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日本のクルマを買ったよ-2 [雑文]

11月3日

日本の車を買ったよ-2

H社のCを購入したわけだが、いざ自分の物にしてみると、試乗した時よりもずっととんでもない車であることがだんだんわかってきた。

ボディーは普通のCとほとんど同じ形をしている、でっかい羽根がお尻についていることを除いて。しかしちょっとでもこの車に乗ってみれば、ものすごくボディが強いことがすぐにわかる。ノーマルのCを補強しているようだ。クルマに乗り込むときに何度かドアを開け閉めしてみると感じる、一部のドイツ車のような剛性感。もちろんサスが関係する要素もあるのだと思うが、大きなギャップを乗り越えたときの比類ない安心感じは驚きだ。固さの奥のほうに、しぶといしなやかさも持ち合わせているような印象。デザインは、実用車がBaseであるから、グリンハウスが大きい、とくに全面から見るとやや不格好な印象を与えるが、不思議なことにつきあいが長くなるにつれてだんだん好きになってくる。横から見たデザインはとくに秀逸で、前輪のホイルアーチのあたりとか、見ているだけでうれしくなるほどの躍動感を感じる。車高をノーマルよりも落としていることが、スポーティーな印象を与える。各部の質感や重厚さには乏しいが、なかなかかっこよい、と個人的には感じている。ボディの鉄板はおそらく薄めで、防音とか制振材とかも大幅に省かれているようで、特に後ろのドアを閉めた時になんかだかブリキの缶をたたいているような情けない音がするが、この車は走りに全ての資源が集中されているわけで、高級感とは無縁であることはむしろ望ましい。機能を磨きこんでゆくと、美に近づくものだ。

サスはあくまでも固い。少しの段差でもしっかりと拾って、ビンビンとボディとハンドルに衝撃を伝えてくる。轍ではすごい勢いでハンドルが取られるので、直進するためには力を入れてハンドルを握る必要がある。買った当初はスピードを出せば落ち着いた乗り心地になるのかな、と考えていたのだが、法定速度を超えるようなやや非常識な速度を出しても、あくまでも固い、落ち着かず暴れるという印象は変わらなかった。もうほんの少しだけ、懐が深い感じがあったら最高かな?とおもった。しかしこんな扁平タイヤを履いて高出力のエンジンを積んでコーナーを攻めようというのだから、やはりこうならざるを得ないのだろう。この車を選んだ人は、車に乗っている間中ずっと体を絶え間なく揺する振動に慣れるしかない。前後左右、上下斜め360度ひっきりなしだ。だから家族持ちにはお勧めできない。我慢強い家人も、これに慣れるまでに1年以上かかった。今ではおとなしく流してさえいれば、私のよこですやすやと眠ってくれる。ありがたい。家人によれば、振動で数時間乗ると腰が楽になるそうだ。当初は”すぐにBに買い換えて”と主張していたのだが。

タイヤは思いっきり扁平の、18インチの専用タイヤ。おどろくなかれセミスリックだ。やはりまともなクルマではない、只者ではない。このくるった標準タイヤと固められたサス、それからやたらと高剛性のボディのおかげで、冷や汗が出るような横Gを感じながらコーナーを攻めたとしても、滅多なことでは尻が出るようなことはない。尻を大きく振りだしたり、大きなアンダーステアが顔を出すような速度までコーナーを攻めてしまったら、さぞやコントロールが難しかろうと想像する。ブレーキは大きめのディスクがおごられ、キャリパーは真っ赤なB社製だ、文句のつけようもない。恐ろしいほどの制動力だ。踏めば踏むほど効く、というやつだ。ブレーキダストが恐ろしいことになるのだが、それは性能との引き換えだ。

エンジン、、、このエンジンを堪能するためにこのクルマを選んだようなものだ。ホンダのVTECは本当に素晴らしい。日本の宝だ。クルマをおろしてしばらくは、当然慣らし運転をした。そう教えられてきたし、今でも機械物には慣らしが必要だと信じている。それがなんであれ、誰かが一所懸命作ったものを使わせていただく時は、丁寧に大切に使うのがヒトとしての礼儀だと思う。それで5000キロを超えるまでは丁寧に丁寧に乗っていたのだが、なにせギア比がとてつもなく低いので(ギアを6速度に入れて100キロで巡航しても、軽々と3000回転前後まで回ってしまう)通常の走行でも、エンジンがかってに”まわって”しまうのだ。それでも我慢をして、無理なエンジンブレーキなどは極力避けてエンジンを大切に”育てた”。オイルも頻繁に変えた。そのような状態でもこのエンジンはとってもいい音で”歌って”くれ、あまり回さなくっても、十分なパワーを絞り出してくれた。アクセルに対するレスポンスは極めてダイレクトで、足の先が直接エンジンにつながっているような気がすることもある。精密な機械が動いているような低回転の時の音もいい。ボンネットを開けた時の、真っ赤なヘッドもかわいい、と思う。やはりH社は、高出力エンジンを作り慣れている感じがして素晴らしい、と思う。最初にVTECゾーンまで回したのは、忘れもしない関東地方の某高速道路だ。料金所からでて、合流するところまで全力の加速を試みた。5600回転前後だったと思うが、VTECを示すインジケータがピッカリと点滅し、エンジンのサウンドが”がおーん”と別人?のようになり、レーシングカーのような異次元の加速。”胸のすくような加速”というやつだ。景色がみるみる後ろに流れてゆく。このクルマはリミッタを外すと気軽に非常識な速度まで加速してしまう実力を持つため、アクセルを延々と踏み続けるわけにいかないのが残念だ。これでNAエンジンなんだぜ!このクルマをころがすたびに必ずVTECまで回して至福の時間を楽しんでいるが、エンジンとの対話がこんなに楽しいものとは知らなかった。3000回転前後に小さなトルクの山を作ってあるらしく、通常のドライブではこのあたりの回転を維持すれば、子気味良く街中でも郊外でも走り抜けることが出来る。本気を出すときはVTEC領域まで回して、、、ああ、今日もCと遊ぶ時間を取れるとよいのだが、、、。ドライブは立派な趣味になり得る、と最近ようやく身をもって知った。しかし右足が疲れるくらいエンジンに鞭を入れても、このクルマはリッター10キロ以上走るっていうのが信じられない。H社って凄い会社だ。こんなのを一般の人に売るなんてやっぱりちょっとくるっていると思った。素晴らしいです。

ミッションはいわゆる”手漕ぎ”で、なんと6速もついている。シフトノブはアルミの削りだしで、シフトインジケーターはもちろん赤だ。”文法通り”というやつだ。しかしこのクルマのミッションとの付き合いには手こずった。クルマをおろしたての頃、クラッチのミートポイントが深いのはいいのだが、なぜかクラッチがなかなか切れないのだ。回転を合わせてミッションを操作しないとクラッチが切れないため、上手にやらないとかっくんと全身をゆすぶるかわいそうな運転になってしまう。さらにギヤノイズがひどい。ものすごくひどい。メカノイズというのだろうか。加速すると””がー”という派手な音がし、減速すると”げー”という情けない音がする。こちらとしてはエンジンの官能的な叫びに耳を傾けたいのだが、特に回転数が上がらない低速度域では、のべつくまなく”がー”と”げー”を聞き続けることになる。あんまり酷いのでH社に勤務している友人に相談し、”一回みてもらったら”と勧められてディーラーに車を持ち込んだ。メカニックはテンパーリーゼントのいかしたお兄ちゃんで、彼は”こんなもんです”とひとこと。ミッションオイルをなんどかえてみたが、全く事態は改善せず。距離を重ねたり、クラッチオイルをかえたりして、ようやくクラッチが100%いうことを聞いてくれるようになり、ノイズも許せる範囲におさまるようになった。それでもかなりのメカノイズだ。やはり高出力エンジンの力をタイヤに伝える駆動系なので、”こんなもん”なのかもしれない。幸いなことに、このメカノイズの問題と共に、動作が渋く、電光石火のシフトチェンジが出来なかったギアも、いわゆる”スコスコ”と決まる状態となって、やや”コクコク”とした節度感は失われたものの、ギアチェンジが楽しいクルマになった。一万数千キロを超えて、ようやく”あたりがついた”状態になったのだろうか。このクルマに乗ると、意味もなくヒールアンドトーやダブルクラッチをきめ、猿のようにギアチェンジを繰り返してしまう。楽しい。いい年をしてバカみたいだが、男の子にとって機械は永遠の友達なのだ、、、。多くの女性にはわかってもらえないだろうが。

内装はシンプルそのもので、見るべきものはない、、、と言ってしまうとデザイナーに失礼かもしれない。運転の邪魔になるような物は皆無で、基本的に全ての部分が黒。ハンドル、シートは残念ながら自社製で、これはこれで悪くないので、受け入れるしかない。N社やR社の製品を選ぶほど予算をかけられなかったのだろう、と想像する。最近景気悪いしね。H社のシンボルマークやキーがかなり安っぽく、傷ついたり壊れたりしやすいのもまあ、走りには関係ないのだから仕方がないのかもしれない。天井の防音材は抜いてあるのかどうかわからないが、雨が降ってきたら、無数の鉄砲で撃たれたかのようなバコバコとした大きな音がしたのには驚いた。助手席にいる家人との会話が出来ないくらい大きな音だ。これにももう慣れたが。全体に、もう少しだけ大人っぽい?(メーターとか)デザインと仕上げにしていただけるとなおよかったかな、というのが個人的な感想だ。しかし現状のままでも何の文句もない。

とにかく、全体に、走りのみに焦点を合わせた、普通の大企業なら作らない製品で、大変気に入っている。値段と比して望外の性能を手に入れてご満悦だ。

私は個人的に、車を買うときはいつも”零戦”のようなクルマが欲しいと考える。その意味は、優雅で、美しく、軽く、無駄がなく、目的がはっきりしていて、余分なものは一切ついておらず、どこか悲しいような悲壮感?が漂っているようなクルマ、ということだ。今回手に入れたCは、何となくそんな感じでとっても愛している。この車が壊れるか、自分が体を壊してこの車に乗れなくなるまで付き合いたい、と強く願っている。クルマは値段ではない。自分がそのクルマを気に入っているかどうかが全てだ。あまり高くない車に乗っていても、自分が本当に気に入っていれば、誰に何を言われても(BとかAに乗っている奴らにいろいろといわれるのだが)全く気にならない。とりあえず、今の私はこいつを転がしてさえいれば独立排他的に幸せだ。
タグ:クルマ
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