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2023/11/10   Fujigen Telecaster Thinline その後⑤ [音楽]

2023/11/10   Fujigen Telecaster Thinline その後⑤



この楽器、いろいろ苦労して、Fujigenの方にお世話になって手に入れたのだが、Bodyのポリ(ウレタン?)仕上げがどうにも気にいらず、今後一緒に暮らしていけるかどうか自信がなく、正直売却も考えた。しかし今回PUの交換(これで保証はなくなると思われるがそれでいい。楽器は自分に合わせて使うものだからね)で内部の構造や仕上げを確認して惚れ直してしまった。結果的に売らなくってよかった。そのあたりの話を書いてみようと思う。


Bodyはトップラッカーでさえないので、あのなんとも言えないいい匂いもしないし、手触りもつるつるしている。塗装の表面は固く、ムラがなく均一ではあるが、どこかプラスチックを思わせる感触、これが嫌だったのだ。しかし弾き込むにつれてネックがあめ色に変化してなんともいい味が出てきた。特殊な加工(Circle Fretting System;TMPの松下さんの考案と思われる)を施したフレットもすでに結構減ってしまって、指板の汚れこそないものの、なんだかすこしずつ愛着がわいてきた。もう少し太いとなおいいのだが、このネックはなかなかのつくりだ。まだ手に入れて間もない、つまり楽器が”若い”ので、木が湿度の変化等によってわずかに動くのだが、それでもかなり強度が高いことは間違いない。指板わきの仕上げも丁寧で、全体のつくりについては非の打ちどころがない。やはりヘッドまわりがポリ(もしくはウレタン)仕上げのせいでプラスチッキーなのはどうにも仕方がないが。これも人工素材と思われるナットの切込みはやや雑で、チューニングの時にきりきりと鳴くことはあるが、ネックバックの艶消し加工と言い、ヘッドからアクセスできるトラスロッドの埋め込み構造と言い(伝統的な造りのネックに比べて強度が落ちるという話はあるが)、まことに合理的に作られている。最近ステージに立つことがないのでポジションマーカーのルミンレイの恩恵にあずかることはまだないが、モデルチェンジ後に搭載されたロック付きのペグはやはり便利だと思う。もちろん安心と信頼のGotoh製だ。

さて、ネックを外してみると、ネックポケットの加工は丁寧であり、必要十分な情報がスタンプされている。使われているスワンプアッシュは目が詰んで木目が素直に流れており、質の高さを示唆している。きちんと選ばれた楽器用の木材であることが確認できる。ネックを固定するプレートがごくわずかにボディに沈んでいるのだが、これは適度なトルクをかけてスクリュウを回し、ネックを固定したことを示している。きちんとやっているのだFujigenは。ネックを外したら次はPGだ。


Ura.jpg

















Telecaster Thinlineの場合、大きな一枚のPGにほぼすべての電装系が装着されている。PUはFはPGに、RはBridgeに固定されているため、写真なしに表現するのは難しいが、PGを外してみると、配線はタイトに切りそろえられることなく、余裕をもった使い方がなされている。そうしないと配線作業ができないのだろう。驚いたことには、配線の被覆が比較的薄いためか、配線がかなり細いのだ。PUから延びている配線はPUにはんだ付けされたごく普通の太さのものなのだが、それ以外の配線がごく細いのだ。Fujigenがこれでいいと判断したわけなので、問題はない筈なのだがこれはちょっといやかな。指先でさばいてみると、あ、これはしっているぞ。この感触は、熱を加えても被覆が解けないことで有名な古川のビーメックスににているなあ。あれは使いやすい配線材で、今も自宅倉庫に沢山保管してあるのだ。まあ配線のことはそれくらいにして、各部を細かく見ていこうか。


Circuits (2).jpg












まずポットだ。これはアルファのもので、おそらく国産だろう、全体のつくりにそつがない。ピカピカ光っているのが気になるが、錆を防止するクリームか何かが塗られているということだ。OK、これはこれでわるくない。しかしコンデンサはいかにも10円程度で買えそうな、残念だが悲しくなるほど安っぽい外見のものがついている。スペースの関係だろうか、コンデンサがTのポットにはんだ付けされているのもちょっと嫌かな。できればVに集めてアースに落としたい、個人的には。それから、あれま、小さなハイパスコンデンサがついているではないか。これがVを絞ってもとレブリーな音が保たれる理由だ。このコンデンサも透明なプラッぽい材質で作られた高級感のないものだ。しかしスペースがあまりないので、ここにもやはり小さなものを選んでおいた方がいいのかもしれない。


Blade Switch.jpg












さて、Blade Switch はどうだろうか?Fender純正のものを、しかも2つも買って準備しておいたのだが、気合をいれてスイッチノブを引っ張ってみても、こいつが全く抜ける気配をみせない。Teleが好きな人にはおなじみなのだが、使っているとノブがすぐに取れてしまって困ることが多いので、ストラトのものに代えたり、予備のノブを買っておいたりする人も多いと思われるのだが、Fujigenも当然この問題に気が付いており、がっちりと接着して対処している。まあそれはそれでいいと思う。正しい考えかただ。ここに至って私は考えた。スイッチレバーを切ってSwitchを強引に外して交換するか、このまま使い続けるか、だ。それで実物を見てから決めようと考えて楽器の内臓をしげしげと観察したのだが、OriginalのSwitchは、スチールと基盤を組み合わせた、埃に強そうな合理的な構造をしている。端子の穴が小さいので、すこし配線がやりにくいのだが、このままでも長く使えそうな悪くないパーツだと評価した。業界ではCRLのものがデファクトスタンダードになっており、手に入れようとすると信じられないほど高価なのだが、なにもそんなものにこだわることはない。他ではなかなか見かけないものなので、暇があるときに素性を調べてみたいと思う。ということでこのままいくことにした。


Noise 処理.jpg

















驚いたことなのだが、PUのキャビティにはしっかりと導電塗料が塗ってある。しかもラグが打たれており、そこからしっかりとVポットの裏に配線が。FにもRにも同じ処理がされている。サーキットを収めるキャビティにはなにも処置がされていないが、とりあえずPGの裏面には大きなアルミ箔がはられている。久し振りの作業で気合が入りすぎていたのかアルミとポット背面との導通をみることを忘れてしまったが、おそらく導通しているものと思われる。弦アースについても詳しくチェックすることをしなかった。どうも写真をみると怪しいのだが、PUを変えた後は弾かないときでも全くNoiseがない。弦に触れなくても大丈夫なので、とりあえず細かい確認は次の機会に譲ることにしよう。FのPUキャビティからサーキットを収めるキャビティまで結構距離があり、最近のTeleの場合はここにトンネルが掘ってあり、外からは見えないのだが、私の楽器の場合はVintageのTeleのようにOpenな溝が掘られており、FのPUの配線の多くがPGを外した状態なら目視可能になっている。整備性はこの方がいいので、私はこれが好きなのだ。そしてここにも導電塗料が塗られている。ずいぶんきちんとしているなあ。銅箔を貼りこむなど、手間暇やお金がかかる作業はなされていないが、ノイズに関して期待を超えた処理がされていて感心した。気に入った。


Front PU.jpg












PUはFであれRであれ、手堅い作りでがっしりと作られている。Fujigenオリジナルというが、おそらく、たとえば松本の啓陽などで作られているのだろう。音もいいし、配線もいい。パーツとして持ったときの重量感も何とも言えない。特にRのPUのベースプレートは分厚い金属が使われており、いい味を出している。あ、Rの写真は撮り忘れてしまった。集中して夢中で作業したので仕方がない。作業第一で写真は二の次になってしまうのだ。


というわけで、分解して自分好みなPUに乗せ換えたTelecaster Thinlineなのだが、これでFujigenがかけた魔法はとけてしまったのかもしれない。それでも全くノイズがない楽器が出来上がり、ずいぶん演奏する際のストレスが減ったと思う。買ってきた楽器を、スクリュー一つ代えずにそのまま弾き倒すのが本来の私のポリシーなのだが、この楽器に関してはとうとう手を入れてしまった。今後も必要があれば内臓を入れ替えたりするかもしれない。ハイパスのコンデンサなんかは取り外す可能性が高いし、アースの問題もすこしいじりたい部分が残っている。しかしこうなると、もうこの楽器を人に譲るわけにはいかないので、弾けなくなるまで手元に置いておこうと考えている。


こんなにきっちりと作られた楽器が、値上げ前は実質ギグバック付きで10万円で手に入ったのだ。現在は14万円に値上がりしているが、それでもお値段以上と言ってもいいだろう。やっぱりFujigen買っておけば間違いないな。1本あれば10年は楽しめる。いまなら旧モデルがまだ流通しているので、通常のTeleならば8万円前後で手に入るはずだ。間違いなくお買い得だ。Fujigen1本持ってるといいよ。私は2本持ってるよ。

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