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私のギター 2 [音楽]

私のギター 2

そもそもなんでクラギなんかに興味を持ったのだろう。私はもともとアコギで音楽を始めた人間なのに。当時の私にとっては神のような存在だったS&Gを自分でも弾いてみたくって、最初は確かYAMAHAのアコギを手にしたのだった。これは知り合いから貸してもらったいわゆるトリプルオータイプのマーチンをコピーしたような合板で作られた楽器だったが、さすがにYAMAHA制だけあってきっちりと正確につくられていて、初心者が使うにしては上等なものだった。なぜか仲間たちよりもギターの上達が早かった私は、スカボロフェアのメロディーを自分の楽器で奏でられたことですっかり音楽の、というよりはギター音楽のとりこになってしまい、当時は“これさえあれば何もいらない”などと思い込んでいたものだった。

そんな私が初めてクラギを手にしたのは10代後半だったと思うのだが、当時も人気があった河野ギターではなく、楽器屋さんに置かれていたたくさんの楽器から自分で黒澤澄雄ギターを選び出した。蛇足だが黒澤さんは今でも現役で、息子さんと一緒に楽器作りにいそしんでおられるようだ。私が独自に選んだ楽器は、サイドバックがローズでトップに杉がはられた、簡素な装飾が施されたちょっと渋いギターだった。数年後に黒澤さんご自身と確認させていただいたところ、少なくともトップはご本人が自ら制作されたものだ、とのことであった。こいつは倍音の豊かななかなかいい楽器で、実は今でも修理を繰り返しつつ練習用に愛用している。30年近くこいつを弾いているわけで、楽器って考えようによるけれどとっても安いと思う。話を戻すが、この楽器を初めてギターの個人指導を受けた際に先生に弾いてもらったのだが、上手な人が弾くとものすごくいい音を奏でることを目の当たりにしてびっくりしたことをよく覚えている。業界の事情も知らずに自分の手と耳で選んだにしては、廉価な割に音量が豊かで音色もなかなか優れている、いわゆる“アタリ”ギターだったようだ。それまでアコギで培った経験が生かされたのだろう。しかし当時こいつを使って何を弾こうとしていたのか、すっかり忘れてしまった。もしかすると“クラギジャズ”に入れ込んでいた時期だったのかもしれない。

その先生のギター教室で、有望な新人制作家の楽器だ、といって弾かせてもらったのが、松井邦義ギターだった。この時に見せていただいた楽器は、たしか“東京ミック“というお店を介してギター教室に送ってもらったサンプルで、記憶が朧ではあるが、サイドバックがローズで、トップが杉のもの一本、松のものが一本の、計二本であった。糸巻のボタンは手作りのエボニーがおごられており、シンプルだが素晴らしい楽器で印象に残った。この二本は、全体にきりきりと引き絞られた弓のような楽器で、作りも音も、なんというか”固い“、ほぐすのに時間がかかりそうな楽器であったのだが、それが当時の自分には好ましかった。今思えばハウザーをお手本にした楽器だったのだろうか。二本のうち松の楽器を手に入れようと思ったのだが、結局そうはならず、その後仕事の都合などでしばらくクラギから離れることになった。松井邦義ギターにはご縁がなかったということなのだろう。しかしあれは素晴らしい楽器だった。

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