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国府台 Soba Isba いさと  せいろ おおもり + 加賀鳶 1850円 [日本蕎麦]

2017年1月
国府台 Soba Isba いさと  せいろ おおもり + 加賀鳶 1850円

偶然この有名なお店の近くを通りかかり、しかもちょっとだけ時間が余っていたので足を運んでみた。予約なしでお蕎麦をいただけるかどうか、はなはだ心もとなかったが、お店の佇まいを確かめるだけでもいいか、と、寒風が吹きすさぶ道をとぼとぼと歩いた。え、こんなところに、という住宅地の中、しかもまさに普通のおうちの中でお店をやっておられるようにお見受けした。暖簾が出ていたのでひょっとして、とおもって声をかけさせていただいたのだが、お蕎麦を出していただけるとのこと。今日は運がいいぞ!

親戚の家にでもお邪魔するような感じで靴を脱ぎ、どんどんお店の中に足を運んだ。板敷の室内にはテーブルがいくつか並べてあり、そのうちの一番大きなものに通された。足元は掘りごたつのように一段低くなり、底にはすのこが敷いてあって清潔感があった。こいつは助かる。窓の外を眺めると梅ノ木が佇んでおり、大きく左右に張り出した枝には様々な鳥が代わる代わる羽を休めにきているようだ。素晴らしく大きい庭というわけではないのだが、風情のある、いい感じの空間で大変気に入った。このあたりは結構住みやすいのかもしれない、などと思ったりもした。

それで、お蕎麦を待つ間、手持無沙汰なので冷酒をいただいた。実はお店に伺う前に、寒かったので多少日本酒をたしなんでしまっていたので、たっぷりと供された加賀鳶を呑み干すころには、ずいぶんと気分が良くなっていた。多分少しへらへらしていたと思う。失礼がなければ良いのだが、とちょっと心配だ。加賀鳶と一緒に真っ白で冷たい白菜のお漬物をいただいたのだが、お酒ともども大変結構でした。

きたきた!これこれ!これが夢にまで見たいさとさんのお蕎麦だ。蕎麦つゆは徳利に少量、蕎麦猪口に乗せられた小皿にはすりおろしたばかりの山葵、からし大根、それから輪切りの葱だ。薬味はお酒を呑みながら、少しずつ味を確かめたしかめ、おつまみとして楽しませていただいた。お蕎麦が来る前に蕎麦つゆを少し。どんどん進めてしまわないように気をつけつつ楽しんだ。ずいぶん手がかけられていることは一口でわかる。真っ白な磁器でできた蕎麦猪口に移してみると、醤油とはかなり違う、やや黒っぽいような灰いろいような不思議な色をしている。甘さは少なめで、カツヲ感とすこしひねった醤油らしさが混然一体となり、大変おいしい。唯一無二の味わいだ。発酵っぽい印象はほとんどなかった。時間をかけ、手間暇を惜しまず、味のフォルムを頭の中のイメージに合わせてまとめているのだろうな、と感じた。

それでお待ちかねのお蕎麦だ。おおもり、ということで、丁寧に2枚に分けて順番に供していただいた。凸型のざるに盛られたつやつやと美しいお蕎麦。いわゆるお蕎麦色というよりはかなり白っぽく、蕎麦肌は穀物そのものの粒を感じさせるようなつぶつぶとしたもの。あこがれの“あのお蕎麦”がまさに私の目の前にある。お蕎麦は細めで、粒々感があるためにエッジはまるい。長さは当然短めになっている。これがつやつやと美しく輝くさまは、およそ食べ物とは思えないほどだ。こいつをそのまま数本手繰ってみると、鼻ではなく、おなかにガツンとくるような穀物感満点のお蕎麦の薫りだ。これこれ。歯ごたえもよく、細い割にはねっちょり感もあって、喉越しはするするとはいかないが、悪くない。私は細く短いお蕎麦を、じっくりと噛んで味わうことにした。蕎麦つゆはおそらく手間暇に加えて時間をたっぷりとかけて仕上げてあることもあるのだろう、徳利にちょっとだけ入っているため、こちらとしても蕎麦猪口に少しだけ入れて、お蕎麦を半分くらいくぐらせて食べることにした。

するとどうだろう。ややすすりにくさはあるものの、お蕎麦と蕎麦つゆがきちんと掛け算になっている。“うーん”とうなってしまった。お蕎麦をそのまま手繰るとおいしい。蕎麦つゆをそのまますするとやはりかなりおいしい。しかしお蕎麦を蕎麦つゆに適度にくぐらせると、、、、キョーレツにおいしい!神田の銘店では出せないような、少量生産でしか達成できない世界だな、と思った。

お腹ではなく、心をみたして、また伺いたい旨をお伝えしてお店を後にした。私の印象に過ぎないが、ご亭主はおそらく商売をされる気はなく、納得のいくお蕎麦を供することに意義を感じてお店をやっておられるのだな、と思った。また機会があれば是非ぜひ足を運びたい。今度はお酒はやめてお蕎麦に集中したいかな?、と殊勝にも思ってしまった。このお店は、駅から歩いてかなりあるのだが、歩くだけの価値は十分にあると思う。ごちそうさまでした。ありがとうございました。

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