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2022/1/12 エイブラハム・ラボリエル [音楽]

2022/1/12 エイブラハム・ラボリエル


私自身、自分にあった本当に満足のいく楽器が世界のどこかにある筈だ、と思い込んでいるようなところがあり、借り物のYamahaのFalkギターから始まって数十本の楽器を巡りめぐっている。好き嫌いや憧れなどはもちろんあるのだが、結局楽器は自分の体に合わせるしかなく、人様の真似をしたり、理想を追うなど、頭でっかちになって無理をしても指や腰を痛めるだけでいいことはない。体を壊せば末永く音楽を楽しむことはできないだろう。楽器のことを考えると、いつも思い出すのはエイブ・ラボリエルのことだ。

エイブはちょっと太っちょの、カラフルな音色をもつベーシストであり、ジャズ系の音楽をこなすマルチでベストなミュージシャンの一人だ。この人はメキシコ出身でバークリー音楽院を卒業しており、聞くところによれば在学中はかなり熱心に長時間練習したとのこと。おそらく大学入学時にはあまり裕福ではなかったためか、彼の愛機は廉価な日本製の楽器であったと聞く。(ざっと調べてみたらGoyaというメーカーのベースを母国に帰るギリシャ人から400ドルで買ったとのこと。日本製か?謎は深まるばかりだ)彼は本来作曲などを学ぶためにバークリーに入った人であり、当時ベースは正式な専攻楽器として認められていなかったのでギター専攻であったとのこと。私にとって興味深かったことは、才能ある、既にいっぱしの音楽家であった彼は、自分が勉強しているアンサンブルでギターではなくベースを弾くことを許されていたらしいのだが、その安物の(60年代の400㌦だから必ずしも廉価ではなかったのかもしれないが、やはり当時はお金がなかったと記載されているエイブにかんする記事があった)楽器をとにかくいつでもどこでも弾きまくっていたらしく、周りの人は、音楽家なのだからもっとレベルの高い、値段の張る楽器、つまり“Fender”に買い替えるよう彼に勧めたのだが、彼は頑固に譲らず(お金がなかったからなのかも)、その“日本製”の廉価な楽器を弾きまくり、そうこうするうちにその楽器は素晴らしい音色に育っていって、最終的には仲間たちを音の魅力で納得させたという。個人的にはとてもいい話だと思う。これを書く前に下調べなどしなければよかったのだが、彼はメキシコではかなり有名な音楽一家で育ち、親兄弟、子供なども多くが音楽家であり、母国でもプロフェッショナルとしてすでに仕事をしていて、、、などという知らなくてもよいノイズのようなものが私の頭の中に蓄えられてしまった。これで話の本質が見えにくくなってしまったような気がする。子供のころに人差し指の先端をなくしてしまったことなども知ってしまった。

まあ、言いたいことは、楽器とは出会いが大切な事。作りさえしっかりしていれば値段はあまり問題にならないこと。ブランドも関係ないこと、真剣に付き合えば楽器はそれなりに育っていくこと、そういったことが音楽好きにとって大切なんだろうと思う。

もう一つ。名前は忘れてしまったが、アメリカの田舎?もしくは東ヨーロッパ系の出身のギター専攻の音楽家の話だ。彼もやはり学生時代にはあまり経済的に恵まれておらず、メキシコ製の廉価なストラトを使っていたという。こちらは下調べはしないで言いたいこと、大切な事だけを書こうと思う。彼はバークリーで熱心に勉強したが、将来には何の希望も持っていなかったとどこかのインタビューで言っていた。生きていければそれでいいさ、みたいな地味なことを話していた。なかなかかっこいいな。実際バークリーを出てもいい仕事に恵まれる人は多くはないようで、その証拠に私の身のまわりにもバークリー出身の方々か複数おられるのだが、多くは音楽を離れて生活しておられるのだ、驚くべきことに。また話がそれてしまった。私はADHDなのかもしれない。まあ、それで、彼はバークリーを卒業して細々と仕事をしていたのだが、なぜか仕事が途切れることはなく、だんだん経済的にも裕福になったので、そろそろ自分も、と、値段にこだわらずに自分自身のVoiceを探す旅に出た、つまり楽器漁りを始めたのだという。しかしお金も時間もできた頃には例のメキシコ製のお安い楽器がすでに自分の骨肉に、つまり変えようもない自分自身のVoice、肉声のようなものになってしまっており、結果的に学生時代からの付き合いであるメキシコストラトを大切にメンテして自分のメインの楽器として使い続けることに腹を決めた、との事であった。いい話でしょう?

やはり大切なのは楽器との出会いと付き合い方であって、値段とかはあまり問題にならないんだろう。いかに出会った楽器を自分のものにしていくかが本当に大切な事なんだな。楽器を文字通り音楽を楽しむための道具として使う事よりも、楽器を選んで買う事ばかりに時間と労力をかけるのはやはり“のーたりん”のやることであり、私自身もそういった傾向が強い困った奴なのだった。

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