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2023/06/14   AT130 [音楽]

2023/06/14   AT130



ということで、10年前からいってみたかったWalkinで念願の楽器を購入し、残念ながら不良品に当たってしまって返品という憂き目にあったのだが、楽器の持ち味はよく理解することができた。

楽器を受取って一晩たち、落ち着いたところでしげしげと観察。仕上がりはとてもきれいだ。というかきれいすぎるかもしれない。プラスチックと木部の境目がとてもきれいにつながれており、境目を指先に感じさせない。それが悪いとは言わないが、塗装は厚めなんだなあ。それから、ものすごく軽い。ストラップでぶら下げてみると、ヘッド落ちはしないけれど、335などと比べるととてつもなく軽いように思った。それから、断面がC型のネックはしっかりとした握り心地と紹介されていたが、かなり太く私的には大変結構。全体から受ける印象は、木材ぽい感じがあまり伝わってこないため、正直言ってなんかすこしおもちゃっぽいと感じた。しかし実際に弾いてみると、こんなに薄っぺらいボディなのに、かなり大きな音がする。よくできているなあ、と驚いた。うちのHeritageより生音が大きいような気がする。信じられないことだが。Heritageは結構厚いソリッドのメープルが使ってあり、おそらく意図的に鳴りを抑えてFeedbackに対応しているので仕方がない。

以下、ヘッドから下に向かって印象を述べていく。

ヘッドはきちんとつくられたギブソン的な造形であり、ATのロゴマークもかっこよく決まっている。しかしペグを回した感じがどうもおかしい。低音弦は逆に回すとなんだかトルクが抜けてしまうし、高音弦は締めこむときにありえないくらい固い。ペグを回した時の質感がどうもいつものGotoh製SD90のしっとりした感じと違うような気がしている。とにかくペグははずれだな。

ネックは、マホガニーと書かれているが、どこで取れたマホガニーなのかはわからない。しかしそれでも太めのC型ネックは私の手に馴染み、体に合った欲しいものが手に入った喜びを感じた。ネックの木材も重量がかなり軽いような印象なのだがどんなもんだろうか。ネックはすんごくまっすぐ。バインディングもきっちりと塗装に塗り込まれ、フレットのエッジもきちんと処理されている。大変結構だ。弦はダダリオの11セット、やや太めの弦が張られているが、その割には弾きやすいなという印象。しかしチョーキングを試みると、太めの弦が張られていることを身をもって知ることになる。フレットは標準的な高さ、幅のもので、クラウンの仕上げも比較的丁寧で値段を考えると望外。まっすぐなネックときちんと仕上げられたフレットが弾きやすさのポイント①。指板の端から端までとても弾きやすい。ただ、21,22フレットには指が届かない、というか手を入れることができないことに気づいてしまった。小指を強引に伸ばすしかなさそうで、このあたりで和音をひくことは事実上不可能と思った。なるほど、だから335は指板がもっと外にとび出しているのね。やはりこういったことは、自分のものにしてみないとわからないものだ。指板が埃っぽくやや汚れており、木部に着色したかのような印象を持ったのだがどうしてだろうか。また、フレット周囲にシミのようなものが散見され、フレット打ち込みに際して接着剤を使ったのかも、と思った。オレンジオイルで掃除をしてみると、思った通りクロスが真っ黒になった。しかし指板の色が抜けるようなことはないので、必ずしも染めてあるということではなく、汚れていたのだろう。さらにチェックしてみると、ナットの溝切が結構攻めた設定で、割と深くぎりぎりまで切り込んである。これが弾きやすさの一つのポイント②だと思われた。返却が急がれたので弦高を細かく測ったりはしていないのだが、標準的な高さに設定されていたと思う。普通の楽器店で見る楽器よりは低めになっていたかも。ブリッジのコマは仕方がないことだがあまり正確に調整されておらず、オクターブがかなりくるっていたのはご愛敬か。こいつは間違いなく信頼と安心のGotoh製だ。いつものことだがよくできている。スタッドには高さ調整用のナットと、もう一つ、おそらくスタットの固定強度を増すためのナットがねじ込まれている。これのおかげでスタッドが弦のテンションに負けて傾いてしまう可能性は減るだろう。テイルピースはシンプルでありながら洗練された形のブランコテイルピースが使われている。私はこういうのが好きだなあ。ノブやセレクターはレスポールに使われているものと同じ感じだ。Potはおそらく国産と思われるがどうなんだろう。韓国製のアルファかもしれないが、内部は詳しく見ていないのでわからない。回すとずいぶん固いので、それが少し気になった。国産の例えばアルプスなどのものは、気をつかって作ってあるのでこんなに固くないし、回り方にためというか味があるものだ。コンデンサもおそらくOrangeDropなどが使われているものと思われるが、確認する時間がなかった。PUは国産のP90モデルなのだが、とにかく今回はP90がのった楽器を手元に置くことが一つの目的だったのだ。だってGGのコピーをするんだからね。音については把握できるほど弾いてないので詳しくは書けないが、ギブソンのものからイナタイ感じを少し減らしてバランスよくした感じ。日本製だからという偏見かもしれないが、いつもの自作チャンプで弾いた印象は上記だ。まあチャンプを通すとある程度以上のレベルの楽器は、どれをつないでもそれなりのいい音になってしまうということはあるのだが。それから、PGの固定に使われている金具がOldのGibsonを模したロボットっぽい形のものになっていたのだが、これも個人的にはポイント高い。金属を曲げたパーツでも同じような機能は果たせるのだが、楽器は機能だけではなく見て愛でるものなので、こういった細部にも神経を使ってほしいと思う。あとは、ジャックが少し硬いな、これは多分スイッチクラフトではないな、といった印象。そうそう、ボディにあけられたSホールの断面にもきれいに塗装が載せられていたことは好印象であった。

ということで、今後暫く付き合う覚悟を決めた直後にペグで弦を巻き上げることができないことが判明、お店と相談して返品することになってしまったAT130なのだが、短い付き合いだったが家からいなくなってしまってとても寂しい。ご縁がない、ということなので、今後この楽器をもう一度購入することはないだろうと思われる。しかしATは楽器としては値段を考えると望外の出来なので、皆様には自信をもってお勧めしたい。そうそう、初期不良の相談に伺った際に聞いた話では、ナットの切込みとシリアルナンバー入れは(おそらく)Westvilleの西村さんがやっておられるようだ。なるほどそれで納得だ。この楽器は廉価だが良質な材料を使って箱モノには定評がある寺田楽器が正確に組み上げ、最後に音と弾き心地の肝であるナットを現場を知るプロが調整しているというわけだ。弾きやすいわけだ、それじゃあ。


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