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2023/02/12   とあるターミナルで [雑文]

2023/02/12   とあるターミナルで



あまり大きな声で言いたくないのだが、たまーに、もしくはまれーに、かつての私には電車に乗っていると発作のようにとにかくビール(もしくは日本酒)を飲みたくなることがあった。同じような発作に襲われる人にはわかるだろうが、仕事さえなければもうその衝動に従うしかない、のである。幸いにしてさいきんは大丈夫だ、うん。なので、特定の駅の特定の場所におもむいて周囲に気を遣いながらプハーッとやることになるのだが、昨夜どうしても(飲酒につながるので)長いこと避けていた電車に乗る必要があり、運悪く、もしくは当然のこととして、突然の強い発作に襲われた私は、なすすべもなくその衝動に身をゆだねた。つまり、かつてよくいったその場所によろよろと足を運んだわけだ。するとほとんどいつも誰もいないそのスポットには珍しく先客がいて、小柄な初老の男性と若い女性のカップルが濃厚に何度もハグしあっていた。古風に書けば、何度も”熱い抱擁を交わしあっていた”。興味深かったのは、女性ではなく男性の方がより深い悲しみに沈んでおり、女性がよしよしして男性を慰めているという雰囲気を醸し出していることだった。逆じゃないのかフツウ。おそらく間違いなく二人は別れを惜しんでいるのであり、その大きなターミナルステーションでお互いにサヨナラを告げようとしていた、というかそういった濃厚な雰囲気を漂わせていた。私は彼らの人生の句読点みたいな瞬間にたまたま立ち会ってしまったわけだ、ロング缶を小脇にぶら下げながら。そのまましばらく周囲には全く無関心になっている二人を眺めていてもよかったのだが、お気に入りのスポットをすごすごと彼らに譲り渡し、少し離れた場所で、周囲に迷惑が掛からないことを確認してから、ようやくプハーッっと一息つくことができたのであった。

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