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2022/1/7  信じられない [雑文]

2022/1/7  信じられない


大都市の機能はそこそこの雪で失われてしまい、路上は雪に覆われていたためクルマを職場において帰宅するしかない。大きなターミナル駅、深々と冷え込むホームで列を作って電車を待った。電車のダイヤは大きく乱れ、われわれ帰宅を急ぐ社会人は憂鬱な気持で長い長い列を作っていた待ったわけだ。腰をやってしまった私は冷え切った体をストレッチしながら温め、痛みと闘いながら列に加わった。ああ、はやくこないかなあ、、、え?50分遅延?短い電車なのに遠方に行先変更?他所のホームから我々のいる場所を目指して人がどんどん走り込んでくる。乗車をまつ人の列はさらに長くなり、まあざっと見て一つのドアに30-40人くらいは並んでいる。それがさらに伸びていって、、、。なんか絶望的な気持になる。例の大きな地震の時にJRが速攻で駅を締めたため(忘れないぞJR許さないぞJR)私鉄の駅まで歩いて長い列に並んで混雑した電車に体をねじ込んだことを思い出したりした。あの晩もつらかったなあ、よく歩いたなあ。そうこうするうちに一台列車を見送った私は幸い列の先頭に立つことができ、まあ座る必要もないのだが席を取るつもりでいた。あまりに寒いのでちょっとだけ日本酒をなめたのは秘密だ。足の調子も悪いことだし、疲れているし、もう爺なので許してほしい。並んでいたのは大きな柱の陰の立ち止まりにくい場所だったのだが、腰を揉みながら腰痛に耐えていたところ、私と私の次に並んだ人との間の隙間に白いコートで着ぶくれた若い女がするりと潜り込んだ。私の体の陰に隠れるようにしてよこはいりをしたのでそれに気付かない人もいたし、それをにらみつけるようにしていた女性もいた。私の後ろの人は何も言わなかった。私はアタマの後ろの方で気配を感じたので、信じられない気持ちで女の顔をまじまじと見つめた。20代の若い女で、マスクはしているがけっこう可愛い。身ぎれいにしており、おしゃれで、まっしろいコートには汚れひとつついていない。目線があっても悪びれない。この女、こういったことを繰り返して生きてきたんだろう、おそらく。分かってやっているのは間違いない。よこはいり、しかも40人抜きの荒業だ。すでにむかつきで血圧が上がってしまった私は、くるりと後ろを向いて、”ねーちゃん、うすぎたねえまねはやめなよ”と言いたかった。言おうと思った、というかそうするべきだったのだろう。大げさだが日本の将来のためにも。誰か文句言ってくれないかな、とも思ったが、誰も何も言わなかった。大柄で背が高い40代くらいの女性が、ものすごい目つきでにらんでいるだけで、私の後ろの女はそっぽを向いて完全にシカトだ。くそ頭にくる馬鹿アマだ。自分の柄が悪くなっていくことを自覚するが怒りがさらに膨張してどうしようもない、、、。しかし、結局のところ、疲れ切って寒さに耐えきれなくなっており、面倒を避けたかった私は、情けないことに何もしなかった。笑ってくれ。それでホームに滑り込んできた電車にゆっくりと乗り込み、座席を確保して一息ついた。それでも女が私より前に列車に乗り込むことだけはブロックしたつもりだ。ほろ苦い自責の念がこみ上げる。あーあ、オレは規則を守るいい日本人ではあるのだが、保守的で声を上げないSilentな情けない日本人の一人なんだな、と、しみじみと感じられて、なんか本当にがっかりしてしまった。女にも、周りの人にもがっかりしたが、一番がっかりしたのは自分自身に対して、だ。そして目の端に入ってきた女は(引き続き失礼な記載を続けるが許してほしい)、しれっとして席に座ろうとしている、、、。



、、、。




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、、、。




とその時、女をグイっと押しのけて、席を取り上げて座り込んだ40代のサラリーマンがいた。素晴らしい!そうだよそうなんだよ、それがただしいんだよリーマン!リーマンありがとう!ほんとにそのひとがリーマンなのかどうかは神のみぞ知るだが、まあそんなことはどうでもいい。そのリーマンはその晩のヒーローであり、私の心を救ってくれたのだ。女は一瞬不愉快そうな顔をしたが、すぐにあきらめてドアの脇に立つことにしたようだ。多少なりとも罪悪感のようなものがあるのかもしれない。そうだそれでいい。それでも女が立った場所は比較的いいポジションで、本来並ぶべきだった列の後ろから列車に入れば、ぎゅうぎゅう詰めの圧がかかるドアの直前に立つことになったはずだ。長年混雑した電車で通勤通学すればだれでもわかることだ。女をちらりと観察したが、しれっとしており、周囲の乗客や私自身とも目線があったが澄ました態度を取り続けていた。大した神経だねえ。

少しずつ私の心から怒りの感情が抜け落ち、心の“こぶし”が解きほぐされていったが、その代わりに反省のほろ苦い思いに満たされた。こんなくだらないことでほんと情けない。規則を守り、他者への配慮を忘れないという、私が大好きな、素晴らしい日本の文化を守るために、こういったふざけたことをする女を叱責すべきであったのだろう、たとえなんらかの問題に巻き込まれることになっても。世代的に、私は世間のご意見番のような機能を果たしていくべきなのだろう、たとえ見知らぬ人たちに嫌われるにしても。

ああ、寒いし疲れるし、むかつくし、しんどい夜だったでしょう。


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