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2022/3/6   理想の楽器(長文注意、内容空虚) [音楽]

2022/3/6   理想の楽器(長文注意、内容空虚)


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こういう音が出る楽器が欲しいな、外見はこういうのがいいな、というかなり明確なイメージをもっている。外見で言えば、例えば今でもテレキャス、とくにPGが真白でブロンドボディ、メイプルネックの楽器をみるとドキドキするくらいコーフンしてしまう。他の楽器ではこういった高ぶりを感じないので、よっぽどテレが好きなのだと思う。音に関してだって弾き心地に関してだってもう、なんていうか、すごく具体的なイメージを持っているので、以前はそういった楽器を手に入れたいと思っており、それで熱量が増えすぎて自ら楽器をアセンブルすることとなったわけだ。まあ、選択肢に限界がないとは言わないが、それこそ自分の好きな仕様の楽器を作ることができるわけで、ある程度のスキルを手に入れてからはそれが楽しくて仕方がなく、ずいぶんたくさんの楽器をアセンブルしたものだった。木の塊りから楽器のパーツを削り出し、塗装から何からすべてこなすような方とはレベルの違う、つまりレベルの低いことをやっていることは自覚していたが、それでもそれなりの楽器を手に入れることができて本当に楽しかった。

私が当時欲しかったのは、ヘッドから具体的に描写してみると、ストラトのラージヘッドでペグはロックとシャフト長の調整機構付きのもの。ナットは油に付け込んで滑りをよくした牛骨。指板は真っ黒なエボニーでポジションマークは貝。ネックの材質は控えめなバーズアイが入ったメイプルで、握りは太めのCもしくはU。ボディは2PCのアッシュで軽いもの。古いテレの形が好みで、ジャックを差し込む部分が直線になっていることは必須だ。PGはてからない白で厚いもの。FPUはギブソンのClassic57、リヤはバーデンのDGモデル。ブリッジはGotohのオクターブ調整が効くもので、コマの材質はブラスがいい。ジャックはエレクトロソケット、ストラップピンには必ずワッシャをかましておく。ボディの仕上げはシースルーのブロンドで、多少高音が失われてもいいので、きっちりとノイズ処理をする。トーンとボリウムにはTOCOSのものをつかい、キャパシタはよくあるオレンジドロップでいいだろう。ネックの裏側は艶消しで、できればラッカーで塗装したい。PUセレクタやジャックに関してはよくある米国製のCRLやSwitchcraftの長持ちしそうな丈夫な部品を採用、と、まあこんな具合だ。

そういったアイディアを具体的に形にしたものがこのギターだ。ボディとネックはUSACG、しかもまだTommyがいる頃に作ってもらった。たいへんいいものが手に入ったのだが、最終的に満足できる部材が手に入るまでは時間と手間暇がかかった。それでもTommyは最後まで付き合ってくれてありがたかったっけ。最初にかれにしつこく説明したのだが、ネックのはじをテレ仕様のスクエアに仕上げてね、とお願いしたのにストラト仕様のラウンドになっており、お願いして作り直してもらった。そうしたら今度はネックをマウントするための穴は開いていないし、送ったり返してもらったりしているうちに傷だらけになるし。他にも問題があり、ナットの溝切が不適切であり、自分でジグを作ってルーターで削りなおす必要があった。また、フレットわきのエボニーが割れてしまって補修が必要だったり、ポジションマークの貝が割れていたり、問題が全くなかったとは言わないが、最終的には素晴らしいネックが手に入った。ボディの方は最初から全く問題がなく、スワンプアッシュという割には重いものではあったが、加工はOrder通りであったし、木目もよくつんでいるし、もとになっている材木も木目から判断して比較的直径の大きなものから切り出した良材で、全体として実に満足のいくものだった。さすがUSACGだと思った。

しかしこれらのパーツをまとまりのある一本の楽器に仕立て上げるのは本当に大変だった。メイプルがバーズアイがはいっているにもかかわらずものすごく固く、いつも通りに小さめの穴をあけてチューナーを取り付けようとしたところネジが折れてしまい、、、。Gotohのチューナーに付属するネジの強度が足りないという話もあるが、わたしはそうは思わない。やはりメイプルの質が予想を超えたので、ネジ穴が小さすぎたのだろうと思う。それでいろいろ工夫をして折れたネジを抜き、木目を合わせたメイプルの円柱を用意してきっちりと穴にはめ込んでヘッドの裏側と面一に切り取って、さらにラッカーを塗って艶消しの仕上げをしてから穴あけをやり直した。一連の作業に1か月近くかかった。次にナットの溝だ。これまでUSACGのネックを複数買ってきたが、何度かこの問題に遭遇している。CNCルーターでビットの動かし方が速すぎるのか、刃がなまっているのか。原因はわからないがこの大切な溝が歪んでいるため、修正にはものすごく苦労した。最初はナット用のやすりでやってみたのだがうまくいかず、ナットを溝のゆがみに合わせて削ってみてもぴったりと合わせることはできなかった。結局上記したようにジグを用意してからルーターですこし幅が広く深い溝をきっちりと彫り上げ、そのうえですこし大き目の油浸した牛骨ナットを用意して事なきを得た。Fender系の楽器のナットより深く幅も広いので、おそらく音にも影響があるだろうと思われるが他に方法がなかったので仕方がない。次は指板のわきの欠けだ。これはエボニーの粉をタイトボンドで練って塞ぎ、その上にラッカーをかぶせて修正した。ポジションマークの貝の割れは、結局スーパーグルーで対処することにしたが、傷は完全にはカバーできなかった。それから、穴の開いていないネックエンドだ。実は器を組んだ当時、すでに大きめの工具などは処分した後だったので、この大切なマウンティングホールを空けるのには本当に苦労した。いろいろ考えて準備をしてみたのだが、精度を出す自信がなく、最終的には業者にテンプレートを作ってもらってそいつを使って穴をあけたのだが、まあそこそこの結果を出すことができた。また、ボディとネックを長期間組まないままに放置して乾燥させてしまったのが悪かったのか、木が暴れて両者がネックポケットの中でぴったりとくっつかないようになってしまった。これは本当に困った。ネックとボディを合わせると、前後左右の角度はきちんと出してくみ上げることはできるのだが、細かく眺めると面がぴったりと100%接していないのでどうにも気持ちが悪かった。音質やサスティンに直結する致命的な問題だ。手持ちの工具で宮大工さんみたいにきっちりと平面を出すような技術は当然持っていなので何らかの工夫が必要だった。結局StuMacの角度付きの薄―いメイプルのシムをつかうことで、全ての面がキチンと接触する状態に持ち込むことがきた。こうやって書いていると簡単そうに聞こえるだろうけれど、当時はこれでよいだろうという結論を出して、それを実現させるまでずいぶん時間をかけて考えたものだった。PGについては素材と加工はいいのだが、エッジが斜めに加工されているのが気に入らなかった。しかしWarmothに相談しても厚い素材の場合はエッジを直角にするよりも斜めにした方がいいのだ、というばかりで仕様の変更を受け付けてもらえなかった。USACGのスタッフが言うように、たしかにWarmothは品質管理は素晴らしいけれど、あまり柔軟な対応は得意ではないようだ。これは仕方がないのでそのまま受け入れることにした。なので手元に何枚かあったPG、通常のテレ用のものを自分で加工してハムが入るようにした。

ボディに関してはあまり苦労していないが、思い起こせば裏から弦を差し込むファレルの装着は結構大変だった。LeoFenderはこいつをはんだごてで熱して塗装を溶かし、溶けた塗装を接着剤代わりにしてファレルを装着したと聞いているが、当時の手持ちのものはボディの穴に比べてわずかに大きくぴったりと収まらなかった。このパーツはいくつか規格があり、製造販売する業者によって微妙に大きさが異なることは後から知ったことであり、実際に楽器を組んだ時にはアッシュのあまりつんでいない木目に期待して、材に多少無理をしてもらってハンマーで叩きいれた。それを見ていた家人は、なんて野蛮なことをするのだとびっくりしていたっけ。テレオリジナルのジャックのカップは長期間の使用に耐えないので、最初からElectrosocketを使うことにした。ブリッジはGotohの3Wayだがコマに特殊な溝が切ってありオクターブがほぼ完全に合うもので、迷った末にブラスではなくチタンでできたものを選んだ。ということで、導電塗料をたっぷりと塗った後で、すべての加工が終了した素晴らしいボディにフェルトのワッシャをかませてからストラップボタンをねじ止めして完成とした。ネックと組み合わせて弦を張り、ほれぼれするような楽器が完成してかなり嬉しかったのだが、出てきた音は残念ながら期待通り100点、とはいかなかった。いわゆる典型的なテレとは指板の材質が違うこと、ネックの仕込みの角度が多少変えてあること、ブリッジの材質が違うこと、サーキットにちょっとした工夫してあること、ナットの形状が若干変えてあること、チューナーのポストの長さを変えてテンションを調節し、テンションピンを意図的に省いてあること、なによりPUがハムとシングルサイズに代えてあること、などなど、オリジナルからの変更点が数々あるため、なにが原因になって期待した通りの音がしないのか全く分からなかった。丸くて暖かい音は出るのだが、抜けがいまひとつで粘りのようなものがなく、表情に乏しいと感じたので満足できずにいろいろとやってみた。ペグをもろもろの調整機構がない単純なものにしたり、ナットを作り直したり、ネックをメイプルのものに差し替えてみたり、ブリッジを材質の異なるものや6Wayのものに付け替えてみたり。弦だってゲージを変えるだけではなくフラットワウンドをはってみたりもしたのだ。それでもなんだか納得がいかななかった。エフェクターをかけて使う分にはなかなか素晴らしい音といって差し支えないようなレベルに持ち上げることができたように思ったのだが、私はほとんどエフェクトを使わない人間なのでそのままでは不十分だったのだ。そんなこんなでいろいろやっているうちになんだか気力が続かなくなってしまい、結局この楽器はかなり安い値段でほしいと言ってくれる人に譲ることになった。我ながらもったいないことをしたものだ。



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ところでFujigenにいくと手に入れることができるこのモデルを見てほしい。私が昔組み上げた楽器とかなり似てはしないだろうか?材の選択からパーツの選び方までほとんど私の楽器そのものだ。今はもうカタログに乗せられていないが、以前はシースルーのMary Kayのような色に塗られたモデルがあったのだ。私がそれを目にした数日後に勢いで一本買ってしまったのは言うまでもない。実際、私が手に入れた実際の楽器のヘッドはテレキャスに似たシェイプをしているが、最近仕様が少しだけ変更されてヘッドがストラト型に、ネックの握りも多少変更されたと聞いている。パーツの共用による合理化ということだろう。しかしそれでさらに自作の楽器に近づいてしまった。今でも手元にあるその楽器は、全体としてのまとまりははるかに私の自作楽器のレベルを超えており、私が欲しいと思っている音そのものというわけではないが、音に粘りもあるし抜けもかなり良く、テレらしさが濃厚に残されており、理想の音に一歩近づいたような印象だ。一つ一つのパーツをみてみると、自作の楽器の方がいいように思うのだが、全体のまとまりで比較すればFujigenの圧勝だ。楽器としての潜在能力も、残念ながらFujigenのものの方が上のように思われる。加工やくみ上げの精度は言うに及ばず、総重量も軽いし長時間弾いていても疲れにくい。メンテだってFujigenの方がやりやすい。

ということで、楽器というものは確かに多数のパーツの集合体ではあるが、最終的に出力される音を念頭において、全体のまとまりをよく考えて作り上げることが必要で、その意味において、いかに力を尽くしたとしても、そのあたりはアマチュアでは遠く及ばない領域なのだろう。とりあえず、最近理想に近い楽器を再び手にいれた私なのだった。


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