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吾妻橋 やぶそば [日本蕎麦]

吾妻橋 やぶそば もりそば 中 1500エン
         菊正宗 冷  700エン


浅草での宿題店の一つ、吾妻橋のやぶそばに立ち寄ることができた。浅草橋からのんびりと歩いて浅草まで足を運んだ。満席のため、20分ほど待ってから着席。客の多くは裕福そうな人たちであったが、失礼ながらそうではなさそうな常連風の方々も昼下がりの蕎麦を楽しんでおられた。しかしほぼすべての方々が昼酒状態で長っ尻というのはどうなんだろう。まあ人は人、とっととオーダーを通し、店内をしげしげと観察。平たく仕上げられてはいるが、玉砂利のような石が敷き詰められた床といい、黒く塗られたむき出しの梁といい、漆喰?で塗られた壁といい、清潔感が漂っており大変結構だ。トイレはお借りしなかったが、おそらく清潔に保たれているものと思われる。

程なく供された冷酒を、供された蕎麦味噌をなめながらゆっくりと味わった。蕎麦味噌は好物なのだが、お箸が汚れるのがどうも、、、。もりそばは結構なお値段だが、大を所望。2200エンだ。しかし花番さんはもうお蕎麦がないので中にしてほしいとおっしゃる。仕方がないのでにっこり笑って中にさせていただいた。冷酒は袴をはいて、ガラスのお猪口と共に、小皿にぺちょりと乗せられた蕎麦味噌とともに角盆に乗せて供された。私が好きなやり方だ。なんというか安心感がある。

しばらくしてお蕎麦が供された。これも蕎麦つゆは徳利にいれられて蕎麦猪口とは別に。小皿に白髪葱とおろしたてと思われる空気を含んだ生山葵。山葵はおろし方が重要だ。お蕎麦は真新しいざるに乗せて供された。こいつらもまた角盆に乗せて出てくる。ざるに乗せられたお蕎麦の水切りは完璧で、盆の上が濡れてしまうようなことは無い。

ざるの上のお蕎麦は二つの山に盛り分けられており、小二つが中、ということが分かりやすくプレゼンされている。各々の盛りの切り方はやや違うように見受けられ、一つ目の盛りは中細、もう一つの方はもうすこし細く切られているように思われた。まあ、目の錯覚なのかもしれないが。お蕎麦は表面が僅かに透明となるような滑らかな仕上がりで、星はほとんど目立たない。エッジは鋭く立ち上がっており、切り立て、茹でたてであることを強く主張している。そこでお蕎麦を数本リフトアップして、お鼻クンクン。おお、これはスバラシイ穀物特有の甘い薫り。ブワリと強くお蕎麦の薫りが立ち上がってくる。スバラシイ。お蕎麦のテクスチャーは部分によって微妙に変化しているが、切り方は完璧であり、しかもお蕎麦が長―――い。つまり手ごね機械切りということなのだろう。それで数本手繰ってみる。腰が強く、歯切れが良い。それでいて適度なねっちょり感も残されている。喉越しは、噛み切られたお蕎麦が、喉をひっかきながら落ちていく感じ。新鮮で主張のほどほどに強い、素晴らしいお蕎麦だ。さて、蕎麦つゆはどうだろうか?

少量蕎麦猪口に移してすすろうとした、が、蕎麦つゆは少量のみ供されるやり方だ。蕎麦つゆを惜しみながら蕎麦を手繰るのは好きではないため、これは自分的には困ってしまうのだが、お金がかかっているのだろうから、まあ仕方がない。気を取り直してすすって吟味。こちらの蕎麦つゆは、基準にしている神田まつやの 甘さを控えて全体に少しだけ薄く伸ばし、出汁をやや強めて発酵した感じを強めたような印象。全体のまとまりが僅かに乱れており、出汁系の雑味のようなものを感じたが、手間暇かけた蕎麦つゆであることは瞬間的に理解された。蕎麦の強さを鑑みて、半分くらい蕎麦つゆにくぐらせることにした。端っこちょんちょんでは蕎麦つゆが負けてしまうからだ。

白髪ねぎと生山葵をつまみながら菊正をすすり、あれこれと考えながら心?を決め、そのあとは一気に濃厚な蕎麦時間に突入した。とはいっても大食いの私のこと、二山に盛り分けられた私のお蕎麦は、あっという間に胃の腑に吸いこまれていったのだった。それにしても素晴らしいお蕎麦だった。蕎麦つゆの印象が食べ進むにつれて変わってゆき、最初はバラバラに感じられたお蕎麦と蕎麦つゆのバランスが、食後には完璧に感じられたことが印象的だった。それにつけても蕎麦つゆのすくなさよ。

その後は銅でできたように見受けられる急須に満たされた別仕立てのとろりとした蕎麦湯をなんとすべて楽しみつくし、心身ともに温まってお店を後にしたのだった。ごちそうさまでした。お蕎麦の中しか出せなかったことを詫びてくださった花番さんの応対も、必要にして十分、温かい印象を与えるもので好感が持てた。

また是非伺いたいが、混んでいるからなあ、、、。なにかと厳しい日常を送っている私にとって、神様がプレゼントしてくれたような素晴らしい一時だった。ありがとうございました。

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