も湿度も管理されていないのだという。このくそ熱いこの季節の日本で!オレは気が狂いそうだったね。某国に住んでいた時は、***はきっちりと仕事をしてくれた。問題となるようなことはなかったように記憶している。しかし我が国の***は、税金の支払いについては非協力的だし、午後5時以降は配送しないというし、日曜日もだめだというし、だめだだめだと繰り返すばかり。とにかく金を払えの一点張りだ。手数料も払ってもらう必要があるという。しまいには荷物を取りに来いという。フザケルナ!しかし大事な楽器を人質に取られているのでこちらはどうしようもできない。日本の***のサービスは業界最低だ、という情報を後にWebで手に入れたが、後の祭りだ。身を以て実感することになってしまった。本当に文字通り最悪だ。***のスタッフの人たちと話をしていると、某国によくいる主張ばかりするが仕事をする気にない、出来の悪い脳タリンと話をしているような気がした。(不適切な表現失礼いたしました。しかし脳タリンと表現するしかない。)Gerritが経過を聞いてくるので、実情を伝えたところ私のためにずいぶん怒ってくれた。現地の***にもすぐに連絡を取ってくれた。

仕方がない。話をしても無駄のようだ。まず大切な楽器を手に入れてからお金を取り返すことにした。オランダの***も話がおかしいから協力すると言ってくれている。この件については、後日談としてまたアップしたい。Gerritも気をもんでいるようだし。

とにかく、そのような事情で、結局1日半有給を使うことを余儀なくされた。***からお詫びの言葉はない。しかも約束した時間には配送されず、勝手に留守電に”早く来る”とメッセージを残して我が家に勝手な時間に来て、”今お宅につきましたー”、と、お気楽な声で電話をかけてきた。時間の約束をした覚えはないだと?馬鹿野郎!どこまで腐っているんだ***!約束を守らないやつは生きている資格がないんだぜ!金をとるだけの仕事をしろ!日本人なら腹を切れ!恥を知れ!というのが本心なのだが、怒りを押し殺して、数時間後に再配送するよう依頼した。***のスタッフとできるだけ目を合わせないようにして、怒鳴りつけないように最大限の注意をしながら、必要な書類がそろっていることを注意深く確認したうえで本来の倍以上の消費税を納めた。しかしここで嫌な気持ちに封印して、戦いは後ですることにして、ようやく手に入れた二台の楽器に心を向けた。

Gerritに報告するためにたくさんの写真を撮りながら、慎重に慎重を重ねて、ギターケースを汚れてしまった段ボールからどりだした。単独で買えばけっこうな値段がするHiscoxのケースの表面がけっこう傷々になっていたため中身が無事かどうか本当に心配した。大事に部屋に運び込んで、段ボールを処理して、、、そしてドキドキしながら一つ目のケースをあける。これは新しい楽器のほうだ。フレンチポリッシュ独特のいい薫りに、新しい木やニスに匂いが混じって独特の雰囲気をかもしだしている。出てきた楽器はピカピカ、完璧でたいそう美しい(木目を埋める塗装をしなくってもいい、といったのだが、私がこだわりが強いことを察して薄めだがピカピカの塗装をしてくれたようだ。強度が低いフレンチポリッシュは表面版だけ)。チューニングをして音を出してみる、、、、と、、、これは素晴らしい。新しい小さめの楽器なのだが、ネックはまるでエレキを挽いているように手になじむ。これはいい。新しく、軽めの弦を張ってあることもあってボディの鳴りは今一つで音は固めだが、これからどんなふうに育っていくの楽しみだ。楽器が健康であることを隅々まで確認してからケースに戻す。一安心だ。

リペア済みの懐かしい楽器はどうなって帰ってきただろうか?新しいのより大き目のHiscoxのケースをあけて、久しぶりの再会だ。こちらも素晴らしい。トップの割れはほぼわからない。ヘッドの傷や塗装の問題、指板の荒れや傷、ネックとボディの接合部の塗装、ペグのボタンの割れ、、、などなど、私が覚えている限りの問題は、ほぼすべて解決済みだ。いい仕事をしてくれたようだ。ありがたい。また、ブリッジにも手を加えてくれたようで、テンションのきつい重い弦を張ってあるにもかかわらず、ものすごく手になじんで弾きやすい。指に対する負担も、リペア前に比べるとずいぶん減っている。何時間でも弾き続けることができそうだ。音のバランスも良く、倍音も適度に鳴って、弾いていて気持ちが良い。こんなに好い楽器だったっけ?サイドに開けられた二つのモニタホールも有効に機能しているようだ。この楽器はかつてしばらく弾いていたこともあり、すでにこなれ始めてきている印象で、弦の振動に敏感に反応たボディがスピーカーのように機能していることが弾いている間中感じられて快感だ。弦がわずかに伸びるしなやかな感じが直接指に伝わってきて、弾くいていること自体が気持ちが良い。つい涎を垂らしてしまう。文句なしで素晴らしい楽器だ。最高だ。

この日を迎えるまで、ものすごく意味のない苦労をした。時間もお金も使った。***との戦いが残っているが、ようやく、望みの楽器を手にすることができた。しかも2本同時に。満足できる品質だし、何か問題があればGerritに相談すれば何とかしてくれるだろう。一安心だ。今回こんなに苦労したのは、”よその会社の楽器は買いません”、と決めたHeritageとの約束を破ったのがいけなかったのかもしれない。でも彼らはクラギを作っていないからなあ、、、。問題は、アメリカから楽器を買うのと、ヨーロッパから買うのでは、壁の高さが違う、ということだけだったのかもしれないが。後日談をそのうち書いてみようと思う。

日本語だとGerritが読めないので、英語版も書いてみるつもりだ。
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