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高価な楽器を購入する話2 [雑文]

 6ヶ月以上たった。長い長い時間だった。何度か電話をして”神経質なので出来上がったら誰にも弾かせないで””出来上がったらケースにしまっておいてすぐに連絡して”とお願いしておいた。”像が乗っても大丈夫”な、最強のケースも注文した。ようやくお店Aから電話があり、楽器が出来上がったとのことだった。私は遠方に出張中だったのだが、とにかく飛行機で地元に舞い戻り、楽器店に久しぶりに足を運んだ。そこで自分の楽器に初めて対面した。ざっと見てみて、、、ちょっと驚いた。仕上げが全体に雑なのだ。弾いてみると、、、音は悪くない。しかしこれは当たりまえだ。だって国内最高の職人なんだよ?出来たてなのできちんと評価できないが、この先いい感じになりそうな予感。特に低音弦がプリンプリンと弾いていて気持ちがよい。私のごつい指も喜んでいる。

 手にとって、細部を点検した。表面版に傷?お店の人は塗装の問題なのですぐに取れますよ、という。ともあれ、お店を信頼してOrderしたのだから、と、時間も無いことだし、恐らく大丈夫だろう、と、楽器を大切に大切に大切に持って帰った。お店の人になんとなく追い出されるような感じだったのは気のせいだろうか。やはり持って帰るべきではなかったのだ。私のような楽器偏愛のキャリアが長い人間の場合、第一印象はとても大事で、多くの場合、第一印象で判断して楽器の良否に関して判断を間違うようなことはない、と思う。いい感じなものはいいし、おかしいなと思えばやはりおかしいのだ。

しかしともかく持って帰った。お店を信頼して。だって人から紹介されて、きちんと挨拶をして、製作をお願いして半年も待ったんだよ?気を使って何度か買い物もした。おかしな楽器を押し付けられるはずがない。翌日はまた出張で、数日後にようやく落ち着いて自分の楽器と向き合うことができた。この楽器を買う前に、部屋の模様替えをし、楽器を楽しむためだけに楽器用の椅子を買い、いろいろ準備をしたのだ。それで電気をつけて明るくし、その特別な椅子に座って、楽器に汗をつけないように完全防護して、新しい椅子に座って楽器を仔細に点検した、、、すると、こ、これはひどい。いろんなところが大変なことになっている。

 数箇所、塗装がきちんと乗っていない部分がある。平面がきちんと出ていない部分もあるようだ(平面出しは実は大変ムヅカシイ)。 指板の一部が欠けている、、、気がつかなかった。これは許せない。指板のそこここに傷もある。ヤスリがけのあとが残っていたりもするようだ。表面版に傷3つ、爪?弦?ブリッジに弦を恐らく張り間違った際の傷、、等々。腕がいい評判の職人なら、納品する前に全部消せるはずなのに。目の前が暗くなった。それから頭に来て頭に血が上った。よく見るとネックの付け根に刃物の傷も残っている。本当に脂の乗った製作家なのか?お金が必要で、無理して雑な仕事をしてしまったのか?どうなんだろう。”音さえよければあとは同でもいい”というタイプの人なのかもしれない。しかしお店に並んでいる楽器は、すごくきちんとできている。怒りと混乱。残金を支払う前に、店と連絡を取ることにした。”つくり直して欲しい”と伝えるつもりだ。仕方がない。ゼロからやり直しだ。

 店に電話をしてみると、休みだった。心が休まらない一日を過ごし、翌日ようやく連絡がとれた。説明すると、”嗜好品だから”と、私には理解できないことをおっしゃる。どういう意味なのだろう?傷や塗装の問題は受け入れられないので、きちんとした楽器を作り直して欲しいと伝えたのだが。しかしどうも傷がついていることは認識しておられるようで、それは知っているとのこと。傷がついたものを数十万で売るのはやはりおかしいのではないか、、、?なんかおかしくないか?ふざけてないか?お店で検品して、チェックリストとか作らないのだろうか?そういう業界なのか?何故か結局製作家と私が直接話をすることになった。お店が製作家を抱え、育て、宣伝して楽器の値段を上げ、売れた際はかなりのマージンをとる、という形で共栄共存しているらしいことはわかっている。しかし私はお店から楽器を買ったので、お店に窓口になって欲しいのだが、、、。私は結構細かい人間なので、要求水準が高いのかもしれない。しかしたかだかギターに何十万も支払うのだから、その楽器に、素晴らしい仕上がりをもとめても誰もとがめないのではなかろうか。どうだろうか?

 かつて私が長く住んだ某国でも同じようなことがあった。お店の人は責任を取りたがらず、お店から私が怪しい外国語を操って製作家と直接交渉した。某国の製作家は誠実に応対してくれ、時間はかかったが結局は満足のゆく楽器を手にすることができた。表面版のうらの力木のはがれと指板の狂いを指摘したところ、理解してくれ、”気に入るようになおす自信があるからやらせてくれ””時間がかかるのは理解してくれ”と説明され、数週間待たされた。出来上がりは残念ながら悲惨で、問題は解決していないばかりか新品の楽器なのに全体が傷だらけになっていたため、怒り狂ってその旨伝えたら”気に入ってもらえず残念だ。それなら2ヶ月で作り直す。”ということになった。”特別に変えてほしい部分はあるか?”と尋ねられ、”あなたの楽器が気に入って買ったのだ、いつもどおりの楽器を作ってくれればそれでいい”となんだか美しい話になり、2ヶ月待って今度は素晴らしい楽器が手に入った。この楽器は今でも身近にあり、私の生活を豊かにしてくれている。その後何度かその製作家と連絡をとったり、楽器のパーツを売ってもらったりしている。(前回書いたみたいなのでこの部分はそのうち直します)

 今回はどうなるだろう?かなり頭にきているため、冷静さを失わないよう、失礼なことをいったり怒鳴ったりしないよう、自分のためににこの文章を書いている。製作家に冷静にこちらの主張を伝え、まずは反応を見させてもらおうと考えている。とにかく、死ぬまでに、日本の職人が気合を入れて作った、心から満足のいくよい楽器を手に入れたいと思っている。(to be continued)
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