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2021/12/22  トラスロッド問題 [音楽]

2021/12/22  トラスロッド問題


私はもう一生必要なだけの楽器を持っている。GADに襲われることはもうないものだと信じている、自信はないが。そう感じる前、ここ数年で何本も楽器を購入したのだが、非常に重要な問題に気が付いた。それはトラスロッド問題だ。

フェンダー系の楽器の場合、ほとんどの楽器でネックにメイプルが使われている。メイプルは目がつんだ固い木質を持つが、金属で作られた弦の張力に十分に対抗することは難しく、メイプルのみではネックをまっすぐに保つことは容易ではない。古くて上質の乾ききったネイプルでぶっといネックを作ればまあ何とかなるとは思うが、それでは快適に音楽を楽しめない楽器になってしまう。そういうわけで、ネックの中に溝を掘って金属の棒を埋め込み、全体の強度を増すよう工夫されている。溝のきり方や棒の引っ張り方はメーカーがさまざまな工夫をしているが、伝統的にフェンダー系の場合は比較的単純なつくりで、ネックを外してPUに近い方向からネジを回してネックのしなりを調整する。何がどうなっているのか言葉で説明することは容易ではないが、このマイナーなブログを読んでくださるような方に説明は不要だろう。とにかくメイプルと指板の木材とトラスロットの持つ強さと、弦がネックを引っ張る強さがバランスして楽器が成り立っているわけだ。ロッドがなければほとんどのネックは弦の張力に負けてどんどん曲がってしまうはずだ。クラギなどはマホガニー系の柔らかい木を使っているにもかかわらず、固く強い性質のエボニー指板を分厚く貼ってあるからなのか、トラスロッドを仕込まない構造になっている。弦のテンションが弱いから大丈夫なのだろう、おそらく。


驚くべきことなのだが、私が最近手に入れた楽器はすべてトラスロッドがゆるゆると言っていいほど緩んでおり、買ったその日にネックを外して調整する必要があった。これは由々しき問題で、つまり楽器店でいくら一生懸命試奏したとしても、残念ながらその楽器が持つ本来の音を聞くことはできないということだ。信じられないが本当だ。だからといって店頭で楽器をばらしてネックの調整をするわけにはいかないし、必ずその楽器を買うと約束しない限り、店員さんに調整を依頼してもおそらく嫌がられるだけだろう。さてどうしたらいいのだろうか?残念ながら今の私は最適解を持っていない。

おそらく、楽器を倉庫や店頭に保管したり展示したりしている間に木部の乾燥が進み、結果的にトラスロッドがゆるゆるになってしまったのだろう理解する。楽器を制作する際の木部の乾燥が不十分という可能性もあるが、まともな楽器なら出荷時にはきちんと調整を受けている筈なので、やはり店頭や倉庫での温度と湿度の管理がなっていない可能性が高いだろうと私は考えている。まあネックは動くのが当たり前で、販売前で弾かれていないすべての楽器がある程度そういった状況になるのは仕方がないと言えないこともない。特に高価だったり人気がなかったりして長期間保管されているような楽器は。我々愛好家は、ほとんどの場合店頭に展示されている楽器や、楽器店の倉庫に保管されている楽器を購入するわけだが、その間にここに書いてあるような様々な問題が発生する。新しい楽器に誰かがつけた傷とか嫌だよね、例えば。それが気に入らないとすれば、直接メーカーから楽器を買いつけるしかないわけだ。自分自身一度だけメーカーの直販サイトから楽器を買わせていただいたことがあった。評判のいい国産のメーカーだったため、最高の調整がなされていることを期待したのだが、期待に反して、その楽器も思い切りトラスロッドが緩んでいた。この場合、メーカーが倉庫で保管していた際に乾燥がすすんだのかもしれないし、運搬中のショックなどで木が動いたのかもしれない。手に取ったその日に、ネックをびっくりするほど大きく調整する必要があった。なので弾きながら今後時間をかけてネックを落ち着かせていく必要がある。これは楽しみでもあるが、面倒くさいと言えば面倒くさい。調整ではなく演奏が本来の目的だからね。

私が最近購入した楽器たちは、私にしては珍しくそれなりに値段がはる製品だったため、当然のことながら品質が高い、つまり個性のあるいい音がすることが期待されると思う。トラスロッドがゆるゆるでもそれなりの音がしたので購入に至ったわけで、調整後は納得のいく、”お値段以上の音”になって目出度しめでたしとなったのだが、それは私に楽器調整のある程度以上のスキルがあるからこそだ。自慢しているわけではない、ほんとホント。しかし楽器の調整に慣れていない人の場合はどうなるのだろう。トラスロッドが緩んだ状態の楽器をいくら弾いたって感動するようないい音はおそらく出てこないので、値段ばかり高くて音が悪い楽器だと評価されることになるのかもしれない。買った人が悪いと言われればそれまでではあるが。私の楽器の場合、全てのギターが調整後すぐに驚くほど音が良くなり、楽器全体がよく振動して、弾いていて気持ちのいい楽器に豹変(いわゆるジャガーチェンジ)した。運が良かっただけなのかもしれないが。話がそれてきてしまったのでこれくらいにする。

皆様も、楽器の値段や外見、パーツや木部のつくりで楽器を選ぶのはもちろんいいことなのだが、楽器を評価する前に、きちんと調整することを強くつよくお勧めしたい。もしくは、良心的なリペアマンがいるか、店員さんのスキルが高い楽器店で愛機を購入することをお勧めする。自分でやって多少の傷がついたとしても大きな問題はない。楽器が自分だけのものになるというものだ。


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