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国分寺 義喬 もりそば [日本蕎麦]

5月某日 国分寺 義喬 もりそば 850円

国立に所用があり、その後わざわざ国分寺で下車した。北口から外に出て、街をてくてくと歩く。地の利がないので、ごみごみしている街並みを歩いていると、どこをどの方向に歩いているのかわからなくなってしまう。小雨が降ってきたので気が急いてしまって、若者たちが列を作っているムタヒロに入ってしまおうか、などと邪な考えが脳裡をよぎる。しかしここ数年、私は特定のお店を除いてラーメン屋さんに入ったことはない。もうラーメンの時代は自分的には終わってしまったようなのだ。さみしいがあまり食べたいとは思わない。それで、気を取り直してさらにてくてくと歩き、”道に迷ってしまったかな?”と思う頃に、ようやくお店を発見した。暗い路地の片隅にうずくまるようなお店だ。渋い。

お店は目立つような照明がなされておらず、暖簾も出ていなかったので、そのような演出なのかもしれない、とも考えたが、実はもう閉店しようとしていたのかもしれない。なんというか、倉庫風の建物の”横っ腹”にしつらえられた引き戸を、ちょっとだけ勇気を出してからりと開ける。応対してくださった小柄でまだ年若いおかみさんと思われる女性に一人であることを告げた。テーブルを勧められた。よかった、断られなくって。

店内はあまり広いとはいえず、お店全体を一目で見渡すことができる。テーブルは4人用が3-4つ、大きいものが1つ。全体に和風のしつらえ。小ぶりな店内の廊下には、お蕎麦を挽く機械が二つも置いてあり、お店のお蕎麦に対する真剣な態度が反映されている。全体にお蕎麦屋さんらしい清潔感が感じられ、私のような清潔病患者にもお勧めできるレベル。テーブルに触っても、テーブルの木肌がさらさらとしており、安心して肘を預けることができた。こんなことはあまり書きたくないのだが、私のようなビョーキ人間にとっては、安心して座ることができ、肘を置いても嫌な気持ちがしないお蕎麦屋さんは、驚くほど少ないのだ。最近は一部の有名人たちが清潔病をcoming outしてくれているので、ビョーキ自体については知人たちにジョーダンで流すことができるようになって助かっているのだが、外食は実はちょっとハードルが高いのだ。チェーンの居酒屋さんなんて、本当のことを言うと私にとってはちょっとした地獄だ。酔っぱらってしまうしかない。ビョーキビョーキ。

ともかく、清潔な店内に安心してお蕎麦を待つ。手持無沙汰なので、日本酒を少々。お店の一押しらしい銘柄を2合。お蕎麦の味わいがわからなくなることがあるので、1合でやめることにしているのだが、ちょっと心身が疲れていて、上手くブレーキをかけることができなかった。まだまだ修行が足りません。こじんまりしたお店なので、ほかのお客さんのお話とか、調理の様子などは全て耳に入ってくる。あ、いま水で〆て、、、それをきっているな、、、という具合だ。このお店の売り物は天ぷら~お刺身~蕎麦、ということらしく、天ぷらやお刺身で日本酒を楽しんだ後にお蕎麦、という使い方が想定されているようだ。しかし私には悲しいことに時間がないので、少々の日本酒と共にお蕎麦だけ、といういつものストイックな態度で臨む。いつか時間がたっぷりと取れる休日に、このお店を訪れてみたいものだ。

まず、薬味が乗った小皿を乗せた蕎麦猪口が。ああ、これは困った。蕎麦つゆを全て飲み干すしかないパターンだ。血圧タカシ君の私としては、人生をできるだけ長く健康に楽しむために、涙を呑んで丹精込めて調理された蕎麦つゆを残すことにしているのだ。しかし仕方がない、今日は例外とするしかない。猪口に乗せられた薬味の小皿には、白く美しい、ほとんど水にさらしていないと思われる葱と、やはり生の山葵が少々。奇をてらうことのない、王道の薬味だ。例によって、お蕎麦を楽しむ前に、お酒のつまみとしてどんどんつまんでしまう。山葵は結構きく。涙をにじませながらつまむ。

やがて蒸篭に乗ったお蕎麦が供される。全体に色黒、挽ぐるみと思われるような、しかしかなり細く、しかも角が立った、つやつやとした男前なお蕎麦だ。適度な長さで食べやすいようにしつらえてある。よく趣味蕎麦のお店で見られるような、故意に粗びきにして蕎麦の粒々が目に見えるような、そういうお蕎麦のお肌をしている。細切りなのに星がたくさん。すでにしてぷんとよいかほりがただよっており、このお蕎麦は只者ではない、ということがわかる。細くすれば断面積が増えるわけで、かほりが立つのは計算済みなのだろう。おいしいのは間違いない、と舌ではなく目がすでに確信している。それで数本手繰って、いつものように鼻をぺったりとくっつけてクンクンと。至福の時間、桃源郷をしばしさまよった。お店の人の視線はこの際気にしないことにする。なんとも好いかほりだ。十割ではないと思うが、つなぎは感じさせない。正気に戻って数本を手繰って、、、また手繰って、、、。これはイケル。かなりのレベルのお蕎麦だ。細切りなのにしっかりと歯ごたえがあり、豊かなかほりとともに喉に僅かな穀物の引っかかりのような感触を残してお腹に滑り落ちてゆく。このまま食べきってしまってもいい。塩があるともっといいかも、、、、しかしここで気合を入れなおして蕎麦つゆを吟味。江戸前の蕎麦つゆの醤油・塩感をやや弱め、その分を角を丸めたカツヲ出汁で補ったような印象。なんというか、ちょっとだけ洗練されすぎかな?。甘さはほぼ感じない。甘い、と感じる直前で寸止めしているような感じ。蕎麦つゆのレベルも当然なかなかだ。澄んでいて美しい蕎麦つゆなのだが、例えばカツヲ節を粉にして加えてあるような、わずかな“粉感”を感じるのは何故だろうか。まあ、細かい話はいい。お蕎麦とのコンビネーションを楽しみながら、おいしく食べきった。つゆと比べて蕎麦が僅かに勝ってしまっているようだが、何の文句もない。素晴らしい。

細切りのお蕎麦は、なんだか“なよなよ”としているように見える。たしか昔伺って感動した本村庵のものもそうだった。せいろに“なよなよ”と、スミマセン感を漂わせながら横たわっている。そこはかとなく漂う悲哀感が何とも言えない。また、細切りのお蕎麦は供されてすぐに手繰らないと、見る間に腰が失われ、お蕎麦同士がくっついてしまう。そうなると日本酒でほぐすのが良い、とものの本に書いてあるが、自分的にはあまりそういう気障なことはしたくないので、一心不乱に手繰り続けるしかない。一瞬の芸術のようなものなのだ。お蕎麦ってやっぱり素晴らしいものなんですね。

いつも不思議に思うのだが、いわゆる名店であっても、街中の出前メインのお蕎麦屋さんであっても、もりに限って言えば、あまり値段が変わらない。何故だろう。もちろん量や質の違いは大きいので、そこが面白いのだが。だから安くって良質なお蕎麦に出会うことができると、とっても幸せな気分になる。しかし、お蕎麦に向き合う時は、お店の評判や値段のことを考えないことを個人的には基本的な態度にしている。

とろりとした蕎麦湯を存分に味わって、満足してお店を後にした。私にしては珍しいことだが、数少ない友人や家人を連れて、このお店を再訪したいと思った。みんな喜んでくれるのではないだろうか。

帰宅してすぐに記事を書き、なかなか勢いのある良い文章を綴ることができた、と自己満足していたのだが、新調したキーボードの操作を間違えたらしく、全て失ってしまった。書き直しの文章は、、、納得いかない凡庸な、まとまりを欠いた上記のようなものになりました。残念。人生って難しい。

良い;ハイレベルなお蕎麦を街中で誠実に提供しておられる 有名店と渡り合えるお蕎麦 お店も、おかみさんも、お蕎麦も、とっても感じが良い
もっとよくなる;このままでもちろんいいのですが、繁盛してお金持ちになったら、お店にお金をおかけになればさらに良いと思います 生意気でスミマセン
また行く?;Yes
総括;国分寺にある小ぶりなお蕎麦屋さん 天ぷら~お刺身~お蕎麦、という日本料理の王道を楽しめる また機会をつくって伺いたい
6月某日

再訪。たまたまお気に入りの銘柄の日本酒を発見して狂喜。 値段は高めだが、やはりおいしい。基本的な味も薫りも20年前と変わっていない。うれしかった。幸せになって、おかみさんにもり蕎麦をお願いした。お蕎麦は前回よりもやや強い、ぷりぷりとした細切り。しなしなしていない。角はあくまでもりりしく、星も多目だ。お蕎麦を〆たお水の温度が高めだったようで、それだけがちょっと残念。あとは完璧で、十二分においしいお蕎麦だ。その日その日で打ち方を故意に変えておられるのかどうかはわからないが、お蕎麦を供する技術が高い水準に達してていることは間違いない。若い方なのか経験豊かな方なのか存じ上げないが、名人とお呼びしても良いのかもしれない。先取の気性にも富んでおられるようだ。印象として、若い方なのではないか。本日の蕎麦つゆは醤油方向にやや強い印象を与える江戸前に近い味わい。前回とは明らかに違う。意図的なのか、調理に伴う揺れなのか。さあ、一緒に食べるとどんなハーモニーが、、、と手繰ろうとしたところ、お店におられた初老の男性が煙草を、、、これは殺人的だ。これ以後味も薫りもわからなくなってしまった。残念だ。

営業上、全面的な禁煙は難しいことはわかっているが、お蕎麦と喫煙は相性が悪いことに疑問を呈する人はほとんどいないだろう。なんとか禁煙でお願いできないだろうか?そうしていただければ、もっと頻繁に通います。喫煙する方、、、肺癌は痛い病気なので、一人で楽しんでいただきたいと思う。

今後また伺うかどうか、考え中。煙草問題であきらめるには惜しいお蕎麦屋さんだ。
タグ:日本蕎麦
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